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再会

彼女が入国ゲートから出てきた。僕は息を呑み、それから得も言われぬ感情に支配された。ついに彼女が帰ってきたのだ。彼女とは、幼なじみの関係がある。彼女とは幼いころはよく一緒に遊んでいて、他の人からはよく冷やかされていた。だが、彼女との親友のような関係が終ったのは中学1年の時であった。彼女は父親の仕事の関係で海外へと引っ越してしまったのである。その時の僕は言い表せないほどの虚無感に襲われた。その虚無感は長い間続き、感情を拭い去ることは出来なかった。その感情が恋愛感情だと気づいたのはつい最近のことである。その原因の出来事に考えを巡らせていると、いつの間にか近づいていた彼女が声をかけてきた。

「やっほー、ひっさしぶり!」これは彼女だ、彼女以外の何者でもない。それが分かっているのだが、なぜだか現実味がわかず、ただただ立ちすくんでしまった。彼女は訝しむような顔つきをし、「なんだか冴えない顔だねぇー。嫌なことでもあった?」

「嫌なことなんて無いさ」僕は素っ気無く答えた。いつもの答え方とは違う、本当の僕。優等生というポジションを守るために仮面をかぶっている僕。普段から仮の人格を表に出している僕にとって、久しぶりの本当の僕であった。その人格には新鮮さと同時に懐かしさを感じるものであった。僕はそんな自分にこそばゆい感覚を覚えながら、彼女の返答をまった。

しかし帰ってこない。なんだ、彼女らしくないな、と思って前を見てみると、顔を垂らした姿の彼女がいた。僕は息を呑んだ。彼女らしくない彼女である。液体が頬を濡らしている。僕はつばを飲んだ。彼女は一度小さい嗚咽を漏らし、その後いきなり僕に飛びついてきた。僕は飛び上がるほど驚いたのだが、彼女を驚かせる訳には行かないので、驚愕の感情を隠しとり、その代わりに彼女の頭をなでた。彼女は小さく「会いたかったよぉ」と嗚咽とともに漏らした。僕は顔に感情を表さない。どんな顔をすればいいのか分からないのだ。いや、分からないのでは無いのかもしれない。ただ分かりたくないだけかもしれない。ふと前を見ると入国ゲートから両親が出てきた。彼女のことだ、彼等を待たずに突っ走ってきたのだろう。審査官だって殴り飛ばしてしまいそうだあらな。流石にそんなことはしないと信じたいけど。彼女は両親に気づいたらしく、一度涙を拭い、そしてからにんまりとした笑顔が戻った。そうさ、彼女はそうでなくちゃ。と、僕は思った。「なに近づいてんのよ変態め」彼女はそう言って頬を膨らまし、僕をくすぐってきた。くすぐりに弱い僕は我慢をしようとしたが、諦めた。この時、僕は彼女が戻ってきたということがやっと実感でき、同時に何かを思い出しかけた。重大な"約束"を。

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