表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血の革命:2046  作者: 原田広


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/33

第二十一章:偽りの栄光とB型の真実

サトシは、ドクター・ヒロカワの案内で「栄光の間」と呼ばれる部屋に連れて行かれた。それは手術室のような無菌室ではなく、重厚な木製パネルと間接照明で飾られた、まるで高級クラブのような異様な空間だった。部屋の中央には、最新のホログラフィックディスプレイがあり、その上にデータが投影されていた。

「さあ、サトシ君。これが、我々が築き上げた『偽りの栄光』の証拠だ」

ヒロカワは誇らしげに言った。ディスプレイに投影されたデータ――それが、噂に聞く『ブラック・ブラッド・リスト』だった。

サトシは、衣類の偽装カメラが確実に作動していることを確認しつつ、慎重にディスプレイに近づいた。彼は「臆病なB型」を演じ、感動と貪欲さを示さなければならない。

リストには、数十名の氏名、現在の血液型(全てA型)、そしてその横に小さな文字で「元:B型 (35歳時変更)」「元:O型 (22歳時変更)」「元:AB型 (特殊ケース)」といった情報が並んでいた。

サトシは目を凝らした。彼の演技は、一瞬で吹き飛んだ。

「これは…」

彼がリストに見たのは、この国の最高権力者たちだった。

内閣総理大臣:現A型(元O型)

純血監視隊総司令官:現A型(元B型)

最大財閥の会長:現A型(元B型)

サトシは演技ではなく、本当に驚愕していた。

彼が日頃、テレビやメディアで目にしていた、高貴で清廉潔白な「A型」の象徴とされていた人物たちが、軒並み、金と手術で血を買い替えた「不純物」だったのだ。

「馬鹿な…」サトシの口から、掠れた声が漏れた。

「驚いたかね?」ヒロカワは満足そうに微笑む。「彼らは皆、B型やO型の出自を恥じ、我々の技術で真の頂点に立った。彼らは、我々の最も熱心な顧客であり、最高の『成果』だ」

サトシの視線が、リストのさらに下へと滑った。そこに、彼の知る名前が目に飛び込んできた。

カオリの父親、政府最高幹部:現A型(元AB型)

「あいつまで…」サトシの拳が震える。カオリの父親もまた、自己の出自を捨て、A型を装っていた。しかし、その横の「元AB型」という注釈は、カオリがAB型であるというタカコの言葉を裏付けていた。

このリストは、単に金で血を買った人々の名簿ではない。それは、この国が血液型という虚偽の上に成り立っていることの、動かぬ証拠だった。

「どうだね、サトシ君。君もこのリストに、やがて名を連ねるのだ。カオリ君を救い、この階級社会の勝者となるのだ!」

ヒロカワは陶酔したように語る。

サトシは、自分が今見ているものの歴史的な重みを理解した。この映像さえあれば、タカコの言う通り、支配者たちの権威は完全に崩壊する。

サトシは、ヒロカワに背を向けるようにして、時間を稼ぎつつ、隅々までリストをカメラに収めることに集中した。彼の頭の中には、Kがシステムへの侵入を完了させるまでの時間、一秒でもとも持ちこたえなければならないという、強烈な使命感が燃え上がっていた。

「素晴らしい…本当に、素晴らしい成果です、ドクター・ヒロカワ」

サトシは、震える声に無理やり感動のトーンを乗せて言った。その声は、驚愕と、そして怒りによって、本物よりもずっと説得力のある「歓喜」を帯びていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