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終末までもうすぐです  作者: 七香まど
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二つの命11

 昼食は博物館内にある売店でサンドイッチを購入。屋外にある公園のベンチでリスのようにカリカリと食べて済まし、今日の観光は終わりとする。

 遠くで子どもたちが元気にはしゃいでいる。敷地が広いおかげかのびのびできて落ち着いた場所だ。


 砂場では女の子たちがスコップ片手に山を築いてトンネルを開通しようとしている。男の子たちは遊具等を使って元気に追いかけっこをしている。


 もしもあいちゃんが元気だったら、あの子たちと仲良くできるのかな。あいちゃんならすぐに仲良くなりそう。


 午後からは病院に行ってあいちゃんとお話を楽しむ予定だ。


 昨日買った絵本はあらかじめ鞄に入れてあるし、向かう途中でなにか美味しいものでも買っていってあげよう。

 病院が宿とこの歴史博物館の間にあるおかげで時間は掛からない。三十分程度でたどり着く。


「お土産は何がいいかな? 甘いお菓子なら喜ぶかな、あいちゃんとママさんと私で三個……少し、歩いて決めるかな」


少量の昼食でお腹が膨れたとはいえないが味に満足した。同じサンドイッチをお土産にと思ったが、もっと甘くて、食べた瞬間に顔が蕩けるようなお菓子がいいだろう。……本音を言うと私も食べたい。だから買う。


 ベンチに座ってしばらく公園を眺める。特に変わったところはない。どこにでもある公園だ。遊具の数が多く他の国とは広さも違うが、一度は見たことのある遊具しかない。

 私自身、公園の遊具で遊んだことはない。故郷の公園には遊具が少ないし、あっても男子が常に遊んでいる。女子が入り込む隙間はいつもなかった。

 だから遊具というのはどのような楽しさがあるのか、私には想像しかできない。この歳になっていまさら子どもに交じって遊ぶというのは恥ずかしくてできない。ママさん方もいるし、変な目で見られることは確実だ。


「そろそろ動くかな」


 ベンチから立ち上がりサンドイッチの包み紙を丁寧に畳んでゴミ箱に捨てる。

 公園の出入り口に足を向け、元気に公園の遊具で遊んでいる子どもたちを尻目に公園、そして歴史博物館を後にした。




 コン、コン、コン、と病室のドアを三度叩く。中から「どーぞ」と間延びした声が聞こえる。


「こんにちは、あいちゃん」

「あ、おねえちゃんだ、こんにちは」


 まず、昨日会いに来なかったことで怒られるかなと思ったけれど、どうやら杞憂だったようだ。

 だけど謝らなければならないのは確かで、ここはしっかり頭を下げておく。


「あいちゃん、ごめん! 昨日は時間が無くて来れなかった」

「きにしてないよー、きょう、きてくれたからうれしい!」


 舌足らずな口調は相変わらず、満面の笑みでそんなこと言われたらあいちゃんが天使に思えて、本当に許されたように思える。

 あいちゃんへの感謝で頭が上がらないなか、出入り口からノックの音がする。


「愛唯、入りますよ」

「ママー! いいよー」


 ドアがゆっくり開き、あいちゃんのママさんが入室してくる。


「あら、七瀬さん、こんにちは」

「こんにちは」


 ママさんが車いすを動かして私たちのところに来る。そして机に細長い箱を置いた。

 その箱には見覚えがある、というのも私が今、手にしている箱と同じデザインのものだ。


「あの、それってもしかして……」

「あら? もしかして同じお土産でしたか? それはすみません」

「いえ、むしろあいちゃんの嫌いな物じゃなくて安心しました」

「やったー、あい、ふたつたべる!」


 私が持ってきたのは、ここに来る途中に売っているシュークリーム。それなりに人気らしく試食して決めた。


 まさか、偶然にママさんも同じシュークリームを買ってきているとは思わなかった。同じく箱の中には三個のシュークリーム。ただし、味のバリエーションが違った。


 あいちゃんはどの味にするか迷っていたが、ストロベリーとチョコレートに決めたようだ。

 ママさんは自分用と決めていたのか、迷いなく抹茶味を選択。私は特色のないスタンダードなやつを手に取った。

 残ったカスタードとクッキーシューは冷蔵庫に入れて保管することにした。一日だけなら保つらしい。


「おいしいわね」

「よかった、これをお土産にして」

「おいしー!」


 三人でシュークリームを頬張る。甘くてとろける口どけが私たちの頬すらもとろけさせる。

 クリームが鼻に付着したり、それぞれのシュークリームを食べ比べしたりと、お土産は大成功だった。

 各々が食べ終わり、雑談をしているときに大事なことを思い出した。


「そうだった。あいちゃん、もう一つお土産があるよ」

「え! どんなの?」

「じゃーん! 絵本だよ。あいちゃんって絵本いっぱい持っているから好きかなと思って、この絵本は持ってなかったかな?」

「うん、もってないよ。はじめてみる!」


 鞄から『はちろうはまっている』を取り出してあいちゃんに手渡す。あいちゃんが持っていなくてよかった。持っていたら私が悲しくなる。

 今からでも読んで聞かせてあげたいが、残念なことにこれから看護婦さんとお勉強だそうだ。


「それなら、ママに読んでもらってね」

「うん! わかった!」

「いいの? 七瀬さんが読んであげなくて」

「私は……ママさんの方が安心するでしょう」


 なんとなく言葉を濁す。ママさんは何か言いたげではあったけども、丁度良く看護婦が来たことで話の主題が変わってくれた。

 お気に入りのコンパクトケースを手に取り、車いすに乗ったあいちゃんは別室へと移動する。


「ばいばい!」

「うん、またね」


 あいちゃんに手を振って見送る。私もママさんに挨拶をしてから病室を出た。

 ママさんは後片付けをして待っているということで、片付けくらい手伝うと申し出たが、頑なに私の手を必要としなかったのでそのままお願いした。


 病院を出て宿に向かって歩く。帰るにはまだ早い。遅い時間ではないのでほんの少しだけ遠回りしていく。


こんな裏道でも地面はきれいに舗装されている。

こんなにも舗装された道を通るなら、この国にいる間は自転車をレンタルしてもいいんじゃないかと思った。


 普段は瓦礫が乱雑に散らばった道を通るせいで、自転車は使えない。自動車もパンク防止が当たり前だ。

 時間はあるし、これから借りに行こうかと思ったが、よくよく考えると明日からこれといった用事がない。

 なら、明日に自転車をレンタルして、そのまま遠出をしてみるというのもいいのではないだろうか。

 日数はまだある。思うようにこの国を堪能しようではないか。

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