第九話 国家公認魔術師
そして午前中の時業が終わり、五十歳前後の国家公認魔術師との面接は、午後に始まった。
名前は三神というらしい、人払いをして(先生も追い出された)何かブツブツつぶやき始める
『ハイセンス』
と呟くと俺を見て片膝を付いた。
「お久しぶりですサラ様」
ペンダントが淡い光に包まれひとりの少女がにじみ出してきた。
《うむ、久しいな明人といったかの、息災のようでなによりじゃ》
「もったいなきお言葉ですサラ様」
かしこまった声で言うと
「で、この者が次の候補ですか?」
《うむ、鉄二郎よりは随分マシなはずじゃぞ、何より素直じゃしな》
「わかりましたでは私が後見人になって魔術師認定を出しましょう」
何がなんだかわからないうちに頭ごなしに話が決まっていた。その後斎藤学年主任が呼ばれ、すぐに認定手続きになった。取りあえずレベル1で登録されることになった。その時の注意事項にこんなのがあった
一つ「常に団体行動をとること」
一つ「常時「プロテクト」を掛けておく事」
一つ「常に身につけるものに「マジックプロテクト」を掛けておく事」
思わず引いた。
「これ絶対無理でしょう常時『プロテクト』なんて」
斉藤先生は。
「心構えだけでもいいんだ、最近は魔術師を狙ったテロが横行しているからな、登校と下校、あとは外出する時だけでもいいんだよ」
「…そんなにヤバイんですか朝鮮開放戦線って」
「原井も噂くらいは聞いたろう?遠距離からの『エンチャントウエポン』を掛けた弾丸が飛んでくるんだ、予知でも出来るなら話は別だが狙われたらまず助からんだろう。そのための措置だ」
「でもどうやって一般人と魔術師を見分けているんでしょうか、内通者でもいるんですか?」
「その通り内通者がいる」
と三神明人国家公認魔術師が言う。斉藤先生も苦虫をかみつぶしたような表情だ。
「今捜査中だ。そして君が認定手続きに通ったことはすぐに知られることだろうな。しかも私が後見人になったということはそれだけターゲットになりやすいのじゃないかな?」
意地悪く笑う三神国家公認魔術師。
「俺を囮に使うんですか?」
「その通りだ君なら囮にぴったりだろう?(サラ様も付いているしな)」と最後の部分は俺だけに聞こえるように言う。
まあ、妹の未亜や純夏さん、智恵美先輩が的にされるよりはいいだろう。
「わかりましたその囮役やらせてもらいます。どうせ断ってもテロ屋が黙っているわけないですから」
(ほう、コイツなかなか肝が座っている。さすがサラ様が選んだだけの素質があるということか)
「ところで原井海斗君、国立魔術書図書館に行ってみないかね。君の知る魔術は数少ないだろう。魔術図書館なら膨大な魔術が収録されているよ」
「それは是非、後妹も連れて行きたいんですが」
「同行者は三人までは認めよう、人選は君に一任するよ。ただしレベル3までの魔術しか閲覧できないが」
さて、後は誰を誘うかな。後でみんなに相談しようか。身辺に異常があったらすぐに連絡を取るようにと、三神さん直通の携帯番号を教えてもらいその日は別れた
そして日曜日、俺は囮として街に出かけた。もちろん『プロテクト』をかけ続けてだ。妹の未亜には認定を受けたこと以外何も言っていない。未亜には映画でも見てくると言って出てきた。広い公園に差し掛かると俺は『センスマジック』を掛けてまわりを見渡した。
が何の反応もない三神さんはどこかで待機しているんだろうが、
気配も感じられない。狙いやすそうなところを探しつつ町をブラブラ歩いていたが、一向に襲撃が来る様子がない。今日は外れかな、と思い家路についた。