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8話 仲直り?1

➖自宅(部屋)➖

 朝アラームが鳴り響かない。アラームが聞こえないの不思議に思い携帯を探すけどもどこにも見たらない。緋華さんが後ろから抱きしめられているのでほとんど身動きが取れないけど、早く起きておかなきゃ伊月が来る。昨日のことを気にするような性格ではないだろうから絶対に来る。


「緋華さん、起きていますよね?」


 確か紫音さんから聞いた話によると緋華さんは早起きだそうだから起きている可能性の方が高い。何より抱き着いている力が強いから起きているだろうと思っていたのに反応が全くない。これって起きていないってことなのかな? いや起きている筈だから寝たふりをしているだけなんだよ。

抱き癖なんてなかったよね、緋華さん?



「雨歌兄さん……その犬っころどうしてあげましょうか」

「あの空さん落ち着いてくれないかな」

「雨歌兄さんは甘すぎるから私がする」


 起こしに来てくれるのはありがたいけど、空ではない人の方が今日は良かったかも。その手に持っている大きな針みたいなのはどこから出して来たのかな? 刺される前に何か対策をしないとヤバイけど対策のしようがない。

抱きつかれていて身動きが全然取れないのが原因である。


「雨歌兄さん……今助けます」

「それはありがたいけど、その凶器はしまってくれるかな」

「それは無理です」


 緋華さんを早く起こさなきゃヤバイ。僕の後ろにいるけど、全然振り向かないし無理矢理振り向こうとしてもさらに力を込められてしまって無理だ。絶対に起きているよこの人。


「っ!? 痛い」

「空、それをしまえ」


 ドア近くで碧兄さんが空の暴走をチョップで止めて僕の目の前できたと同時ぐらいにデコピンをしてきた。痛っっっった過ぎる。なんでこんなにも痛いデコピンができるんだと思いながら痛みに耐えていると緋華さんが起き上がった。


(写真撮らなきゃ)


 写真なんて撮っている場合かよ。と心の中でツッコミを入れながらジト目で緋華さんの方を見る。緋華さんは顔を紅くした後に僕に覆いかぶさり凄い力で抱きしめてきた。碧兄さんに助けを求めてみるが空を怒っている空を引き摺って部屋を出て行ってしまった。


「助けて〜〜」

「遅刻しないようにしろよ」


 碧兄さんが助けてくれないことに対しての少しムカついたので、自由に動かせる右で枕を思いっきり投げつけた。後頭部に見事にヒットして枕は床に落ちた。


「よし、俺も参加すればいいんだな」

「いい訳ないでしょうが!!」


 遅いからなのか梨奈姉さんまで来た。碧兄さんの頭を思いっきり殴っていたけど大丈夫なのかな。


「緋華、離れなさい。雨歌に二度と触れさせないよ」


 大人しく離れていった。これなら僕が使っても離れてくれるかもって思ったけど、伊月と緋華さんに似たようなこと言ってた。僕以外の家族が緋華さんに言ったら効くかもしれないけど、僕が言っても無理なような気がする。


 時間の確認をしていなかったのを思い出して勉強机の上にあった携帯を取り確認する。6時を回ったところだったので安心した。このくらいの時間に起きた方がいいかなと思いつつも伊月が起こしに来るから寝れないんだよね。


 伊月から連絡が入って「今日は一人で行く」と送られてきた。三人で初めて登校できると思っていたのに残念だなあ。昨日のことがあってからじゃあ仕方ないよね。学校で会ってから説明して仲直り? をしよう。

緋華さんに伊月からの連絡を伝えてリビングに降りた。


➖津堂家➖

–伊月視点–

「あ〜行きたくねえ」

「行ってきな」

「お袋、失恋って辛え」


 専業主婦のお袋は呆れながら、溜め息をついていた。酷い人だな息子が失恋をしているってのに溜め息だけで済ませるなんて。


「ウーくんのこと諦めてなかったことに母ちゃんびっくりだよ」


 びっくりしてないだろ、このババア。そんなことよりどうやって雨歌からあの言葉みたいのを言って貰うかを考えなきゃいけない。緋華の悪評を流すなんてことは100%使えないからな。妖狐の奴にアドバイスを貰うのは最後の手段だな。

このまま拗れるなんてよくある話だが……そんなことになったら俺は溶ける。


「ウーくんに連絡を入れてあげようか?」

「やめてくれ。俺のイメージが壊れる」

「うわぁ」


 なんで今引きやがったんだよこの人は。はあ、親父は今日に限って速く出勤してやがるからな何も相談できやしねえじゃねえかよ。さっさと飯を食って学校に行くか、お袋が早く食えって顔をしているからな。


「お袋、ごちそうさん」

「ウーくんと早く仲直り……しない方がいいかも」


 なんてことを言いやがる。雨歌と喧嘩なんてしていないから仲直りとかはしなくていいんだよ。まあいいかな学校に行かなきゃ時間だしな。この時間なら二人に会わなくてもいいな。準備は済ませていたので家を出て学校に向かう。


➖教室➖

 雨歌はまだ来てないのか。緋華がいるから道には迷わないだろうし、ワザと遅れたりしたら緋華は婚約を両親に無理矢理、破棄されるから遅れてくるということにはならないだろうな。お袋から預かっている入学祝いをどう渡したもんか。自分の席についてどう渡そうか考えていたら。


