蝶に惑わされ
狂おしいほど
甘い香りの鱗粉
鮮やかな翅の彩
軽やかな飛翔
華麗なる動き
魅了された花に近付き
隠した針で
甘美な毒を注ぎ込む
その毒は全身を痺れさせ
恍惚とした気分を味わわせる
毒を注がれた花は
自ら望んで蝶にその身を差し出す
蝶が口付け
花の蜜を吸い始める
静かな食事
静かな殺戮
蝶は全ての蜜を奪い去ると
次の花を探すために羽ばたく
その姿は
ただ生きる喜びのみがあり
今の今まで一緒にいた花のことなど
覚えてはいまい
蝶の後に残るものは
蜜を吸い尽くされた
花の死骸のみ
それを知りながらも
花は蝶に焦がれる
自らの蜜を
蝶が吸い尽くす夢を見
それを望むのだ