第二十五章:脱出の終点、そして衝撃の事実
Kは、サトシを支えながら、骨髄外科医の地下アジトの緊急脱出ルートを突き進んだ。サイレンが鳴り響く地上の混乱を背景に、錆びた鋼鉄の裏口扉を押し開けた。外は薄暗い路地裏だ。
サトシとKが路地の出口にたどり着き、街の喧騒へと飛び出そうとしたその瞬間、彼らの目の前に一台の黒いクーペが静かに滑り込んできて、タカコが運転席にいた。
「乗って」タカコの命令は冷徹だった。
Kはサトシを掴み、後部座席に押し込んだ。サトシがよろめきながら車内に滑り込んだそのとき、路地裏の奥、裏口扉から三人の警備員が飛び出してきた。
「待て!止まれ!」
警備員の一人が、自動拳銃をKに向け、引き金を引いた。
ドォン!
鋭い銃声が路地裏に響き渡った。
Kは、タカコの車に乗ろうと身を乗り出していたサトシの身体を、最後の力で強く押し込み、その身を庇った。
銃弾は、Kの胸を貫いた。
しかし、Kの胸からは、一滴の血も流れなかった。
銃弾が肉体を突き破った場所から、液体ではなく、金属片や回路の欠片、そしてプラスチックのような断片が、破裂音と共に路地裏に飛び散った。
Kは呻き声を上げることもできず、その自分の胸元から飛び散る機械の破片を、驚愕の目で見つめた。
(これは…何だ?)
彼自身、自分の身体が一体どうなっているのか、理解が追いつかない。激痛はあるが、それは内臓の損傷とは異なる、電子的な回路の切断のような感覚だった。
タカコは、一瞬たりとも表情を変えなかった。彼女はKの状態を視認したが、躊躇なくアクセルを踏み込んだ。
クーペは猛烈なスピードで発進した。
Kは、体を支える力を失い、半身を車内に預けながらも、何とかタカコに報告しようとした。
「タカコ様………リスト…と…マスター…キー…複製…完…了…」
その報告を聞いたタカコは、前を向いたまま淡々と命令した。
「後は任せなさい」
サトシは後部座席で、目の前で起こった信じがたい光景に息を飲んでいた。Kの身体から血ではなく、機械部品が飛び散った。Kは人間ではなかったのか?
Kはすでに意識を失いかけていた。彼は、自分の存在の根底が覆された衝撃と共に、ゆっくりとシートに沈み込んでいった。彼の命は、タカコの壮大な計画のための「道具」として、最後の最後まで利用されたのだ。
サトシは、Kの機械的な残骸が散らばる座席を見て、タカコの冷酷さと、そしてこの革命の背後にある、想像を絶する真実の一端を垣間見た。




