【消えた妖刀】プロローグ~通り魔事件
本作は『なつきとゴイっち -陰キャJKがゴイサギを助けたら天神さまやえんまさままで関わる騒ぎに-』のスピンオフです。高校時代は成績優秀でスポーツ万能、マドンナ的存在だった「立花寺君枝」が大学に進学し歴史研究部に入部。不可解な出来事に立ち向かってゆくちょっぴりホラーな小説をお楽しみください。
『なつきとゴイっち -陰キャJKがゴイサギを助けたら天神さまやえんまさままで関わる騒ぎに-』
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この春は開花予想日より少し遅れてお花見シーズンが到来した。
それでも福岡市は平年並の3月中旬から咲きはじめ、入学式前には満開となりそうだ。
まだ肌寒い風を感じる夜、桜流しとまではゆかぬ雨がちらつくなか一人の男がアパートの駐車場で車から降りた。
「キャーァァァー」
女性のものと思われる叫び声が闇に響き渡った。
*
私は花粉症か風邪のせいか定かではないが、昨日から頭がぼうっとしてスッキリしない。
最悪なコンディションのなか母親から電話がかかってきた。
「君枝!君枝ね?なんばしよっとね、よなっときだけん!」
親とはいえ、こんなときまでジョークに付き合わされる娘の身になってほしい。
テレビで昔流れていた銘菓のCMをパロティーにしたつもりだろうが、元々はこちらから銘菓をねだる電話をかけなければ辻褄があわない内容だ。
「もう。そっちからかけてきて『用のあるときだけ電話してから』はなかろうもん」
母は私の声から不機嫌な様子を察知して、早々に話題を変えた。
「朝から笑わせちゃろうと思っただけやないの。それよりあんた、ニュースで通り魔事件があったって言いよったけど、気をつけりぃよ」
「そうなんよ。事件があったところは私が借りたハイツとけっこう離れとるけど、同じ福岡市内やけんね。犯人はまた捕まってないから不安ちゃ不安やね」
「もう今度の月曜日が入学式やろう。心配やけん、お母さんもやっぱり一緒に行こうかねぇ」
何かと理由をつけて私の大学の入学式に同行したがる母だが、キッパリお断りして電話を切った。
我が子の晴れ姿を見ようと一緒に参列する保護者は少なくないらしい。
ただ、私の母親は娘よりも自分が目立ちたい魂胆が見え見えである。
高校の入学式にはついてきたが、娘そっちのけで周りとおしゃべりして盛り上がり、挙げ句の果てに先生から「お静かに」と指摘される始末だ。
私としてはもうあのような恥ずかしい思いをしたくないので、大学の入学式には「来ないで」と言い続けてきた。
母親が電話で話していた「通り魔事件」とは前々日の夜10時頃に男性が襲われた事件のことである。
ニュースによると、サラリーマン風な男性が首から血を流して倒れていたところを通行人が見つけたそうだ。救急搬送されたが意識不明の重体で、警察は男性が事件に巻き込まれた可能性が高いとみているが、被疑者の割り出しは進んでいないという。




