第三章:A型の再教育とカオリの覚悟
カオリは、特権階級専用の装甲車で連行された後、厳重に隔離されたA型矯正施設、通称「純血の檻」に送られた。そこは、A型の優位性を絶対的なものとして再認識させるための、精神的な「再教育」を行う場所だった。
施設は豪華な内装と最先端の監視システムで覆われていたが、その実態は、個人の感情と自由を根こそぎ奪う精神拷問の場であった。
「あなたの血液型はA型です。あなたは社会の支配者であり、導き手です。B型や他の階級の者との交わりは、あなたの血の純粋性を汚す反逆行為です。」
毎日、洗練された音声でこの教義が繰り返され、カオリの精神を蝕んだ。彼女の担当となった冷酷な指導員は、彼女のサトシへの愛情を「階級を冒涜する病」と断じ、徹底的に否定させた。
「あのB型の男は、あなたの地位と血を欲したに過ぎません。彼は穢れた存在です。」
当初、カオリは抵抗した。サトシとの純粋な愛を訴えた。しかし、彼女がサトシの名を口にするたび、指導員は彼女が大切にしていた唯一の私物、革命以前の家族の写真に電流を流し、焼き焦がした。
数週間が経つうちに、カオリの魂は深く疲弊していった。彼女は食事を拒否し、窓のない部屋の隅で丸くなっていた。
「私の血はA型…私は支配者…」
彼女は、自分に言い聞かせるように、政府の教義を繰り返した。それは、彼女自身を守るための、最後の防衛本能だった。




