プロローグ 《終わりと始まり》
初投稿です
俺は飯島拓人、平凡な高校二年生だ。
毎日5時30分に起き、歯を磨き、制服を着て、いつもの電車に乗車。同じ時間に乗ってくる可愛い女子高生を横目に電車に揺られる。
電車を降りたら、コンビニに寄って昼飯を調達、そして学校へ行く。
学校が終わっても、俺には一緒に帰る彼女はもちろん、友達もいない。余った時間をコンビニのバイトで潰し、駅に向かい、電車に乗って家へ帰る。
そんな退屈な毎日の中にも唯一幸せがある。
それは、風呂から上がってアイスを食べながら、大好きな漫画を読むことだ、俺はそれだけのために生きていると言っても過言ではない。
そんな最低で最高の毎日に、ある日終わりが来たのだ。
季節は春だっただろうか。俺はいつもと同じ時間に駅に行き、大好きな歌手のデビュー曲を聞きながらホームで電車が来るのを待っていた。
すると急に、後ろから「始まり始まりぃ」と不気味に呟く声が聞こえた。
俺は驚き、すぐに後ろを振り向いた。後ろにいたのは特徴の無いグレーのスーツを来た男だった。俺の親は俺が生まれてすぐ離婚した、俺の身は母親に引き取られ、母子家庭の環境で育った。スーツの男と関わりを持つなど、滅多にない。
その男の目は、眼鏡越しでも分かるほど狂気に溢れていた。
どちら様ですか、と恐る恐る聞き返そうとしたとき、男は俺の体を線路の方向に押し倒した。
いったい何が起きたのかその時の俺には分からなかった。俺は、その男の予測不可能な行動に、受け身を取れず線路に落ちた。
「いてぇ...動けねぇ…」
勢いよく、線路に後頭部をぶつけてしまったようだ。目眩と強い吐き気に襲われる。
「くそ...たすけて...」
必死に体を動かそうとし、助けを求めた。だがホームの方を見ても誰も助けに来る気配がない。なぜなら、もう電車がすぐそこまで来ていたからだ。
「いやだ...いやだ...!」
拓人は叫んだ、だがその声は電車の轟音にかき消された。
そして、春の心地よい温かみを帯びた風と共に儚く拓人の命は消えていった。