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   ◇◇◇◇◇◇


「駄目だわ、こっちの患者にはやく飲み薬を!」


「こっちもよっ、もうなんだってこんな事に」


 あちらこちらで修道女達の悲鳴が上がる。

 冬でも無いのに流行り出したゼカ風邪は、真夏を迎えたいまもまだ収束していなかった。

 しかも、さらに症状が悪化するものが増え、治療院のベッドにはもう空きがないほどだ。


「ルピナごめんっ、急いでこっちへ。呼吸困難が始まっているのっ」


 モナさんの叫びにわたしは慌てて駆け寄る。

 やせ細った女性が咳と共に痙攣を始めている。危険な状態だ。


 わたしは患者の手を取り、治癒魔法を施す。

 自身の身体の中から魔力をかき集め、どうか治ってと祈りを込める。


「あぁ、良かった、痙攣が収まってきたわ。これで薬が飲めるはず」


 モナさんが患者の背に手を入れて、少しだけ抱き起す。そしてそっと飲み薬をその口に流し込んだ。


(お義姉様なら、きっとこの部屋中の患者達を一気に治療できたのに)


 わたしは一人一人を診るのに精いっぱいだ。アイヴォン伯爵様の血を引いているとはいえ、庶子のわたしはきっと魔力も劣るのだろう。

 何十人もの患者を治療していると、息切れがしてくるのだ。


「……ルピナ、大丈夫? ごめん、無理させ過ぎたよね」


 モナさんが背中をさすりながら謝ってくれる。

 大丈夫、と返したいのだが、息が苦しい。


(もしかして、わたしもゼカ風邪に……?)


 ぐるりと視界が回る。


「ルピナ!」


 なぜかここにはいないはずのランドリック様の叫び声を聞きながら、わたしは意識を手放した。



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