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戦国時代 敗者の言い分  作者: 杉勝啓


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大野治長

人は私を男妾などと呼ぶ。

あの美しく誇り高いお方が、私を相手になどするものか。どこをどう押せばそんな考えが出てくるのだ。


思えば、淀の方様の父・浅井長政に仕えていた近江の武将は私だけになってしまったのだなあ。石田三成殿は関ヶ原で敗れ斬罪された。藤堂高虎殿も片桐且元殿も大阪から離れていった。大阪城に大筒を打ち込んだのが片桐殿とは未だに信じられん。味方とは言わなくても大阪方に好意はよせてくれていると思っていた。ふたりとも淀のお方様の父君にあれほど目をかけていただいていたというのに。いや、もうよそう。これ以上は愚痴になる。二人にもそれぞれ事情があるのだろう。


母が淀の方様の乳母だった縁で太閤殿下に仕えるようになった私だが、あの方は幼い頃からのあこがれの人だった。太閤殿下はたぐいまれなる器量人であらせられたが、淀のお方様のお心はどうであったのか、知る由もない。


ただ、私は憧れの人の側にいられて幸福だったと思おう。ともに死ぬことさえ幸せだと思う。

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