表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日を狩る者達  作者: 月の使徒
第一章 水の神
5/8

いざ異世界へ

「彼女達を、助ける?」

『おやおや、海道君。フリーズしていたようだけど、もう治ったのかい?』


 彼女達を助けて欲しい。悪魔からその言葉が出ると同時に、フリーズしていた海堂くんがスクリーンから目を離し、悪魔の方を向いてそう呟いた。


「彼女達を……、紫陽花達を助けられるのか!?」


 いつもの海道君らしい冷静さは何処へやら、彼女達を助けられる、という情報がもっと欲しいのか、悪魔の方へと詰め寄っていく。


『おお、近いよ海道君。そんなに焦らなくても、今教えてあげるから』


 詰め寄られた悪魔は困ったような口調で話しているが、相変わらず楽しそうにしている。そして笑顔のまままた指を鳴らし、スクリーンを消した。


『君達を蘇らせたのはさっきも言った通りで、彼女達を救って欲しいから。ここまではいいね?』

「……あぁ」

「まぁ、はい」


 彼女達を救うためにボク達を蘇らせた。そう蘇らせた本人が言っているのだから、恐らくこれは間違いないだろう。しかしここでさらなる疑問は生じる。人を二人も簡単に蘇らせられる存在が、世界を超えて人を呼び出せる存在が、果たして他者の手を必要とするのか。


 人体蘇生。これはどのフィクションでも禁忌の技術だったり、それ相応の代償が必要になったりする。ましてやそれは同じ世界の中で行われることがほとんどであり、世界を超えての蘇生なんて魔法の世界であったとしても、人間には出来ない芸当だろう。


 そんなとてつもなく凄いことを、目の前の悪魔はやってみせている。そんな存在が何故、彼女達を救うためにボク達を蘇らせたのか。本人が直接行った方が早いのではないのだろうか。


 自分の中で渦巻く疑問、その疑問に答えるかのように、悪魔は話を続ける。


『次に何故、私がわざわざ君達を蘇生したのか。それはね、私が直接この世界に干渉できないからなのだよ』

「世界に干渉できない?」

『そう』


 世界に干渉できない。これまた大きな理由が出てきたね。天才のボクでもこれは想定していなかったなぁ。いや、ボクもまだまだ未熟だね。


『私は確かに力はあるけど、まぁ色々制約があってね』

「それで、俺たちを蘇らせて、間接的に干渉しようってわけか」

『その通り。……で、どう?協力してくれる?』


 悪魔は両手を合わせて、真っ直ぐな瞳でボク達を見て、お願いをしてきた。しかしこれは、お願いを受ける受けないの自由はないだろう。悪魔はボク達を彼女達を救出するために、蘇生したのだから。


「あぁ、勿論だ。紫陽花達を俺は放って置けない」

『さっすが!それでこそハーレムを形成する男だわ』


 海道君の回答に迷いはない。まぁ彼と彼女達は小さい頃からの付き合いらしいので、彼は彼女達を救うことに賛成だろから、悪魔に協力するの当然だろうね。


『それで、大森君はどうする?』


 さて、では特に彼女達をと仲の良くないボクはどだしようか。まぁ助ける義理というか、理由はないんだが……。先程も言った通り、ボクに自由はないだろうからね。断った恐らく消されるだろう。


「……ボクも、協力します」

『おぉ、そうかい。……よかったよ、前向きな返答で』


 ボクの返答を受けて、悪魔はやはり笑顔でそう返した。しかしなんか微妙な間があったような気がするのだが。この悪魔、人が断れ無いことをわかってて、協力するかどうか聞いたな。中々いい性格してるじゃないか。まぁ悪魔だからそれも普通か。


「それで、俺らはなにをやればいいんだ」


 悪魔とボクの話が終わったタイミングで、海道君が悪魔に具体的な救出方法を聞いてきた。先程のスクリーンを見た時よりは落ち着いているが、まだ少し焦っているようだ。そんな海道君の様子を見てみも、以前悪魔は笑顔で彼の質問に答えた。


『彼女達は神の生贄になるべくして、この異世界に呼ばれた。そして彼女達を呼んだ者は、厄介なことに一人では無く複数人いる。そして彼女達の召喚場所もバラバラでね、それに拘束されている場所が何処も結構面倒でね』

「それでもあんたに協力すれば、紫陽花達を助けられるんだろう?」

『おぉやる気満々だね』


 ボクはやる気が下がっていってますよ。元々死にたくないから協力しているようなものだし、そこに心底面倒くさそうな情報とくれば、モチベーションはゼロですよ。


 まぁ、一度協力すると言った以上は、最後まで仕事は果たしますがね。しかしこれは家に帰るのは大変そうだ。


『じゃ、詳しい話しはまた現地に行ってからってことで』


 そう言って悪魔は指をまた鳴らした。するとボク達の足元に、青黒い渦のようなものが出現した。これ入って大丈夫系のやつかな?そう悪魔に聞こうと思ったが、なにせ足元に渦が出現したわけだから、当然足場を失った人間は重力に従って下に落ちるわけで。


「うおおおおお!?」

『ははははは!死にはしないから安心しなー』


 渦に中に落ちていく中、上から悪魔の声が聞こえる。せめて今から送るよ、みたいな掛け声は欲しかった。ちくしょう、やっぱり悪魔か。もし自分の世界に帰る前にもう一度あいつに会えたなら、一発何かやってやろう。そう考えながら、青黒い渦の中を落ちていると、急に視界の色が変わった。


 大きな黄色い球体が目に入ってきた。月だ。


「おう、月がきれい」

「……そうだな」


 月の感想を述べていると、声がすぐ隣から聞こえてきたので、そちらを振り向いてみると、そこに海道君がいた。どうやら彼も無事に渦を降りることができたようだ。


 さて、この綺麗な月をいつまでも見ていたいが、実はそうもいかない。何故ならば、ボク達はいま

 非常に不味い状況に置かれているからだ。このままいくと、死ぬ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