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8.季節廻る塔

 アーサーが目を覚ますと、そこは季節(めぐ)(とう)の広間でした。

 長いすにすわっていて、となりではエリザベスが(ねむ)っています。

 そっと(かた)()すると、「ううん」と言いながら目を覚ましました。


 その時、

「どうやら起きたようですね。」

と、遠い昔に聞いた、とてもうれしい声が聞こえます。


 2人が顔を上げると、そこには冬の女王が2人をニコニコしながら見つめていました。その後ろから、春の女王、夏の女王、秋の女王もやってきます。


 立ち上がった2人は冬の女王をじっと見つめました。エリザベスがどこか(ゆめ)の中にいるように、

「お母さん?」

とつぶやくと、冬の女王はうなづいて、

「そうですよ。……アーサー。エリザベス。大きくなりましたね。」

と2人を()きしめました。

 アーサーとエリザベスの目から(なみだ)がこぼれました。


「お母さん。お母さんお母さんお母さん!」

 何度も何度も母を()び、強く()きしめるエリザベス。そして、ただじいっと(なみだ)を流しているアーサー。


 そこへ下から、

「おいおい。……私を(わす)れてもらっては(こま)るよ。」

と声がします。

 冬の女王が「あらあら、あなたったら。」とクスッと笑いながら少しはなれました。

 その足元からは、あのキツネのチャールズが(あらわ)れました。


 女王がチャールズを()き上げて、2人にほほえみかけます。

「まだわからない? お父さんよ。」


「「えっ?」」

 2人は(おどろ)きました。

 その様子を見てキツネのチャールズが、

「ははは。まあこの姿(すがた)だからね。」

と笑います。


 そこへ他の女王たちも()りこんできました。

 春の女王が、

「よくぞやり通してくれたわ。(つむ)ぎ手のお2人さん。これでようやく春にすることができるわ」

とうれしそうにいいます。


 どうやら女王たちから(たく)された指輪(ゆびわ)は、すでにそれぞれの女王の指にはめられているようです。たった一つ、……冬の女王の指輪(ゆびわ)をのぞいて。


 夏の女王が、

「いつまでもこうしていたいのはわかるけど。そろそろ時間なのよ。」

と残念そうに言います。

 アーサーが「え?」と言うと、秋の女王が2人の後ろを指さしました。


 ふり返った2人が見たのは、広間の(かべ)にある大きな鏡でした。そこにはあの公園のベンチが写りこんでいます。


 キツネ姿のチャールズが2人の前に回り、

「本当は2人とずっといっしょにいたい。……けれども、お前たちにはお前たちの生きるべき世界がある。戻らなきゃいけないんだよ。」

と言いました。悲しげな表情(ひょうじょう)になるアーサーとエリザベスでしたが、冬の女王が後ろから2人の(かた)()きよせました。

 そして、その耳もとで、

「大丈夫よ。私たちはいつも貴方(あなた)たちの心の中にいる。ずっと見守っているわ。」

とやさしく語りかけます。

 いつの間にか、2人は再び(なみだ)を流しています。その(なみだ)を冬の女王ヴァージニアがぬぐい、2人を鏡の前に連れて行きました。


 鏡の前で並んだ2人がふり返ります。

 ヴァージニアが、春の女王たちが、2人に手をふります。


 チャールズが、

「悲しむことはない。……いつでも物語の中で出会える。(ゆめ)希望(きぼう)(むね)に行きなさい。」

と言いました。


 うなづいた2人は、手をつないで鏡の中へと歩いて行きました。


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