第十一話 国立魔術図書館
放課後に魔術実習室に行くと、日和が行くことに決まっていた。
「やったー、まさかパーだけだしてて勝てるとは思わなかったよ!」
「くっそーあそこでチョキを出していれば勝てたのにー」
なかなか白熱した戦いだったようだ。
「あ、海斗先輩ぼくが行くことになりましたからよろしくお願いしますね」
「ああ、わかった、でもそれぞれのレベルまでの魔術しか閲覧できないよ」
「それでも良いんです、アレンジのヒントだけでもつかめれば」
日和、張り切っているな。
「俺と未亜と清美先輩と日和でいいんだな?」
「お兄ちゃんよろしくね」
「じゃあ三神さんに連絡とるわ」
スマホをだして連絡する。
「あどうも原井です…、はい俺と妹の未亜と原田清美先輩と一年の矢沢日和に決まりました…、はいよろしくお願いします、はい…分かりました」
スマホをしまうと。
「明日午前中に迎えに来るってさ」
「楽しみですねー」
「どんな魔術があるんだろうな」
「コクコク…」
と未亜、日和、清美。明日が楽しみだな。
翌日、学校に行くと校門前にショーファー付きのリムジンが止まっていた。
(おいおいやめてくれよ三神さん目立ちたくないのに)
清美と日和はリムジンの横に立って待っていた。
「先輩おそーい」
と日和が言うと。
「コクコクコク…」
と清美が頷く。
「やめてくださいよ三神さん目立ってしょうがないじゃないですか」
「目立ってもらわないと困るんだよ(ボソ)」
とこそこと俺に言う三神さん。
「目立ちすぎでしょうこれじゃ」
「まあ良いじゃない送迎付きで国立魔術図書館なんて贅沢滅多にできませんよー」
元気よく喜ぶ日和。
それと対照的にもじもじと居心地悪そうにしている清美先輩。
「それでは行きましょうか」
ショーファーがリムジンのドアを開ける。三神さんと俺たち四人が乗り込んでもまだまだ余裕がある。
「つくまでは時間が掛かるからゆっくりしていたまえ、冷蔵庫の中の物は好きなだけ飲んで良いよ」
早速日和がコーラを取り出して飲んでいる。
道中、最近の政変のこととか世界情勢の話で盛り上がった。朝鮮解放戦線が北中国から独立しようとあちこちでテロを起こしていることも聞いた。中国国内では報道されていないが相当派手にやっているらしい。
それにしても日本でテロをやって何の得があるんだろうか?魔術師狙いかな?
二時間もすると目的地の国立魔術書図書館に着いた。まるで刑務所のような警備体制だ。
「じゃあちょっと入館証をもらってくるよ」
と言って受付に立ち寄った。
その間に俺たちは入念にボディチェックが行われ携帯やデジカメや筆記道具などを取り上げられた。そして入館証を持ってきた三神さんはそれを渡しながら。
「それぞれは入れる場所が限られているから気をつけるように」
清美先輩と日和には緑色のカードを
未亜には黄色のカードをそして俺には赤いカードを渡してきた。緑色のカードにはレベル1黄色のカードにはレベル3と書いてあるが黒いカードにはレベル表示がなかった。
「あのこれは…」
どういう意味かと聞きたかったのだが。
「しー」
と三神さんがいだずらが成功したような顔で人差し指を口に当てる。
「ではレベル1から回ってみようか」
ぞろぞろセキュリティーゲートをくぐると古い本の臭いがしてきた。午前中は日和、清美先輩についていってレベル1の魔術書を読みあさった、
『エネルギーボルト』アレンジだけで1000種類以上あるらしい、威力の増大から飛距離の延長、複数の目標に分散する方法等々…
「すごいですー、ぼくこんなアレンジの方法があったなんて、夢にも思いませんでしたー!」
日和が大声を出すくらい感激していた。
昼食を挟んで未亜とレベル2~3レベルの書庫を回り、今はレベル5の書庫で調べ物をしていたが、さすが国立魔術書図書館キーワードを探すだけでも一苦労だ。幸い『トランスレイト』(翻訳)の呪文があったのでそれからはさくさくと進んだ。これで古代語赤点はなくなったな、と。ほくそえんだ。
レベル5以上の魔術は原則開示されていないが、レベル10までの前詠唱はないがキーワードと術の内容が書かれた書物を見つけ必死に読みふけった。
みんなと正面玄関にむかって出てくる頃にはすっかり夜になっていた。
「はいみなさんこちらにあつまって『ギアス』(ここで聞いたことみたことは記録したり口外してはならない)」
いきなり『ギアス』を掛けられたよ。この人、文部科学大臣じゃなかったっけ?ほかのみんなには掛かったようだが、でも俺にはかかった様子はない。不審な表情で俺を見る。と、三神さんがこくりとお辞儀したのを見て納得したような顔をした。
日和も清美先輩も収穫があったのかかなり上機嫌だ。そのまま食事に行こうと言うことになり近くのホテルのフレンチレストランにむかった。
「今日は勉強させていただいてありがとうございました」
「「ありがとうございましたー」」
「コクコク」
俺、未亜と日和、清美先輩の順で食事の前にお礼を言ったら。
「今日だけじゃないよ明後日も予約を入れているから楽しみにしていなさい付き添いの人選は任せるよ」
「明後日もですか、普通の教科が遅れないかな、でもさすが国立魔術書図書館一日では回りきれななかったな」
「ぼくもまた行きたいなぁ」
「私もー」
「コクコク!」
俺以外は、日向、未亜、清美先輩。さすがに二回連続にはできないだろ。食事中も今日図書館で読んだ魔術書の話だ。あの魔術書はためになったとか、
あんなアレンジの方法なんか思いつかなかったとか。アレンジの内容には触れずに話し続けた。
その後また行くことを約束してリムジンで家路についた。家に横付けしたリムジンから家に入ると。
「今日はためになったか?」
と未亜に聞いてみたら。
「ためになったってもんじゃないわよ、明日の魔術実習が今から楽しみよ。新しいアレンジ魔法もいっぱい覚えてきたから今のうちにおさらいしょうかな」
と言って裏山に出かけようとするのをやめさせる。
「今から山に行くのはダメ、それじゃ俺ももう寝るわ」
自分の部屋にむかう、試したい魔術があったからだ。
早速ベッドに潜り込み。
『ブラウニー』|(妖精召喚)