異世界転移したら勇者じゃなくて「※注意書き」だった件
「ピンポーン」
「休日の朝から誰だろ」
俺は玄関を開けた。
「異世界転移のお知らせでーす」
「は?」
気づいたら異世界にいた。
ふざけんな。
「おい誰か説明しろよ!!」
とりあえず叫んでみたら、近くにいた兵士っぽいやつがビクッてした。
「ひっ!?しゃ、喋った!!」
いや喋るだろ人間なんだから。
「お前、誰だよ」
「お、俺は王国騎士団の者だが……その……お前が例の……」
例の?なんだよその言い方。
「今回召喚された“注意書き”か……」
「……は?」
ちょっと待て。
今なんて言った?
「勇者様の横に表示されるやつだろ、“※この先ボス戦です”みたいなやつ」
「いや俺人間なんだけど」
「でもお前、体見てみろよ」
言われて自分の体を見た。
……あれ?
なんか薄い。
てか、透けてる。
いや透けてるっていうか、なんか……表示されてる?
「は???」
視界の端に自分がいる。
いや違う、俺そのものがUIになってる。
「いやいやいや、ちょっと待てって」
俺、空中に浮いてるし、四角い枠に囲まれてるし、フォントがやたら綺麗だし。
「なんだこれ!!」
「落ち着け、説明する」
騎士がため息ついた。
「この世界では、勇者召喚の際に“サポート表示”も一緒に呼ばれることがある」
「それが俺?」
「そうだ。過去には“チュートリアル妖精”とか“ミニマップ”とかいたらしい」
いや俺その並びに入るの?
「ちなみにお前の役割は――」
騎士が俺を見ながら、読み上げるように言った。
「“重要な情報を分かりやすく表示する”」
「地味すぎるだろ!!」
勇者どこだよ勇者!!
「で、その勇者様は?」
「さっき来た」
はやいな。
後ろ振り返ったら、なんか普通の高校生みたいなやつが立ってた。
「うわ、すげぇ……ほんとに出てる……」
お前かよ。
「俺、佐藤だけど……」
「奇遇だな、俺も佐藤だよ!!」
なんだこの地獄。
「え、じゃあ俺が勇者で、お前がその……説明文?」
「言い方!!」
いや間違ってないけどさ!!
「とりあえず進むか」
軽いなこいつ。
で、城の外出た瞬間、
俺の中に“表示したくなる衝動”が湧いた。
やばい、これ勝手に出るやつだ。
『※この先、スライムが出現します』
「うわ出た」
勇者が笑ってる。
「いや俺の意思じゃないからなこれ!?」
「便利だな」
便利で済ますな。
で、案の定スライム出てきた。
勇者が剣でサクッと倒す。
つえぇな。
その瞬間、
『※スライムは火に弱いです』
「遅ぇよ!!」
「知ってるよもう倒したよ!!」
くそ、タイミング最悪。
なんだこれ。
「役に立ってんのかお前?」
「俺に言うな!!」
で、しばらく進んでいくと、洞窟に入った。
なんか雰囲気的にボスっぽい。
嫌な予感しかしない。
案の定、でかいドラゴン出てきた。
「おお、ボスだな」
冷静だな勇者。
いや俺は冷静じゃない。
来る、表示来るぞこれ。
頼む、ちゃんと役に立つやつ来い。
『※このボスは強いです』
「知ってるわ!!!!!」
「ざっくりしすぎだろ!!!」
いやほんとごめん。
俺も今絶望してる。
勇者が戦い始めた。
結構押されてる。
やばい、これ普通に負けるぞ。
なんかないのか、俺にできること。
頼む、頼むからまともな情報出ろ。
その時だった。
なんか、今までと違う感覚がきた。
これは……
出る。
『※このドラゴン、実はお腹が弱いです』
「は?」
勇者が止まった。
「え?」
「試すしかないだろ!」
勇者が思いっきり腹に斬撃入れた。
ドラゴン、
「グオオオオオオオオオオ!?」
めちゃくちゃ苦しんでる。
え、効いてる!?
「マジかよ!!」
勇者が追撃。
そのまま倒した。
「勝った……」
すげぇ。
俺、初めて役に立ったかもしれん。
「お前、やるじゃん」
「いやたまたまだろこれ」
でもちょっと嬉しい。
その時、
俺の中に“何かが更新された”感覚があった。
『※レベルアップしました』
「俺が!?」
「お前も成長すんのかよ」
なんだこれ。
ステータス的なもの見てみる。
【注意書きLv2】
・表示速度:↑
・情報精度:↑
「うおおおお!!強化されてる!!」
「地味に強くなってんな」
地味言うな。
でもこれ、もしかして。
ちゃんと成長すれば、めちゃくちゃ役に立つんじゃないか?
