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戦国時代 敗者の言い分  作者: 杉勝啓


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柴田勝家

かって、わしは上様こと、信長様の器量を見誤って、上様の弟の信行様を織田家の当主に推したことがあった。自分の不明により、信行様の命を奪ってしまったのだ。それからのわしの人生は上様のためにも戦い続けることにあけくれた。


上様のために戦い、そして、死にたかった。だが、思いもよらぬことがおこった。

明智殿が、上様に大して謀反をおこしたのだ。到底、信じられなかった。あれほど、上様に重用され、信頼されていた明智殿がなぜ。明智殿の心は今となっては誰にも分からぬだろう。だが、上杉と対峙しているわしは動けなかった。それは他の家臣たちも同様だと思っていた。それが、あのサルが、毛利と和睦して、山崎の合戦で明智殿を葬ったという。そして、清須会議。サルは信忠様の遺児である三法師きみを担ぎだしてきたのだ。三歳の幼児など傀儡に決まっているではないか。織田家の跡継ぎが三法師君と決まったと決まった。三法師君に頭を下げたとき、三法師君を抱いているサルに頭を下げたような屈辱。  


その後、どういうわけか、信孝様がわしにお市の方様を娶るようにと言ってきたのだ。あの誇り高い方がわしなど相手にするものか。第一、わしとあの方とは親子ほども年が違うのだ。それが、まさか、わしとの結婚を承知するなど思いもよらなかった。ご夫君の浅井長政殿が亡くなってからはどのような縁談にも頷かなかった方が。


間もなく、わしの居城、北の庄に嫁いでこられた。三人の可愛らしい姫を連れて。この歳になって、可愛らしい姫たちの父になろうとは。姫たちも、はじめはわしになれなかったようだが、徐々に懐いてくれた。この歳になって、このような幸せに恵まれるとは思わなかった。しかし、それも長くは続かなかった。


わしは負けたのだ。あのサルに。


だがお市の方様や姫たちを道連れにはできぬと城を出るように言ったが、お市の方様は聞き入れなかった。ただ、姫たちは城を出ることを承諾してくれたのがわずかななぐさめか。


わしとお市の方様は互いに辞世のを読み、この世を去った。


さて、これでこの後の世はどうなるのか。あのサルが、三法師君様の天下など、作ろうなどとは考えておるまい。








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