恋い慕ふ一
あなたを恋い慕うのは何のためーー?
あたしをあなたは嫌う。どうしてなの。
そう思う気持ちが日増しに強くなる。
あたしはずっと考えていた。あなたを恋い慕ってしまう意味を。
けどきりがない事に気付いた。あなたを想い続ける事に疲れてしまった。
毎日、あたしに投げつけられるのは侮蔑の視線と言葉。
そして暴力だ。殴る蹴るは当たり前で。
しまいには何もかもを投げ出して逃げてしまった。
あなたは追いかけては来なかった。
これで終わったのだとほっとするけど。
それと同時に湧き上がったのは寂しいという感情だった。
ボロボロと涙が溢れた。
近くにいた人々が戸惑いの視線を向ける。
あたしは気にせずに泣いた。声を枯らして泣く。
そうしてやっと気持ちの整理が少しはついた。
あたしは少しばかりの荷物を持って目尻に残った涙をぐいと手で拭う。
(よし。あの人とは別れるけど。頑張らなきゃ)
頷いて一歩を踏み出す。瞼が腫れぼったいけど我慢だ。
後で顔を洗おう。そう思い、ホテルは近くにあるだろうかと考える。
偶然にその場を通りかかった女性に声をかけた。
すみませんと言い、ホテルの有無を尋ねる。女性は怪訝な表情ながらも答えた。
少し行った所にビジネスホテルがあると教わり歩いた。しばらくすると新しい感じのホテルらしき建物が見えてくる。
そこの自動ドアからロビーに入った。受け付けで一晩泊まりたいと言う。
受け付け係の女性が笑顔で名前などを記入する用紙を差し出す。ボールペンを借りて名前などを記入してから女性に返した。
ありがとうございますと女性は言って宿泊の代金を口にする。財布を出してお金を確認した。
十分あったので代金を支払う。鍵を受け取り部屋に行く。
鍵に書かれた番号の部屋に入り、ドアを閉めた。荷物をベットの上に置いた。
やったと浮かれる。ガラス窓から見える空は既に夕焼け空だ。あたしはさてと立ち上がり部屋に鍵をかけるとバスタオルを持ってシャワー室に向かった。
シャワーを浴びてから歯磨きもした。ちなみに自宅から持ってきたパジャマを着ている。
まだ宵の口だが。体は疲れている。眠ろうとベットに入った。
うとうとしながら1日は意外と短いなと思う。あなたはどうしているだろうか。
そんな事を考えたが首を横に振る。まあ、そういう事は明日だ。あたしはそう思った。
自宅から持ってきたスポーツドリンクを飲んだくらいだが。明日になったら仕事を探そう。そして働いてお金を貯めて。遠くに引っ越して一人で暮らすのだ。
それを考えながら深い眠りについたーー。