「なあ勇者」
「ん?」
「俺、最強の注意書きになるわ」
「なんだそれ」
「世界で一番、分かりやすいやつ」
勇者が笑った。
「じゃあ俺は、その説明通りに最強になるわ」
意外といいコンビかもしれん。
ーー洞窟を出てから数日。
俺たちは順調だった。
『※右の宝箱はミミックです』
「危ねぇ」
回避。
「お前、普通に有能じゃね?」
「だろ?」
進んでいると、また表示が出た。
『※この先、安全です』
「お、珍しく何もないのか」
その瞬間。
ズボッ
「え?」
勇者が地面に消えた。
「は?」
落とし穴だった。
「おい!!!!!!!!」
下から声。
「全然安全じゃねぇじゃねぇか!!!!」
「知らねぇよ!!俺も初めてだよ!!」
しばらくして勇者が這い上がってきた。
「お前……信用できねぇな」
「ぐっ……」
初めて言い返せなかった。
その時、
『※訂正:この先、安全ではありません』
「遅ぇよ!!!!!!」
冒険をするにつれて、レベルもどんどん上がっていく。
【注意書きLv5】
・表示速度:爆速
・情報精度:かなり高い
・たまに余計なことも言う
最後なんだよ。
でもまあ、ほぼ完璧。
俺、ついに気づいた。
これ、実質チートだわ。
勇者も明らかに強くなってる。
「これ魔王余裕じゃね?」
「油断するな」
とか言いつつ、内心ちょっと思ってた。
いけるなって。
ーーで、来た。
魔王城。
いかにもって感じの黒い城。
空もなんか紫。
テンプレすぎて逆に安心する。
「行くか」
「おう」
ーー中に入る。
嫌な静けさ。
俺の中で、警告がビリビリ来てる。
来る――
『※この先、魔王がいます』
「知ってるわ!!!!」
……いや、違う。
なんか、いつもと違う。
表示が、もう一つ出る。
『※候補①:魔王は正面からの攻撃に強い』
『※候補②:魔王は魔法耐性が高い』
『※候補③:魔王は昨日、寝不足です』
「増えた⁈」
ーー玉座の間。
魔王がいた。
でかいし、いかつい。
めちゃくちゃ強そう。
「よく来たな、勇者よ」
低音ボイス。
圧やばい。
「ここで貴様の旅は終わる」
勇者が一つ聞く。
「昨日寝不足ですか?」
魔王が驚いた。
勇者も驚いた。
「マジか?」
試しに連続攻撃。
入る。
めっちゃ入る。
「グッ……!」
魔王、明らかに反応遅い。
「おいこれ……」
「連続攻撃で押し切ればいける!!」
そこからはゴリ押しだった。
勇者、連撃。
魔王、防御間に合わない。
そのまま――
撃破。
「勝った……」
静寂。
そして、
「……いや、なんでだよ」
勇者がぽつり。
「いや俺も分からん」
寝不足で負ける魔王ってなんだよ。
威厳どこいった。
何はともあれ、世界は救われたらしい。
らしいっていうか、実感ない。
「終わったな」
「終わったな」
ちょっとだけ、間が空く。
「で、お前どうすんの?」
「俺?」
考える。
元の世界に戻るとか、そういうのあるのかと思ったけど、何も起きない。
ーーその時だった。
突然、俺の視界にウィンドウが出た。
でかいやつ。
今までとレベル違う。
『※チュートリアル終了』
「は?」
『※これより本編を開始します』
「いや待て待て待て」
勇者も固まってる。
「今までなんだったんだよ」
『※現在の難易度:EASY』
「は?????」
EASY???
あれで???
魔王倒したよな???
『※本来の魔王は別にいます』
「ふざけんな!!!!!!」
『※先ほどの魔王は中ボスです』
「中ボス寝不足かよ!!!!」
設定雑すぎるだろ!!!
その時、さらに表示が出た。
今までで一番でかいやつ。
『※課金することでヒント精度が向上します』
「来たな」
「来たなじゃねぇよ!!」
「異世界で課金要素出すな!!」
「いくらだよ!」
表示された。
『※月額980円』
「現実と変わんねぇじゃねぇか!!!!」
しかも円。
通貨そのままだ。
夢壊すな。
勇者が肩叩いてきた。
「どうする?」
「どうするも何も……」
ちょっと考える。
……いや、考えるまでもない。
「課金するわ」
「するのかよ!!」
「だってこのままじゃ絶対また“寝不足”とか出るぞ」
「それは嫌だな……」
結局。
俺は課金した。
異世界でサブスク契約した。
ーー数分後。
新しい表示が出た。
『※広告を表示します』
「は?????」
空に、でかいバナーが出た。
【今なら勇者スターターパック!】
「うるせぇ!!!!!!」
「戦わせろ!!!!!!」
結局この世界、
一番強いのは魔王でも勇者でもなく――
“運営”だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「もし自分が異世界で“説明文”だったらどうなるんだろう」
という思いつきから書いてみました!
最初は完全にネタのつもりだったんですが、
書いていくうちに意外と成長要素もあって、まともな小説になっていました(笑)
少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです!
連載小説も書いているのでそちらも是非!




