第十一章:タカコの帰還と二つの証拠
タカコは、サトシを隠れ家に戻る前に、事前に設置していた監視カメラの映像をチェックした。彼女の表情は、一瞬にして険しくなった。
サトシの隠れ家を訪れた人物。星の刺繍のローブを着た青年は間違いなく「星組」の使徒、オリオンだ。
「予想通りね」
タカコは、彼らがサトシに何を囁いたか、即座に察した。ヒロカワは「血を変える誘惑」、オリオンは「星の運命の誘惑」だ。
タカコが隠れ家に戻ると、サトシは壁にもたれかかり、深い思考の渦中にいた。そして、床には二つの物体が置かれていた。ヒロカワの残した高性能通信機と、オリオンが差し出した星組の紋章カード。
タカコは通信機を拾い上げた。
「これが、骨髄外科医からの『愛の証拠』ね。血を変え、A型としてカオリを救え、とでも言われたかしら?」
彼女は次に、星組のカードを拾い上げた。
「こちらは『星組』。血液型は無意味、君は星の運命で選ばれた、とでも?」
サトシは顔を上げた。彼は、タカコの冷徹な洞察力に、初めて底知れぬ恐ろしさを感じた。
「あんたは…俺に何をさせたかったんだ?どうしてカオリがAB型だと知っていて、俺に言わなかった?」
タカコは通信機とカードを握りしめ、サトシを睨みつけた。
「私が言わなかったのは、君に『B型』の絶望を最後まで味わわせるためよ。そして、君が最も混乱し、選択を迫られる瞬間に、他の組織が干渉すると知っていたからよ」
彼女はため息をつくように言った。
「カオリは、私の仲間が保護している。彼女は無事よ。だが、彼女を救う道は、彼らが示した二つの愚かな選択肢にはない」
「なぜそんな回り道を…」
「この世界を変えるには、『血』に囚われた者たちが、血に囚われない愛のために争う構図が必要だったのよ。君の愛が、三大組織の目をカオリから逸らし、彼らを互いに牽制させる」
タカコは通信機をポケットに、星組のカードをサトシの胸に押し付けた。
「君は今、彼らの誘いに乗るか、私と共に彼らの計画を逆手に取るか、選ばなければならない。カオリの安全は保証する。だが、ここから先は、『血の壁』を崩壊させるための、君自身の戦争よ」




