第十二章:第三の道
サトシは、タカコからカオリが安全に保護されているという衝撃的な事実と、自分が全ての組織を巻き込むための「楔」として利用されていたという冷酷な真実を突きつけられた。胸に押し付けられた星組のカードと、ポケットにしまわれた骨髄外科医の通信機。そして、目の前には、全てを仕組んだタカコがいる。
サトシの頭の中は、二つの誘惑よりも、タカコの行動の背後にある目的で占められた。
「…あんたが、俺たちを争いの中心に置いた。ヒロカワもオリオンも、血液型という仕組みを壊そうとしている。そしてあんたもだ」
サトシは顔を上げ、タカコの冷たい瞳を真っ直ぐに見つめた。
「あんたの言葉を聞いていると、まるで血の階級制度そのものを無意味にしようとしているように聞こえる。人工血液による平等を訴える、あの『白の組織』なのか?」
タカコは鼻で笑った。その笑みには、侮蔑と、サトシの思考の浅さに対する冷笑が込められていた。
「違うわ。私は『白の組織』ではない」
彼女はきっぱりと否定した。
「彼らは、血の価値をゼロにすることで、単なる新しい支配構造を作ろうとしているに過ぎない。血液型という古い鎖を断ち切ったところで、またすぐに『ユニバーサル・ブラッド』の供給権を握る者たちによる、別の階級が生まれるだけよ」
タカコは、サトシの目の前で手を広げた。
「骨髄外科医は『血の価値』を上げる。星組は『血の運命』を星にすり替える。白の組織は『血の存在』を否定する。どれもこれも、人々を何かに縛りつけるための、新たな幻想を作り出しているだけ」
タカコの視線には、三大組織に対する深い軽蔑が宿っていた。
「私の目的は、血液型を無意味にすることでも、星を崇拝させることでも、ましてや誰かを階級に入れることでもない」
彼女はサトシの目を見つめ、低い声で言った。
「私が望むのは、この世界から『支配』という概念そのものを消し去ることよ。そのために、私は血の支配者たちと、新たな支配を夢見る愚かな組織、その全てを利用する」
タカコの真の野望は、三大組織の目論見よりも遥かに大きく、根源的なものだった。彼女は、血の階級制度を崩壊させた後、誰も想像し得ない「第三の道」を切り開こうとしていた。
「さあ、サトシ。君はまだ『白の組織』の理想を追うか?それとも、血の呪いを真に断ち切るために、私と共に、この戦いを始めるか?」
タカコはサトシに選択を迫った。彼の答えが、三大組織と血の階級社会を巻き込む、本格的な闘争の火蓋を切ることになる。




