第三話 魔道記
「で、お兄ちゃんプロテクトくらいは使える?」
「ぜんぜんだめでしたー」
むせび泣く俺。
「レビテーションが使えるなら断然オッケーのはずなんだけどねー、一つに特化しているんじゃないの?それ。」
「いやサラが言うにはイメージさえできれば、他の魔術も出来るらしいんだ」
「それどこのファンタジー?そんなことあるわけないじゃんそれにサラって誰?」
「だからさっき言ったろう、このペンダントをくれたマジックマスターのサラだよ」
やれやれとため息をついた。
「サラって最初の16人のマジックマスターの一人じゃない?だいぶ前に亡くなった歴史上の人物じゃない!魔術はレベルアップするごとに魔力が増すんだよ?今兄ちゃんのレベルはどうなっているの」
《お主のレベルはすでに10じゃぞ、周りにはあまり吹聴しない方がいいが》
「サラがいうには高レベルらしいが…」
未亜は呆れて物も言えないという顔をしてじとーとこちらを見ている。
「スリープクラウドもプロテクトも入門変のセンスマジックさえもできないのに、なんでレビテーションが使えるんだよ、しかも他の人にも、イメージが大切っていっても限度があるでしょ」
妹からも話を聞くとレビテーションの魔術は自分自身に掛るもので、
人には掛けられなくもないが高レベルだそうだ。が、どうやって魔術を掛けられたのか?自分自身が分からない。
「ちょっとそのペンダント貸して」
と、手を伸ばしたとたんに未亜は顔色を変えた。
「触ろうとしたら見えなくなった。お兄ちゃん、それまだ首にある?」
「ああ、あるぜ取ってみようか?」
ネックレスを外そうとしたがどこにも留め金らしきものはない。
「あれ外れねぇ、というか留め金がねえぞこれ」
すると未亜が。
「あ、また見えるようになった」
と言った。
あれから未亜に色々聞いた。レビテーションはレベル3以上でないと使えないこと。自分には掛ける呪文で他人に掛けるにはよっぽど高レベルじゃ無いと掛けられないこと。今付けているネックレスは意識を集中させると見えなくなること、
自分では触れるし見ることもできるのだが…
「だから、それがおかしいって言ってんの!
チャージ式のマジックアイティムか使い捨てなんじゃないの?それ」
そのとき二人の前にフワリとサラが現れた。
《それはチャージ式でも使い捨てでもないぞ?》
突然現れるサラ。
「誰その子どこから沸いてきたのよ!?」
びっくりして椅子からずり落ちそうになりながら未亜が聞くと。
「この子がペンダントをくれたサラ、このペンダントから出てきたっぽい」
と指差す俺ペンダントが淡く光っている。
《これこれ、呼び捨てとは何じゃサラ様と呼ばぬか。それに指刺すな》
偉そうにサラが言うと。
「何この子、お兄ちゃんに馴れ馴れしいし生意気」
おいおい、突っ込みどころが違うだろ、ペンダントから出てきたんだぞ?
《うむ、せっかく説明ししてやろうと思って出てきたのだが、帰ろうかの》
ぼう、と身体が光り始めるサラ。
「待ってくれ、その前にぜひこれの説明をして行ってくれ!」
情けなくたのみこむ。
《ふう、しかたないのう。これは魔道記というものでな、持ち主の願望を魔術という形で放出するもので,考え得る魔法で再現できないものはないであろうな》
と胸を張る(張るほどの胸はないが)サラ。
「どんな魔術でも?」
《どんな魔術でもじゃ》
蔵にそんなお宝が眠っていたとは知らなかった。ほかにもお宝が眠っているかもしれない。今度ちゃんと整理整頓してみよう。