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第三次世界大戦

作者: 灰羽根瑠璃

1.


 数学分野の精鋭が、独自のプログラム言語と次世代の暗号、複素数による鍵を作り、国内の情報を秘匿する。

 物理学分野の精鋭が光学迷彩と量子コンピューターを作り、他国のネットワークに侵入する。

 化学分野の精鋭と物理学の精鋭が、抑止力として電磁気力を利用した爆弾を開発する。

 地学分野の精鋭が資源を得るために火星開発に乗り出す。

 宗教学の精鋭が国を一つにまとめあげ、一方で政治学の精鋭が強かに国益を追求。

 統計学者と民族言語学者が他国の暗号を解読し、心理学の精鋭が他国の行動を読み切る。

 体術家の精鋭が光学迷彩を感じ取り、始末。狙撃の精鋭が首脳を暗殺。


2.


 しかし哲学の天才が論理的に戦争の無価値さをネットで主張。

 無名の人たちがそれを流布し、一般人はおかしさに気付き始める。

 芸術家たちは戦争を皮肉り、無名の詩人たちは愛を唄う。

 武道の師範たちは道徳の必要性を主張し、その研ぎ澄まされた感性で次々と狙撃主を気絶させる。

 やがて無名の人たちの働きによって戦争は集結し、発展した科学は生活へと利用された。


3.


 無名の哲学者は死の直前にこう言った。


「科学は戦争によって発達するが、何も争い合うことはない。

 憎しみは次の憎しみを生み、

 そのスパイラルは誰かによって止められなければ、

 この世は憎しみに満たされて死舞う。

 何故人は人を殺してはいけないのか?

 それは目を閉じるとよくわかる。

 私の中にある何かが、そうしてはいけないと語りかけている。

 一つになることで争いは無くなるが、

 それは争いによってしか勝ち取ることが出来ないのは矛盾していないだろうか?

 色々な人が居て、色々な考えがある。

 それらを認めようとする考えは無価値だろうか?

 戦争は終わったが、世界は二極化するかもしれない。

 0が過去で1が未来だとしたら、我々は一体どこにいるのだ?

 全てが割り切れたら、世界はモノクロになる。

 曖昧の価値を認めるべきだ……。

 ああ、クロエ……。

 お前はこういう時、どう考える?

 お前は無学だったが、誰よりも人生を悟っていた。

 私は果たしてお前と再会できるだろうか?

 私はとてつもない過ちを犯してしまった。ああ、私は……」


 彼の亡き後、1000年が経過した後に世界は統一された。

 彼が逝ったのは、天国か?地獄か?

 それとも、彼は彼女と再会する、ただそれだけの為に、この世に生き直したのだろうか?

 世界を裏で動かしていた、その男が。


4.


 電磁気爆弾は発電に利用され、火星のプラットフォームは食料開発へ利用された。火星開発の為に作られた輸送機は資源と人々を運ぶようになり、大量に生産された爆弾は太陽系外調査へ利用された。電磁気爆弾を作る過程で行った化学実験は癌の特効薬に役立てることが出来た。

 政治家は反省を踏まえ、人望を集めることに力を尽くした。

 彼の考えは知られることがなかったが、何故か彼の思想は反映された。

 誰よりも好かれた無学な女と、誰も寄せつけなかった天才の男。

 彼等は、一つの宝を残していたのだった。

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