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【妖刀の行方】第5話 エピローグ「やれやれだ」

「ギャアアア」


 奇声を発したのは部長じゃなくて万代くんだ。


 目は吊り上がり、口は耳まで裂けて牙が覗いている。アソウに飛びかかると首筋に噛みついた。


 私はその姿に見覚えがある。

 佐賀の猫塚を訪ねた際に知り合った男の子・アキラくんが“七つ尾の猫”に憑かれたときと同じなのだ。


 取り憑かれた万代くんに魔力は通じないらしく、アソウカイジを組み伏せると殴打して失神させた。




「ななお、ななおなの?」

 


 私が勝手に付けたニックネームで呼ぶと、万代くんの口から白い雲のようなものが出てきて“七つ尾の猫”が現われた。


 当の万代くんは猫塚事件を見ているが、なつきとアンナちゃんはさすがに怯えて後ずさった。

 化け猫みたいなのが目の前にいるのだから、自然な反応だろう。




「まさか佐賀の猫塚からここまで来ることになるとはのう。そなたとは妙な縁があるようじゃ」




 ななおはぼやきつつ事情を話してくれた。




「神功皇后が直々に関わってはことがややこしくなるから、わたしにそなたを助けるようお命じになったのだ。動かぬわけにはいかんじゃろう」




「そうなんだ、神功皇后が……。ありがとうななお。おかげで命拾いしたわ」




「まあよい。それと、その刀じゃが、神功皇后が人間に持たせるとろくなことがないから回収するようにおっしゃった。わたしが預っていくぞ」




 ななおはそう告げると“波平”を咥えて姿を消した。





□エピローグ


 私は里中部長が正気を取り戻すといきさつを聞いた。


 新入部員歓迎企画「刀剣を知る集い」で大牟田の『刀剣イベント』を見てから、私とアンナちゃんの様子がおかしいので気になったそうだ。


「それで行動に注視していたら、夜中に学生寮や高級マンションに行くじゃない。心配になってこっそりつけていたら般若の面をつけて刀を持った女と戦いだしたからびっくりしたわ」


 部長はあの修羅場を見ていたというわけだ。


「でもなぜ“波平”を持ち帰ったんですか」


 私が疑問をぶつけると部長はしどろもどろになった。


「それがね……よく覚えてないけど、気がついたら手に刀を抱えていたのよ。しかも鞘にちゃんとおさまった状態で」


 刀が「大事にすれば役だつこともある」と囁いたような気がして部室のロッカーに保管したのだという。


 部長はさらに続けた。


「本来日本刀なんてさほど興味はないはずなの。でも、ときどき一人になったときに鞘から抜いて見入るようになったのよ」


 そんなある日、刀が囁くように「オカルト研究会のアソウカイジが部室で悪事を指図している」と”特殊詐欺グループ”のことをほのめかしたそうだ。




 アソウカイジは私が警察と救急に連絡したので、緊急搬送されていった。

 

 パトカーから降りてきたのは奇しくも通り魔事件のときとお同じ警官で「またあんたたちか」と呆れられた。


 一応事情聴取されたのでアソウが特殊詐欺グループに関与しているとSNSで知ったため、部室で追究したら暴れ出してショックで失神したと言い繕った。


 どうせ本当のことを話しても、彼を痛めつけたのが化け猫だなんて信用しないだろう。

 里中部長も日本刀がないのだから、銃刀法違反を疑われずに済んだ。



 こんな出来事が続くと、歴研部は私が入部してから“オカルト”的な要素が濃くなっているような気がしてきた。やれやれだ。


立花寺君枝に怪異はつきもの【歴研部員「橘の君」事件簿】

第3章【妖刀の行方】までお読みいただきありがとうございます^^


もしかしたら続編を書くかも。そのときはまたよろしくお願いします。


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