上杉景虎
私の父は、相模の雄・北条氏康であるが心の父は上杉謙信公だと思っている。
謙信公の養子に出された私は、それが人質だと理解していた。だが、謙信公は私を暖かく迎え入れてくれた。謙信公の若き日の名前である景虎を私に与えてくれ、また、謙信公の姪あたる女性と娶せてくださった。
だが、何ということだろう、その謙信公が急逝されてしまったのだ、側には直江兼続の奥方かをいたという。謙信公の遺言として、上杉景勝殿を上杉の後継とするというのだ。直江兼続といえば景勝殿の腹心ともいえる人物ではないか。そのような遺言に信憑性はない。また、景勝殿は謙信公の血の繋がった甥かもしれないが、血の繋がりがなんだというのだろう。私と謙信公は真実、心が繋がった親子であった筈だ。謙信公の志しを継ぐのも私であるはずだ。
北条の実家も、兄・氏政も、そして、武田勝頼殿も私に助勢してくれるはずだった。なのに、勝頼殿は裏切った。というよりは何もしてくれなかった。景勝殿が勝頼殿の妹を娶ったことや、大金が動いたらしいことは私の耳にも聞こえてきた。勝頼殿が、そのようなご仁とは思わなかった。
私は妻子共々、城下にある御館に立て籠もったのだが、雪のせいで北条の援軍が、足止めされてしった。もはや、これまでと、私の妻は景勝殿の姉にあたる。それ故、景勝殿のもとに参るように言ったのだが、妻はそれを潔しとせず、自害してしまった。
それでも、何とか足掻いてみようと実家の北条家を頼ろうとしたのだが、我が家臣の裏切りに、あってしまい、自害した。
ああ、私は心の父である謙信公の志を継ぐことができなかった。どうか、謙信公、私を憐れんでください。




