9話 不器用な幼馴染? 1
➖教室➖
伊月が何故か謝って来ていたけどなんでだろ? 別に何も悪いことなんてしていないのにね。伊月は何かを考えて行動しているから大丈夫とは思うけど無茶してないかが心配だなあ。伊月は僕に心配を掛けないようにする癖があるから直させないと。
「雨歌どうした悩み事か?」
「僕はないよ。伊月は何か隠し事はない?」
「強いていうなら進路だな」
伊月は嘘をつくときは雨歌の腕を組みながら、上を1度見て左右を確認する癖があることを本人は気付いていないので演技ではない。緋華さんの嘘つくときの癖も分かっているので時々優位に立てることがある。墓穴を掘ってしまって逆に優位に立たれることの方が多いけど。
それはおいておくとして隠し事に関して嘘をついたことが問題かもしれない。
緋華さんに相談しておこうかな。緋華さんが相談に乗ってくれればいいんだけども伊月のことに関しては何もしないことの方が多いからどうしたものか。緋華さんが伊月は色々できるチート? 持ちだから心配することはないと思うって言うから。
「そろそろ帰るか」
「午後も授業あるんじゃ」
「それは明日からな。お前、ぼっーとして話聞いてなかったろ」
「ソンナコトナイヨ」
伊月にカタコトになっているぞとツッコまれた。明日から普通に授業があるとか絶望しかない。覚悟を決めて学校に来たのに1日ずれていたとか洒落にならないのでは。うわあーと頭を抱えながら自分の席でうなっていると。
「不澤は何をやっているんだ?」
「あ~それはな」
狗谷くんが来て伊月が今僕が直面している問題を説明してくれてはいるけど、問題と言うほどではないよ。伊月が変な説明するから狗谷くんが理解できないみたいな顔で僕のことを見てくるから目を逸らすしかできないじゃないか!!
ちょっとまて狗谷くんがまだいるってことは他のクラスメイトは?
教室を見渡すとまだクラスメイトの誰も帰っていなかった。教卓の方を見ると笑いを堪えているショケイくん先生と目を大きく開けてこちらをみている水原先生がいた。恥ずかし過ぎるのでそっと席を立ちリュックを背負い教室を一人で出ようとする。
「雨歌、まだ帰るなよ」
「放して。さっき帰ろうかって言ったよね?」
「もう少し待て」
リュックを掴まれて帰ることができないので大人しく捕まっている。何を待っているのかは全く分からないけど、待っておいた方がいっか。リュックを掴まれているのは別にいいんだけどもクラスメイトがこっちを見ながらコソコソ何かを話しているから一刻も早くここから離れたい。
「雨歌、忘れていたから今渡すわ」
「おじさん達から?」
「遠慮はするなよ」
遠慮はするなよってことは返品はさせない気でいるんだね。返品する気はないんだけどさ、遠慮はさせて欲しいな。貰ったものを伊月にしまってとお願いしながら、何かお返しで渡すべきかを考える。バイトをしたいけど父さん達が反対してるから出来ないだろうな。お菓子の詰め合わせでも買って伊月に渡そうっと。
あれ? おばさんは何が好きだっけ? おじさんの好きなお菓子は知っているんだけどなぁ。おじさんに今度それとなく聞いておこうかな。バレないようにしなきゃいけないから難しいけど。
「俺は先に帰るからな」
「狗谷くん、また明日」
「じゃあな」
狗谷くんが教室から出たタイミングで一人の女生徒が僕たちの方に近づいてくる。背丈は僕より3、4㎝高いくらいで髪はとても長く、後ろ髪は腰まで伸びていて前髪は鼻あたりまであった。髪の色が紅の八塩という色をしたものだ。
とりあえず伊月に任せよう。
「あの……トモくんのお友達ですよね?」
「狗谷とは知り合って日が浅いから友達かはわからないぞ」
「そうですか。ご相談がありまして」
「分かった。場所を移すか」
へえ珍しいな伊月が相談にのるなんて。待ってこれって僕も行くことになるの!? リュックを掴まれたまま引きずられて中庭に移動する。いやね、僕はすっっごく慣れているからいいけどね。他の人は慣れてはいないんだよ? 女生徒がおどおどしながら後ろに付いて来てるじゃん。
入学の時も似たようなのなかったけ?
