プロローグ1
ボクこと大森美麗は神に選ばれた存在である。産まれてこの方、努力などは一度もしたことは無いが、成績は常に学年トップクラスで運動神経も抜群、おまけに顔もいい。だから何一つ不自由なく暮らしている。……いや、ひとつだけ不自由というか、不満がある。それは友人と呼べる存在が居ないことである。
まぁ別にボクは孤高の天才だから?別に友達が居なくても寂しくはないですが?それにしても高校に入学して初めての夏休みを超えても、友人の一人もできないとは思わなかった。おかげで夏休みはずっと家に引き籠もって、一人でゲーム三昧でしたよ。悲しい……。
……まぁ、夏休みの過ぎた思い出などどうでもいい。それにもう友達ゼロ人で夏休みを迎えたことで、一周まわって吹っ切れたしね。なにが友人だ、人間関係なんて持つだけ損。ボクの学園生活は友人なしでいいのさ。
「はーい、それじゃ各々好きな人と班を組んでください」
詰んだ……。そうか、今日は自然体験学習の班決めだったか。通りでクラスが朝から騒がしかったわけだ。そうかそうか、いいねこういうイベントは。行事を通じて友達同士の絆が深まるのが予想できるよ、うんうん。……さて、では友達のいないボクはどうすればいいのかな。
「一緒の班になんない?」
「オッケー、なろなろー」
「あと二人たんねーな」
「俺ら余ってるからいれてくんね?」
「あぁいいよ」
不味いねぇ、非常に不味い。どんどん班が形成されていってるよ。これはあれですね、ボクは最後に余ってる寄せ集めの班か、班員が集まらなかった班に配属されるパターンですね。まぁ仕方ない、甘んじて運命を受け入れようではないか。
……しかしなぁ、こう周りが賑わっている中、一人だけ寂しく席に座っているというのはこう、なんかくるものがあるね。
「なあ……」
「……」
何か話しかけられたような気がするが、気がするだけだな。こういうのは往々にして自分が話しかけられたと思って振りかえってみたら、実は自分じゃありませんでした、というものがほとんどである。まぁボクはそんな哀れなことはしませんがね。
「なぁ、……聞こえてるか?」
「あ、あぁ?ボクですか?」
どうやら気のせいではなく、実際に話しかけられていたようだ。その証拠にボクの肩に手をかけて、ボクの方を向いて話しかけている男子生徒が、ボクの横に立っている。
(おや、この人は)
海道新導、声をかけてきた男子生徒はこのクラスのカースト最上位グループの者だった。何故カーストップの人間が今ボクに声をかけてきた?
「何か、ボクに用でしょうか?」
「実は俺の班、人があと一人足りなくてね」
「それでお一人様のボクに声をかけった、と?」
「そうなんだよ。他のクラスメイトは誰も入ってくれなくて……。よかったら班に入ってくれないか?」
ふむ、トップカースグループと一緒になれるチャンスなのに誰も班員になりたがらないとな?これは班員に何かしら問題があるような気がしますねぇ。あぁそういえば海道君のグループは、海道君以外全員女子のハーレムグループだっけ。そりゃ誰も班員になれないわな。絶対気まずくなるし。
とはいえ、ここで海道君のお誘いを断ればボクは完全なるボッチ、クラスの笑い者になってしまう。それだけは避けなくてはならないねぇ。うーん、気まずくなるのは目に見えているが仕方がないね、ボッチになるよりはいいだろう。
「あぁ、ボクで良ければ喜んで」
「本当か!いやぁ助かったよ。もう五人連続で断られていてね。じゃあ班のところに行こうか」
海道君からの誘いを承諾すると、彼は目に見えて嬉しそうな顔をした。五人連続で断られるって、相当やばいメンツの班なのでは?どうしよう、今さらながら後悔してきた。
「みんな、最後の一人を連れてきたぞ」
「……よろしくお願いします」
そして海道君に連れられて彼の班員がいる所へと案内されたが、なるほどこれは他のクラスメイトが断るわけだ。梶原紫陽花、清水川時雨、小鳥和宮、鬼灯燈、雪原月華、夜桜風華。我がクラスが、いや我が高校が誇るトップクラスの美女が六人も集結している。これは一般生徒ではとてもじゃないが同じ班にはなれないな。
気まずいとかそう言うレベルじゃなくて、一般的な存在ではこの人達といると、自分が哀れに思えて来るだろう。そのレベルで彼女達は美しい。まぁボクも負けてないけどね。
「新導君……。この人って」
「あぁ、大森美麗だ。最後の班員になってくれる人だよ」
「ちょっと!こいつが私達の班に入るの?」
「あぁ、そうだが。何か問題があるのか?」
「こいつ、変人よ」
なんだこの女、いきなり人のことを変人呼ばわりとは、失礼なんじゃないか。いったい全体ボクのどこが変人だというのか。むしろボクほど優れた存在などそうそういないというのに。ボクが変人なら大半の人は変人になるぞ。
「そうなのか、大森」
「いやですね、ボクは変人ではないですよ」
「だそうだが、月華」
「嘘よ!こいつ自分のこと天才で、美しいと思っている変態ナルシストよ」
事実を言って何が悪いのか。実際ボクは生まれながらの天才で、美しい存在である。これをそのまま言うことの、どこに問題があるのだろうか。いや、ないな。では何故雪原さんはボクに何癖をつけてくるのだ?……は!まさか
「雪原さん、まさかボクの美貌と才能に嫉妬しているんですか?」
「はぁ!?そんなわけないでしょ!」
「いやぁ、そんなに嫉妬しても、どうにもなりませんよ?」
「きっも。そんなんだから友達が居ないんでしょ」
おおん?雪原さん。世の中には言っていいことと悪いことがあるんですよ?
「ま、まぁこれで班員も揃ったし、よかったよかった。ね?ね?」
雪原さんと言い合でも始めようかとしたとき、海道君が横から止めに入ってきた。ふむ、言の刃の斬り合いでは負ける気はしないのだが、まぁここはボクを誘ってくれた海道君に免じて、見逃してやろうではないか。
「フン」
「……」
「すまないね、普段はあんなではないんだけど」
「いえ、お気になさらず」
はじめまして。そしてこの小説を読んでいただきありがとうございます。あまりにも暇すぎたので小説を書き始めました。とりあえずこれから二時間おきに、八話まで投稿します。読んでいただけるとありがたいです。