表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血の革命:2046  作者: 原田広


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/33

第八章:診察室の誘惑

サトシはタカコと行動を共にして数日が経ち、彼女の指示で、工場の地下にある薄暗い隠れ家で待機していた。タカコは、カオリの居場所につながる手がかりを探るため、闇の情報網を駆け回っているという。

しかし、サトシには、カオリを失った絶望感と、自分を支配する血液型の呪いへの怒りが渦巻いていた。

そんな折、政府から通達が届いた。B型階級の労働者には定期的な健康診断が義務づけられている。サトシは失職していたが、戸籍上の所在を確認される良い機会でもあり、タカコは「逆に堂々と診断を受ければ、政府の追跡から一時的に身を隠せる」と判断した。

サトシは指定された、市の外れにある古びた診療所へと向かった。そこは監視が厳しく、重々しい空気が漂っていた。

サトシの番になり、診察室に入ると、白衣を着た一人の医師が座っていた。

「座りなさい。B型、サトシ君ですね」

医師は穏やかな笑顔を浮かべていたが、その瞳の奥には、どこか冷たい計算高さが潜んでいるようにサトシには見えた。彼の名札には「ヒロカワ」と書かれていた。

ヒロカワはまず、形式的な問診を終えると、サトシの血液検査の結果用紙をじっと見つめた。

「ふむ…B型。健康状態は良好です。しかし、心因性のストレスを強く抱えているようだ。それは、君の心臓の鼓動が語っている」

ヒロカワはペンを置き、声を潜めた。

「カオリ君の件ですね?」

サトシの体が硬直した。診察室は完全に密室で、外の騒音も遮断されている。

「なぜ…それを?」

「心配しなくていい。私は君の敵ではない」ヒロカワは身を乗り出した。「我々は『骨髄外科医』。君が愛した女性、カオリ君…彼女は単なるA型ではない。彼女の真の血液型はAB型。非常に稀少な血だ」

サトシは愕然とした。タカコからは「政府の陰謀に巻き込まれている」としか聞かされていなかったが、具体的な血液型の秘密までは知らされていなかった。

「彼女のAB型の血液は、今の政府にとって、最も重要な『資源』だ。だからこそ、彼女は隔離され、真の目的のために利用されようとしている」

ヒロカワは引き出しから、極小の高性能通信機を取り出し、机の上に滑らせた。

「君の愛は本物だろう。だが、B型の君が、A型(あるいはAB型)の彼女を救うには、限界がある。この血の制度の下では、B型の努力や愛など、ゴミ同然だ」

彼の言葉は、サトシの心の奥底にある絶望と怒りに深く刺さった。

「しかし、我々は違う。『骨髄外科医』は、この腐った血の社会構造を、裏側から変える力を持っている。我々は、血液型さえも変更できるのだ」

ヒロカワはサトシの目を見つめた。

「我々に協力しなさい。君に、特権階級の血液型…A型の骨髄移植手術を施す。君はA型として、カオリ君と同じ階級に入り込み、堂々と彼女を救い出すことができる」

「血液型を…変える?」サトシは信じられない思いで、自分の腕を見た。

「そうだ。君の血液型を変え、君を『支配者の血』の持ち主にする。それは、君がカオリ君を救うための、最も確実で迅速な方法だ。愛する者を救うためなら、君は自分の血を変える勇気があるはずだ」

ヒロカワは立ち上がり、診察室のドアを開けた。

「決断は急がなくていい。だが、考えておきなさい。この通信機で、いつでも私に連絡が取れる。時間が経てば経つほど、カオリ君のAB型の血は、政府の支配に深く組み込まれていく」

「君の愛は本物だと信じている。その愛のために、君は血を捨てる覚悟があるか?」

サトシは動けなかった。ヒロカワの接触は、彼に絶望ではなく、血の階級を超越する「力」という、新たな選択肢を与えたのだった。タカコに全てを話すべきか、それともこの誘惑に乗るべきか。サトシの運命は、今、極めて危険な岐路に立たされた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