➖教室➖
荷物を持って中庭まで連れて来られて数分が経過した頃、僕ってここに居ていいのかなと思ってしまう空気が悪い。これなら教室にいた方がマシだったと思えるほどにギスギスしている。中庭に設置されていたテーブルの所に座っていて向かいには女生徒こと佐藤志さんが座っている。
「だからそれならイメチェンをしろよ!!」
「それは無理です!!」
このやりとりが続いているので二人ともイライラしている。佐藤さんは狗谷くんの幼馴染で最近仲良くできていないので仲の良い僕たちに相談をしようと思って話しかけたそうだ。話を聞く限りでは中学1年までは仲良くしていたけどそれ以降は佐藤さんの方から避けているみたい。
佐藤さんが悪いのでは? と思ったけど自分に自信が無く狗谷くんの幼馴染ってだけで隣に居てはダメなのではないかと考えて避けていたらしい。
「理由がどうであれ避けたのはお前が悪い」
「それは分かって……います」
「お前が変わらないと何も変わらない」
伊月に何も言えなくなった佐藤さんは下を向き少し震えている。佐藤さんは伊月の言ったことが正しいと分かっているので涙を堪えるしかないのだろう。ここに来てから何も喋ってもいない僕は二人のことを交互にみるしかない。
「帰るか」
「いいの? 相談にのるって・・・」
「相談されはした」
伊月は「アドバイスはした。本人が何もしないのなら意味がない」と言ってカバンを持ち立ち上がりながら「そんな奴に掛ける時間が勿体ない」と佐藤さんに向かい言った。流石にこれは僕も伊月に対してキレなきゃいけない。
「今のは間違っているから佐藤さんに謝って」
「あのな、こっちはボランティアでやっている訳じゃないんだよ」
「今すぐに謝れ」
僕が言い放った言葉で伊月がフリーズして佐藤さんは驚いてこちらを見ている。確かに変わろうとしない人に掛ける時間は無駄かもしれないがそれは自分から動こうとしてない人に向ける感情で、自分で動いている佐藤さんには失礼だ。
伊月が何かを言おうとしていたが睨んで何も言わせないようにした。
「伊月がひどいことを言ってごめんなさい」
「事実なので気にしないでください」
「佐藤もこう言って…………悪かった」
伊月が佐藤さんにちゃんと謝ったのでこの話は終わりにするとして佐藤さんと狗谷くんが仲良くできる方法を考えなきゃいけないけど、僕の頭の悪さからしていいのが思いつくかは分からない。この場にいて何もしないよりは良いから考えてみようかな。
佐藤さんが自信を無くした理由が知りたいけど話してくれない可能性の方が高いからそれはいいとして自信をつける方法は色々あるだろうけど佐藤さんに合ったのじゃないと意味がないからどうしよう。伊月の言う通りイメチェンが1番いいんだけども、昔から変わってないと想定してイメチェンをして狗谷くんが戸惑うだけだろうから無しの方向でいこう。
成績を上げて自信をつけるっていう手もあるけど、時間が掛かるので今はいらないし成績は良い方だろうから伊月に教えて貰えば解決するね。運動できるかは狗谷くんは気にしなさそうだから放置しておいても問題はないかも。やっぱり僕の頭じゃどうしようもないのかな。
「真剣に考えてくださってありがとうございます」
「はあ……雨歌、カチューシャを貸してくれ」
「ん? 分かった」
リュックからカチューシャを取り出し渡した。伊月は受け取ったカチューシャを佐藤さんに渡してつけるように言った。カチューシャを付けた佐藤さんを見て、イメチェンといっても大きな変化がなくてもいいのかと思った。カチューシャで前髪を上げ目が見えるようになった佐藤さんを僕と伊月は二人でジッと見ていた。バラ色で綺麗なのでそのままの方がいいと思う。
佐藤さんは恥ずかしかったのかすぐにカチューシャを取り返して来た。
「私は帰ります」
「・・・凄い速さで帰っていたな」
伊月の態度が悪かったのが1番の原因だと思うけどね。まあ謝っているだけマシなんだろうけどさ、不器用にもほどがあるんじゃないのかな。よく考えてみたら伊月は相談事を簡単に解決できる筈なのにそれをしないってことは、佐藤さんにやる気になって欲しかったんだろうなあ。
「伊月って結構バカだよね」
「ちょっと待て。バカってどういうことだ。あ、おい逃げるんじゃねえ」
伊月にバカと言ってそのまま走って逃げる僕だけどすぐに捕まりました。そのあと寄り道しながら家に帰り自分の部屋に行く際に碧兄さんの部屋が空いていたので覗いてみると書類に埋もれている碧兄さんを見つけたけど、スルーした。
不器用な幼馴染だなと伊月のことを思いこれからはフォローをしよう。




