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日を狩る者達  作者: 月の使徒
第一章 水の神
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いざ、救出の旅へ

「【月の剣(リュヌ・エペ)】!」

「【月の矢(リュヌ・フレッシュ)】!」


 悪魔から授かった攻撃魔法とやらを、海道君とボクは同時に唱えた。すると海道君の方は掌の中に淡い光の粒子が出現し、数秒後にそれはまとまって一直線に伸び、光の剣を形成した。


「は!」

「キャウン!?」


 そして海道君はその剣で自分に襲いかかってきていた、狼の一匹の腹を切り裂いた。その攻撃をもろに喰らった狼は、襲いかかった勢いのまま地面に激突し、よろよろと立ち上がったがそこで力尽きて、再び地面伏して動かなくなった。


「……ふ、はっ!」

「キャーン!」

「キュ〜ン」


 一瞬自分が一つの命を終わらせたことに海堂くんは動揺したが、仕方がなかったと気持ちを切り替えて、まだ襲ってくる他の狼を光の剣で切り裂き続けた。


 一方ボクの方はどうかというと、魔法を唱えた後海道君と同じように掌に光の粒子が集まったが、形成されたのは剣ではなく矢であった。そしてどうやらこの矢は勝手に発射されるようなことはなく、形成した後もずっとボクの掌の中にとどまったままであった。


(……これでどうしろってんだ)


 とりあえず、狼目掛けて飛んでいけとか色々念じて見たが、まるで飛んでいく気配がない。普通こういう矢の形をした魔法って、勝手に飛んでいくんじゃないのか。


「これ、飛ばないんですけど!」


 以前続く複数の狼からの攻撃をなんとかかわしつつ、脳内で喋る悪魔に苦情をいう。まさかこれ、欠陥魔法じゃあるまいな。


『ああ、それは矢だからね。矢を飛ばすには弓が必要だろう?でも近距離戦で弓矢なんて、使えたないじゃない?だから今はその矢でなんとか頑張ってね!』


 なんと投げやりな。魔法なら矢単体で撃てるようにしといてよ。なんでわざわざ弓を必要とするのさ。これ魔法にする必要あるのかね。と愚痴を内心で漏らすが、文句を言ってもなにも解決しない。しょうがないから、この矢でどうにかしよう。


「ふう……」


 狼達の攻撃を避けながら矢を掌の中で回し、握った時に矢尻が上になるようにした。そして狼達をかわしつつ、攻撃の機会を窺う。


「グウウウ、グゥア!」

(きた!)


 さらに攻撃を避け続けること数秒後、一匹の狼が勢いよく跳んで、上からボク目掛けて落ちてくる。ボクはこれを待っていた。剣と違って矢はリーチが短く、おまけに倒すには矢尻の部分を致命傷となるところに突き刺す必要がある。だから今のようなボクが刺しやすい状況をつくる必要があった。


 跳び上がった狼は一直線にボクに向かってくる。空中にいる状態であるならば、それほど自分の位置を変えることはできない。これで狙いは定まる。そして上に跳んだことで、ボクは腹部を狙いやすくなった。


 この飛ばない矢で相手を倒すには、致命傷になる場所、すなわち心臓などを刺す必要がある。地上では狼達はボクの足や腰を狙ってきていたので、腹を晒すことはなかった。だが空中に上がった今、その腹部を狙える。


「はぁ!」

「キャン!?」


 ……よし、成功した。正直心臓の位置なんてわからないから、適当にそれっぽいとこを刺したけど、狼が息絶えたとこをみると、どうやら当たっていたようだ。


 一方その頃海道君は、ボクが苦労してようやく一匹狼を仕留めた時、自分に襲いかかってきていた狼達を全滅させており、手の空いた海道君がボクを襲っていた狼達も倒してくれた。


 こうしてボク達はなんとか助かったわけだが、海道君もボクも刺したり切ったりしていたので、血が服や顔についていた。夜の森に灯りも持たずに血塗れの男が二人。誰かに見られたら間違いなく不味いね。


『いや〜、二人ともお疲れさま。初戦闘にしては良かったんじゃない?』

「……もっといい魔法をくれれば、ボクはもっと楽に戦えたんですけど?」

『はは、いやすまないね。でも今君達が使えるのはそれぐらいの魔法しかないんだ』


 本当かね、それは。本人は人間を蘇生させ世界を跳躍する力があるんだから、どうにかできたんじゃないのかね。まあもう過ぎたことだからいいか。


「……それで、スィミルという町はその方向にあるんだ?」


 狼達からの襲撃が終わり、ひと段落したところでそう海道君が質問を投げかけた。そういえば狼達の襲撃ですっかり忘れていたが、その町に向かうことになっていたのだった。


『ああ、それならあっち……。って言ってもわからないから。えーとね、ちょうど月が出てる方に向かって歩いて行けば街道にでるから、まずはそこまでいこうか』

「ああ、了解した。早速向かおう」

「いや、まずはこの服をどうにかしようよ」


 悪魔から町への行き方を聞いた海道君は早速歩き出そうとしたが、よく自分の服装を見てほしい。ボク達の服は自然体験学習の時に来てきた私服のままだし、おまけに血がかかってしまっている。


 この状態で街道に出て誰かに出会ってしまえば、間違いなくボクらはお縄になってしまう。だからそうならないように服を着替えたいのだが。


「そうだな、確かにこの服では不味いな。でも俺たちは着替えなんて持っていないぞ」

『あぁ、それなら心配いらない。今いい感じの服を見繕ってあげよう』


 どうやら悪魔がボクらに変えの服をくれるらしい。というか、なんで蘇生した時にこの世界に準ずる服装にしといてくれなかったんだ。元の世界の服装だと目立つだろうに。まあ、着替えてたとしてもどうせ血で濡れていただろうから、どっちにしろここで着替えていただろうけど。


 そしてそんなことを考えていると、ボクの体が突然光り始めた。どうやら悪魔がボク達の服を変えていてくれているらしい。そして暫く経って光が遅まると、ボク達は元の世界の服ではなく、よくRPGで見るような服装になっていた。


『さぁ、私的センスでいい感じのものを選んだんだけど、どうかな?』


 どうかなと言われても、ボク達はこの世界の一般的な服装を知らないから、なにもいうことはできない。でも果たしてマントだったり、首から下を全部覆うようなローブが普通の格好と言えるのだろうか。


 チラッと海道君の方をみると、自分の服装にマントが追加されていることに、ちょっと動揺しているように見られた。


「まぁ服のことはどうこう言えないが、これで問題なく町へ向かえるな」


 しかし彼女達のことを一刻も早く助け出したい海道君は、服の確認を早々に終わらせ、月のある方向へかって歩き出したので、ボクもそれについていく形で歩き始めた。こうしてボク達の旅は始まったのである。


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