胎児の復讐
某大学医学部の産科研究室には、ホルマリン漬けの標本が多数置かれている。
ビンの中には、いくつかの胎児も。
すべて奇形で死産、あるいは、生後間もなく死亡した胎児。
あまりにも薄幸。
標本にされた胎児。
数年おきに復讐とも受け取れる行為を繰り返している。
研究室に勤める、雇員という身分の人たちが、数年おきに行方不明に。
大学では厳重な箝口令が敷かれ、事実は伏せられている。
雇員はすべて高齢者。
表向きは、大学への通勤や帰宅途中に失踪したことになっているが、実際の死因は不可解で怪奇。
ビンに入れられた奇形の胎児が、固く締められている蓋を持ち上げて開け、
外で瞬時に成長して、大人よりはるかに大きなサイズに。
雇員を包み込んで体内に取り込み、即座に消化する。
その後、胎児は元の大きさに戻って、ビンの中に。
蓋もすぐ元通りに。
この様子は動画に撮影されている。
その大学には工学部もあり、産科から相談された教授が監視カメラを設置。
毎日の録画をチェックしていると、数年に一度、くだんの場面が写っている。
この場面はDVDにコピーされ、産科として秘密の場所に保管されている。
この怪奇現象。
医学的にはまったく説明できない。
近年には、またしても雇員1人が失踪。
実験器具の洗浄や滅菌等に従事しているとき、胎児に急襲され行方不明に。
事実が公表されると、雇員として働く人はいなくなる。
襲われるのは、なぜかこの職位の人だけ。
教授や准教授、専任講師は、「研究に大きな影響はない。ハローワークに求人すると、代わりの人がすぐ来る。」
次の事件は、いつ起きるのか。