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あの時のあなたは・・こんな気持ちだったのですか?

作者: セロリア
掲載日:2017/03/07

私は貴女を利用しました。


小さな頃から、貴女の血を吸い続けました。


もう必要がない。


要らない。


そう言いながら・・吸い続けました。


もう貴女はふらふらで・・それでも私は吸い続けました。


貴女のお陰ではないと言いながら。


恩着せがましいと言いながら。


時には裏切り、時には傷つけ、それでも吸い続けました。


音を立て、遠慮なく、たくましく、図太く、凛々しく、清々しく、残酷に吸い続ける私に・・貴女はまだまだ吸いなさいと。


まだまだ吸って良いよと言いました。


私はそれが当たり前で。


それが当たり前だと思い、暴言を吐きました。


当たり前だ。


もっと寄越せ。


何でこれっぽちしか出ないんだ。


もっと寄越せ。


偉そうにするな。


もっと寄越せ。


そんな私に貴女は笑って・・笑いながら・・良いよ、良いよと・・言うばかりで・・。


私は・・疑いもせず、否定もせず、ただ・・足りないと言うばかりで・・。


暑い日も。


寒い日も。


風が強い日も。


雨が・・吹き付ける日も。


雪が・・綺麗じゃない日も。


月が綺麗な日も。


曇りの日も。


嫌な事があった日も。


楽しい日も。


春の陽気日も。


じめじめした日も。


疲れた日も。


温もりに飢えた日も。


寝不足な日も。


貴女は。


貴女は毎日私に血をくれていましたよね。


貴女は・・毎日・・せがむ私に・・血をくれましたよね。


あの頃の私をどうか・・。


どうか許してください。


私は子供だったのです。


どうか・・どうか・・どうか・・どうか・・どうか・・どうか・・許して・・許してください。



今日、私は親になりました。


貴女はもう居ない。


見せられない。


過労で亡くなった貴女を恨んだ・・愚かな私を・・どうか許してください。


この子を見せたかった。


貴女に見せたかった。


貴女はもう居ない。


どんなに願っても。


どんなに悔いても。


貴女はもう居ない。


貴女はこんな気持ちだったのですね。


どんな事をしてもこの子だけはと・・こんな気持ちだったのですね。


言えませんよね。


大きすぎて・・言えませんよね。


言葉で言えないから・・貴女は言わなかったのですね。


貴女の気持ちが・・今頃・・今頃解った私を・・愚かな私を・・どうか・・どうか許してください。


子供だったのです。


愚かだったのです。


無邪気だったのです。


貴女の深い愛情も知らずに・・私はのうのうと暮らしておりました。


貴女の気遣いなど・・知ったような気でいました。


とんでもありませんでした。


ごめんなさい。


ごめんなさい。


本当にごめんなさい。


貴女が私にくださったこの血をー・・。


今度は私がこの子に分けるんですね。


貴女が死んだ時。


私は・・表面では泣き崩れ・・貴女の名前を叫び、嗚咽し、声を枯らしました。


しかしー・・心の何処かで・・介護が必要無くなった、死亡保険が入る、等などの感情と・・死者に何て事をという感情が・・渦を巻いておりました。


利用出来なくなったと思いました。


あの時の私はー・・病気でした。


愚かさもあそこまで行けば病気です。


今は、はっきりと解ります。


貴女の最期の・・気持ち以外は・・。


後悔しましたでしょうか?


私を・・愚かな私を・・育てた事を。


あの時ー・・。


あの時、酷い言葉を放ち、家を出た私が帰った時・・貴女は笑ってご飯を作っていてくれていてー・・。


私には、それが・・当たり前でー・・。


当たり前にむしゃむしゃと、むしゃむしゃと。


本当に図太く・・意地汚く。


そんな私を・・貴女は・・。


貴女は優しく微笑みながら笑って・・・・何で・・どうしてそこまで?どうしてそこまで汚い私を愛せたのですか?疲れて、職場で倒れるまでー・・どうして?どうしてなのですか?・・私もこの子に・・この子に同じ様に出来るのでしょうか?


いいえ・・しなければならないのでしょうね。


それが私の・・罪滅ぼしですよね。


今この子は私のお乳を吸っています。


このお乳がやがてー・・私の血に変わり、この子がソレを遠慮なく吸っても。


私はにこにこ笑って・・まだまだお上がりとー・・。


貴女が・・私にしてくださった、示してくださった、その深い愛情をこの子にも示してあげられたなら。


許してくれますか?


頑張ります。


決心します。


貴女のように強く育ててみせます、だからー・・だからどうか・・どうか・・貴女の元へー・・。


死後天国の、貴女の元へ・・謝りに行きたいのです。


どうか・・。


どうか。


最期の貴女の気持ちをー・・逝く瞬間の貴女の気持ちをー・・私は聞き届けたいのです。


怖いです。


恨まれて当然だと心から思います。


受け止めます。


どんな恨みの言葉でも受け止めますからー・・。


謝りに行きたいのです。


最期の貴女の気持ちを聞きたいのです。


愚かだった・・病気だった過去の私をー・・どうか・・許してください。


この子の子を・・見届けてから参ります。


全てを捧げ尽くし、干からびて死ぬ事を約束します。


だからー・・待っていて。


待っていて。






待っていて。









〈END〉


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