とある男子高校寮の一室の、ある夜の一コマ。
BL色はうっすいです。
※別サイトにて上げているものを加筆修正したものになります。
2016.10.29 補足?の下部より、リア充サイドを追加しました。
“今日は卒業式。高校生活を振り返ってみると、あっという間の三年間だったなと思う。
「哲理、またな!」
「今度みんなで遊ぼうぜ!」
「…おう!またな!」
友人達に軽く手を振り、また会う約束をして別れ、桜の花びらが風に舞いながら遠くにヒラヒラと飛んで行く様を目で追いながら。
僕は、いつの間にか今はもう使われていない学園の敷地内にある古い教会の前まで来ていた。まるで、何かに教会へ向かうよう導かれたかのように。
(……教会…?)
“知ってる?旧校舎裏にある教会の扉を開ける事ができたら、好きな人と両思いになれるんだって!”
どこの学校にでもありがちな恋に関する噂話。
別に信じている訳じゃない。…信じている訳じゃない、が。
「…せっかくだから試してみるか?」
ふと脳裏に浮かんだのは…学校一の美人と言われており、スタイルは抜群、成績優秀で運動もできて、明るく優しい性格。
そんな彼女の周りには常に男女問わず沢山の人がいた。そんな彼女の名前は…鷹崎愛美さん。
密かに、ずっと好きだった人で、帰りが合えば一緒に下校したり、時には休日に一緒に遊びに出掛けたりもした。
「っ、」
ゴクリと唾を飲み込み、僕は教会の扉へ手を伸ばした――…
ガチャ…
「あ…」
ガチャ、ガチャ…!
「……開かない」
ヒュー…と。春の筈なのに、ここにだけ真冬の冷たい風が吹き抜けていった……気がした。
「……帰るか」
こうして、僕の高校三年間の学生生活は幕を閉じた――。
――卒業後。僕はアルバイト先だった飲食店に就職。友人達とは時々連絡を取り合っては、集まったりして騒いでいる。仕事も社員になると覚える事が増えて大変ではあるが、それなりに楽しく毎日を過ごしている。
好きだった彼女とは卒業後、会う事は無かった…。
時々、彼女と遊びに行った事を思い出しては、胸の奥が痛むような気がしたけれど。…きっと、これも時と共に良い思い出へと変わって行くのだろう――…
END 【想いは時と共に――…】”
「って!!うえぇえええ!?なんっでだよ!!?何で、まなみんとラブラブエンディングじゃねぇのー!!『あのね、私…哲理くんの事がす……ううん!ごめんね、なんでもないの!』『…えっ?今…』『き、気にしないで!また今度話すからっ!』って告白未遂イベントは何だったんだよぉおお!?」
うおぉお!と悲しみの雄叫び(?)を上げて居ると…
ダンッ!!
「うひゃっ!?」
俺と同室であり隣の個室のリア充(…つっても、ここ男子校だけどな!)が、壁を蹴って来たようだ。
「あ?居たのか。…ああ、そういや…」
一旦ゲームの電源を落とし、隣の部屋に向かった。
コンコン、と。ノックをするが返事がない…ふむ。
「……。まあ!あの子、反抗期かしら?もうそんな年頃なのねぇ」
「…そうかもしれん。ふむ、取り込み中かもしれないから、そっとしておいてやりなさい、母さん」
「そうね、お父さ…「うるっせーんだよ!!テメェは人の部屋の前で何やってんだよ!!」ん」
ガチャ!と、勢いよく扉が開くと同時にイケメンリア充が出てきた。
「反抗期の息子を温かく見守る父と母ごっこ?いやぁ、取り込み中悪いね」
「何もしてねぇよ!!」
リア充はチッと舌打ちすると、何か用かよ…と、もの凄く嫌そうな顔で聞いて来たので…
「いや、俺さっき煩くしちゃったみたいだから一応謝りに来てみたよ!と言う訳で、ごめーんね!」
「オタク…テメェ、本気で悪いと思ってねぇだろ」
「んな事ないよ!まなみんに振られた腹いせにリア充からかってやろうなんてこれっぽっちも思ってないよ!」
「……本音を隠す気ゼロだな」
「そう!俺は…俺にとって、どうでも良い奴に取り繕うのは面倒だから本音で話すって決めてるんだよ!」
「ああ、そうかよ。奇遇だなオタク。俺も別にテメェの事はどうでもいい。……どうでもいい、が。騒音出すなよな、すっげぇ耳障り」
「イエス、サー!!それでは、自分は持ち場に戻るであります!…ぶっちゃけ会話に飽きたので!」
「蹴り飛ばすぞコノヤロー」
「暴力反対ー」
くるりと踵を返し、そのまま自分の部屋に戻ろうとしたんだけど、言い忘れがあった事を思い出した。
「……食器棚の引き出しに風邪薬入ってるから。飲みたければ飲んでもいいよ。…あ、食事してないなら、冷蔵庫に賞味期限ギリギリのプリンあるから、それも食べていいよ。薬を飲む前に空腹じゃまずいだろ?…か、勘違いしないでよね!べ、別にあんたの為じゃないんだから!変な病気とか移されたら嫌だからなんだからね!」
と、言ってダッシュで部屋に戻った。(扉を閉める前に『誰が変な病気だコラァ!!う、げぇっほ!ごほっ!』とか聞こえたような?あーあー、叫びすぎるからー)
俺は『今度こそ、まなみんとラブラブじゃー!!』と意気込む。
そして、その場に残っていたリア充が…
「……何だあれ。…ツンデレ…ってやつか?……つか何で俺が風邪引いてるって知ってたんだ?」
と、呟いていた事は俺の知るところではない。
―――
補足?