「津堂くん、雨歌は?」

「てめぇは誰だ? 失せろ」

「昨日自己紹介した筈だけどね」


 古村とかいうアホは敵意を向けても気にせず近寄って来やがるな。他の奴だったら近づいて来ないのにどうしてコイツは来やがる。そもそも誰の許可を貰って雨歌と呼び捨てにしてるんだ。緋華が雨歌に仕掛けた盗聴器にコイツとの会話が入っていたらしい。

雨歌と仲良くなりたいって言っていたそうだけど、絶対に裏がある。


「来たみたいだね」


 雨歌が教室に入って来た。俺を見るなり恥ずかしそうに目を逸らした。昨日のことが蘇ってきたんだろうな。癪だが緋華のおかげで雨歌のあんな顔を見れたので感謝しておくか。写真を撮って残しておきたいが距離を置かれる可能性が高いからやめておこう。


「不澤、今日は一人で来たのか?」

「昨日来ていた人と一緒に登校してきました」


 狗谷と雨歌が話しているみたいだな。アイツは信用してもいいかもしれないが古村にはできるだけ近づけないようにしなきゃな。さっきからニヤニヤして気持ち悪いなコイツ……俺も距離置いて緋華に押し付けようかな。


「彼はボクを警戒しているよね」

「胡散臭いからなお前」

(転……でも……のか)


 古村はあのゲームをしている奴が転生しているので確定とするとして目的が分からないまま、何かをコイツにするのは危ないからやめておこう。調べるにしても協力者が必要なんだがどうしたもんか。雨歌は絶対に巻き込みたくないのでなし……は当たり前というか常識だな。


 妖狐を協力者に引き入れるのはリスクがあるな。もし妖狐に何かあったらこの後の展開を事前に知っておくことができないから情報共有だけに留めておくか。緋華なら色々とやってくれるだろうが、転生者と思っているのでこのままの状態でいさせよう。


「すまないが、津堂 伊月はいるか」

「碧兄さん!?」

「雨歌か。今日は津堂に用があるんだ」


 碧さんは俺に用があるそうなので教室を出て人気のない空き教室まで来たが一体何のようなのか。この人とはほとんど話したことがないからどういう人なのかが掴めてないんだよな。雨歌の話では優秀ではあるけど面倒がり屋なのだと聞いたりしているがな。


「少し前に分かったことだが雨歌の父が火事で亡くなった訳ではない可能性が高くなったそうだ」


 こんなところで話していいことなのか? そもそも血縁関係の雨歌に話すような内容だぞ。俺に何かをしてほしいって訳か。雨歌の親父さんから連絡があったのか。


「雨歌には伝えにくくてな」

「それで親友の俺に?」

「ああ、悪いとは思っているんだが君が知っていてもいいと判断を俺がした」


 碧さんは手袋をして古い手帳を取り出し淡々と話を続けた。内容は殺害方法や犯人である可能性の高い人物のことを話していたけど、ほとんど頭になんて入っていない。碧さんが取り出して見ている古い手帳に覚えがあったからだ。


「碧さん……その手帳はどこで?」

「お父さんに借りた。おそらく犯人のものだろう」

「それは雨歌のです」


 碧さんが凄く驚いて手帳を手から落としてしまったので俺が指紋を付けないようにシャツの袖を使いながら手に取り、持っていたティッシュでページを捲っていった。雨歌に見せてもらったことがあるので書かれている内容はすべて頭に入っている。


 この手帳には雨歌が自分の身を守るための極意みたいなのが書かれている。昔から人より体格は小さく中々筋肉も付かなく非力な為にイジメの対象になっていた。もちろん、全員ボコボコにして二度としないようにさせたことはあるがそれは保育園の年長さんの時の話で見せてもらったのが小学一年生の時だから知らない部分もあった。


 雨歌の字で殺害方法や死者の生き返らせ方が追加されていた。しかも殺し方の図に書かれている人物すべて雨歌自身である。手帳を捨てたと言っていたのが小学三年生の秋だったのでその間にあった出来事を思い出さないと。


 まず雨歌は一年の時に粘土工作で賞をもらっていたが雨歌は悲しそうな目をしていたのは覚えているが他は普通だった筈。そういえば二年生になったばかりの時に祖父母が亡くなったって話を聞いたことがあるな。あの家庭であの二人だけは優しかったと言っていたから相当ショックは大きかっただろうな。


 雨歌は父母のことが好きかと聞かれた時は目から光が消えていた。その状態で「好き」と答えていたことを思い出すとゾっとするな。


「雨歌のだったのか。最後のページ見てみるといい」


 復活を遂げた碧さんが俺に向けて言ってくるので最後のページまで捲ってみると

《  け  ださ 。ム なら  ロと ツキだ  も   せで れ   うにおね    す》

 と書かれていた。所々消えていて読めない部分もあったがなんとなく分かった。


「お兄さん、俺教室に戻ります」

「お、おう。もうすぐチャイムなるからな」


 手帳を返すと猛ダッシュで教室に行く。教室に着いた瞬間、雨歌が目に入り心配そうな顔をしていたので抱き着いた。


「えっ?」

「お、お前」


 教室から黄色い悲鳴がしてたり、困惑している声が聞こえたりするが気にせずに抱き着いたままでいる。雨歌成分が足りなかったから補充されていく。緋華が雨歌に執着すること理由がなんとなくわかった気がする。離れて雨歌の頭を撫でまわす。


「悪い悪い」

「あの……昨日はごめん?」

「いやいや、俺こそ悪かった」


 少し取り乱してしまっていたみたいだが落ち着いたな。教室内を見渡してみるが驚いた反応をしているのは多いな。古村は何かを考えているような仕草をしてるな。妖狐は目をパチパチさせて驚いていやがるな。これで大体は絞れるかもな。


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