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退屈なことは魔法にやらせよう  作者: 御神真夜留
一章:printf("Hello,world!!");
3/4

prologue + 2;

 あれから十年の月日が過ぎ、俺は順調に育っていた。

 どうやら俺が目覚めてすぐ出会ったのはうちで雇っているお手伝いさんで、名前はリスシアというらしい。

 もう名前の時点で察することができるが、ここは完全に日本ではない。ましてや、地球でもないらしい。

 今まで生きていた感じ物理法則は地球と変わらないが、なんせ体が変わっているのだから確定ではない。もしもこの世界の人間(らしき種族)の身長が蟻ほどに小さいというならまた話は変わってくるだろう。

 ただ、とりあえず今のところは不自由しないので物理法則など考えずとも大丈夫だ。

 問題は言語である。

 完全に別言語にぶち込まれたからか、英語よりはできる自信があるものの、現在の理解度としては身体年齢相応といったところだ。

 ……これでは異世界無双にほど遠い。

 そう思った時に俺が目にしたのは魔法だ。


 ――魔法。異世界もののほとんどに存在すると言っていいほどファンタジーな世界ではありふれた技術。転移者、転生者は総じて特異な魔法の才能があると言っても差し支えない。


 では、俺にもあるのではないだろうか。魔法の才能とやらが。


 そして本日。その結果が明かされる。

 この世界のこの国では十歳になった子どもは皆、神殿に礼拝することになっている。例えるなら日本の七五三のようなものだ。

 そこで神より授かる魔法の才能が分かる。


「キャスルくん、今日楽しみだねっ」


 魔法のことを考えていた俺に声がかかる。

 話しかけてきたのはこの世界での同い年で幼馴染みのアルゴだ。

 アルゴは……正直言って可愛い。有り得ないほどに可愛い。それこそ女神のような可愛さだ。少し青みがかかった白髪に、澄んだ湖のように蒼い瞳、肌は白く透き通り、誰にでも分け隔て無く接する。容姿だけではなく、性格も優れている。これを女神と呼ばずなんと呼ぶのか。

 俺は彼女を一目見たとき、感じた。ああ、転移でなく、転生で良かったと。精神年齢は十八の差があるが、身体年齢なら差は無い。日本でも合法だ。

 もうはっきり言って、彼女が幼馴染みなら俺はここで死んでも良いかもしれない。

 あ、ちなみに俺の容姿はこの世界で普通の部類に入る。金髪で、少しくすんだ灰色の瞳だ。


「ああ、どの属性が使えるのか楽しみだ。出来ることなら四属性くらいは使えたら良いけど」


 この世界で魔法は十の属性に分かれる。火、水、氷、土、雷、風、闇、光、黒、白の十種類だ。

 大体の人はこの中から二つの属性が使える。三つあれば二十人に一人、四つで四十人に一人、五つで八十人に一人、といった具合に数が少なくなっていく。四つあればまあ将来有望と言ったところか。


「私は二つくらいで良いかな。多分、戦うことなんて無いし。あ、神父さん」


 白い法儀服を着た初老辺り男性が入ってきた。彼がこの神殿で最も偉い神父さんだ。


「皆、静粛に。本日は適性の儀を行う。まずは神への祷りだ。神を深く信じることで、皆に加護が顕れるだろう」


 そう言って彼は祝詞を唱え始める。

 俺は手の平を合わせて目を閉じ、深く集中する。


「…………けよ。……を……けよ。目を……けよ」


 声ではない。頭の中に直接響く音。……こいつ直接脳内に!?


「目を開けよ、少年」


 これって、俺に話しかけているのか? うーん、分からないから無視で。


「目を開けんかッ!」


 いきなり大きくなったので反動で俺は目を開ける。

 というか、やっぱり俺に話してたのね。


 目を開けたその先には神殿の風景はない。代わりにあるのは何処までも真っ白な光景だけだ。


「ここは何処? 私は誰?」

「お主、ふざけているのか? 何処? はともかく、誰? は流石に分かるじゃろ」


 そして、目の前には和服幼女。リアルのじゃロリ。まるで平安貴族みたいな格好をしている。


「今、失礼なことを考えたじゃろ、これでもわしは数億年生きているのじゃよ」


 ……まさかの一人称わし。妾とかいいそうな見た目してわし。もうファールにもほどがある。


「まあよい。時間もあと少しか無いしの。手短に済ませよう。……なんでこないのじゃ! わしがこの場に呼んでやったに何故会いに来んのじゃ!」


 呼んでやった? ……つまり、俺が転生した理由はこの目の前ののじゃロリだと。転生させられたらその本人に会いに行かないといけないのか? しかし、解せないのは何故転生させられたのかだ。


「どうして、俺?」

「そりゃお主が死にたい、死にたいと言っておったからじゃろ」

「いつ俺が……」


 ……あ、『死にたみが深い……』『ワイ、今回無事死亡』『十連爆死』全部に死が入ってるじゃん。こりゃまあ、死にたいみたいではあるけど。


「そういうことじゃ。お主には三つの加護を与えたとだけ言っておこう。この世界では頑張って生きるじゃぞ」


 言い残して消えていくのじゃロリと共に、俺の視界はいつもの神殿を見せ始める。


「それでは、皆さん。前方の方から一人ずつ、前に来てください」


 一人ずつ、女神像へ歩いて行く。

 待ちに待ったこの瞬間。魔法適性の判定の始まりだ。

 神殿の後ろの方だった俺たちはしばらく待ち、ついにその番が回ってきた。


「じゃあ、私行ってくるね」


 俺に先立って、アルゴが女神像の近くまで行く。そこにある水晶のようなもので魔法の適性を測る。

 詳しい原理は知らないが、神父さんが言うには個人の魔力に干渉してホニャララらしい。神がどうのこうの言っていたので前世では神を信仰していなかった俺にとってよく理解できなかったのだ。そうアレは、まるで宗教の勧誘のようだった……。


 そんなことを考えているとアルゴが戻ってきた。とうとう、俺の番だ。


 受験発表が如く(受験なんて一回しか経験してないけど)、緊張した面持ちで俺は女神像へと歩みを進めた。


「ここにあなたの手を乗せてください」


 神父さんに言われた通り、俺は水晶のようなものに手を乗っける。

 瞬間、触れた手の先から何か力のようなものが抜ける感覚がしたかと思うと、その水晶らしきものの中に文字が浮かんだ。

 神聖文字で書かれたそれは俺には読むことが出来ない。ゆえに神父さんがいる。


「あなたの属性は黒、闇ですね。ではこちらをどうぞ」


 神父さんに渡されたのは模様が描かれた三枚の紙と薄い冊子のような本。

 俺は神父さんに深く礼をして、アルゴの待つ場所へ帰った。

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