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会合

次の日、僕達はふたりきりで出かけることとなった。彼女はどうやら僕を便利な道具か何かと勘違いしたしまったらしく、僕は強制出勤となってしまっている。トランペットの休日みたいだな、とふと思ってしまった。と言ったもの喜んでいる自分がいて、愕然としてしまった。

さて、今ちょうどに集合の時間となったのだが、彼女はまだやってこない。きっと道草を食っているのであろう。前と同じだ。あの頃と。あの約束をした、中3の頃と――「おまたせぇ!」

威勢良い言葉で出てきたのは、やっぱり幼なじみであった。彼女はいつも通りの笑顔と傲慢さを周囲に振りまかせながら、まるでこの道路が自分の所有物であるような素振りで近づいてきた。しかも遅れたことに対する謝罪もなしに。僕は彼女に対し、礼儀などを一から教えようとしたのだが彼女がすべて真面目に聞いた試しがないので、遅れた時には謝罪をしろ、などの基本を教えていたのだが、その時の彼女は以外にもしおらしい態度で聞き入っていて、らしくないと思ったと同時に、少しばかりかわいいと思ってしまって自分の頭から余計な煩悩を追い出した。

その後は彼女と一緒にアパレル店で買い物をしたり、屋台を冷やかしたりとしていたのだがさほど興味のない僕にとっては楽器店に行って使いきったグリスや新しいマウスピースを買いにいった方が有意義な時間を過ごせると思う。だが彼女主導のこの散歩もどきでは許されない。本来ならば基本的人権の尊重だの女尊男卑だの言って批判するところであるのだが、彼女には言わなかった。

それはおそらく恋心からなのであろう。

夕方夜もそろそろ冷えてきた頃、僕達はベンチに座って会談していた。最初の頃は入っている部活での体験だの海外はどうだったかだのの、いわゆる世間話であったのだが、彼女がふとこんな話を振ってから、僕のすべてが変わった。

「ねぇ、私のこと、どう思う?」

まず、お前がどう思うかを教えてくれ、この一言を発するのにも苦労し、尚声は震えていた。いかんせん急にそんな話題を好きな人から振られても、こんあくするだけであろうことは想像に難くない。彼女ははにかみ、また耳を紅く染めながらこう告げた。

「私は、きみのこと、好きだよ」

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