哲理は朝、イケメン君の調子が悪そうだなーと思っていたけど、学校に着いたら忘れて、帰宅後も、まなみんに気を取られ忘れていて、壁をイケメンくんに蹴られてから「あ。そう言えばー…」と思い出し、気まぐれに(夕飯をがっつり食べてしまい、プリンまでは入らない。薬は滅多に飲まないので使用期限が切れたら勿体無い〜…な理由で(笑))親切にしただけだったりします。
哲理→ギャルゲ中心だけど割と雑食(評判が良ければBLゲーにも手を出す)のゲーオタ。
イケメンくん→リア充(哲理から見て)。実際は、可愛い系男子にモテてもちっとも嬉しくない。オタク嫌い。
―――
…―――何だか、靄がかかったような視界の中。
俺は、平均的な身長。黒髪、黒目で見た目は至って普通の同じ年の同性の片腕を掴んで、正面から向き合っていた。
『好きだ』
この三文字が言えるまでに、どれほどの時間が掛かったか。どれほどの勇気が要ったか。目の前にいるコイツは知らないのだろう。
『な、何を言ってるんだ! 冗談は止めてくれよ…』
目を見開き、頬を朱色に染め慌てている彼に、フッと笑みを向けて。
『冗談なんかじゃない。俺は、お前の事が好きだ』
『えええ? いや、でも俺、その…っ。お前の事をそんな風に、見た事なくて…でも、なんだ……ううぅ』
戸惑ってはいるけど、迷惑そうではない様子に安堵する。
あー、だの。うー、だの言いながら。チラチラ俺の顔を見たり、あちらこちらに落ち着きなく視線を彷徨わせるコイツが、愛おしくて堪らない。
掴んだままのコイツの腕を少しだけ強引に引いて、俺はコイツを自身の腕の中へと抱き寄せた。
『好きなんだ、哲理。俺の事が嫌いじゃないなら付き合って欲しい』
(……は? 哲理? 誰だ、それ…)
ピピピッ、ピピ…ッ。
携帯のアラームの音で目が覚め、アラームを止めた俺は、体を起こした。
「チッ、哲理って。あのオタク野郎じゃねぇか…んで、あんな夢なんか見るんだ? 最悪」
あれは悪夢だな――…
「…顔でも洗ってくるか」
ベッドを下りて、ガシガシと頭を掻きながら部屋を出て、洗面所へ向かう。
ガチャ。
「あ!」
「あ?」
ドアを開けたら、オタクがいた。
「オハヨー」
オタクは俺に向けて軽く挨拶してきた後。自分のタオルで手を拭いていた。
「……」
挨拶に対してシカトしたが。オタクは特に反応せず、何事も無かったかのように出て行こうとした。
「…待てよ」
「ん? ハイハイ、何でしょー?」
「…んで、何で」
俺は、こんなヤツの夢なんか見てるんだよ。この間、ちょっと優しくされたからって(いや、あれは…優しかったか?)絆されたのか? 馬鹿な。
「ちょっとー、なになに? リア充の籐真くん! ボクのコトを熱く見つめてくれちゃってー! あっ! もしかして! 俺の“るりるり”パジャマが羨ましいんでしょ~? これ限定物だからね~!」
「…そんなんじゃねぇよ。アホかテメェは」
いや、アホだな。
「……チッ」
こんな、オタク野郎なんかを――…
「じゃあ見つめないで下さ~い。るりるりが減っちゃうでしょーが! つか、舌打ちされたし! ウケる!」
「減るかよ! ヘラヘラ笑うな!」
…――気にしてんのか、俺は。
「…うぜぇ、早く出てけ」
グイッとオタクの肩を押し、洗面所から追い出した。
「はあ!? 俺が何をしたと!?」
「何もしてねぇよ…何も」
きっと。気になったのは、あんな変な夢を見たせいだ。そうに違いない。
――――――
リア充くんver?そして名前は、籐真くん(名字)です。
ここまでお読み下さりありがとうございました!!




