第二話 〈過去〉
まだまだ続きます
入れ替わりって....まじかよ....
拓人は住宅の窓の前に立ち尽くしていた。すると、どこからか声が聞こえて来た。耳を澄ますと、それは自分の懐からだった。
「オイ!苦しい!苦しいぞ!」
拓人の脇の下から小さな猫が顔をだした。
「おいおい、苦しかったぞ。私を誰だと思っている」
(この声は...)
拓人は何かを悟ったかのようにその小さな猫を掴み、大きく振りかぶって地面に叩きつけようとした。
「ちょ!待て待て待て待て!ストーップ!ストーップ!話を聞けええ!」
小さな猫がそう叫ぶと拓人は呟いた。
「お前ザタナキアだろ」
「えー?なんのことー?」
「オイ。しらばっくれるつもりか、次は本当に叩きつけるぞ」
「わかった!わかったから!私はザタナキアだ!だから叩きつけるのだけは止めてくれ!」
「オイ、俺の体はどうした なんでこうなった」
「さっき私がお前を魔王にすると言った後にお前の頭に手を当てて魔法を唱えただろ?その時に、お前をダクトレアに転送する魔法を唱えたつもりが、入れ替わりの魔法だった。それで、お前の魂は私の体に入ってしまったんだ」
「お前ポンコツかよ。てか何でお前は俺の体に乗り移らなかったんだよ」
「乗り移らなかったんじゃなく、乗り移れなかったんだ。お前の元の体に配置されている魔力の器が小さすぎた。あれはこっちの世界じゃ幼児並みの器だ、だから私は仕方なく道端にいた猫に乗り移った」
「え?嘘ぉ...俺って幼児とか猫より弱いってこと...?」
「そういうことにるな」
「まじかよ...てか!そんなことはどうでもいいんだ!早く俺を元の姿に戻せ!」
「そ、それがだなあ..........お前の体がなくなった」
「は?」 「テヘッ」
「やっぱお前殺すわ」
「待った!待った!一つだけ元に戻る方法がある!来年に開催される、世界発展魔国フェスティバルで優勝するんだ!そうすれば一つ願いが叶う!それで私たちを元の姿に戻してもらうんだ!」
「優勝って言ってもどうすればいいんだ?」
「お前が魔王になってダクトレアを発展させる。それだけだ」
澄ました顔でザタナキアはいった。
「それだけだ。とかカッコつけて言ってるど俺は正直乗り気じゃないし、しょうがなくやってるだけだからそこんところは勘違いするなよ」
「あぁ、勿論承知の上だ。まずはお前の家となる、城に迎え」
拓人は不安しか感じていなかったが仕方なく、言われたとおりに城へ向かった。城に向かう途中、拓人は国王だというのにも関わらず誰一人として国民が声をかけてこない事に疑問を持った。
「ザタナキア、なんで国王が目の前を通っているのに誰も挨拶してこないんだ?お前元国王だろちゃんと教育してんのか?」
「ま、まあ。色々...あってな...」
「お、おう」
ザタナキアは何かを隠して居るようだった。そして、悔しそうな表情だった。
「何があったか知らねーけどよ、猫が悩むんじゃねーよ」
拓人はその場の空気を和ますように笑いながらそう言った。
「そうだな」
と、ザタナキアは答えるが、その曇った表情は晴れる事がなかった。
そして二人は城へ向かった。
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