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7話 お泊まり1

➖自宅(部屋)➖

 今日は緋華さんは家に泊まることになってしまった。しかも僕の部屋で一晩過ごすことになるなんて思っても見なかった。緋華さんの両親が反対をすると思っていたけど、よくOKを出した。

お父さんの方は絶対に許さないとか言っていたんだろうな。


 多分だけど、あのお兄さんのシスコンぶりを見て泊まるくらいからいいかと思ったんだろうね。あの人緋華さんの事になるとすぐに勘違いして暴走する癖があるから。


「なんで母さんはノリノリなんだ」


 おそらくだけでも少し前の告白(プロポーズ?)が原因なんだと思うんだよね。本心では合ったので訂正はする必要はないけども!! なんで告白をすっ飛ばしてプロポーズしてしまったんだ僕は。

・・・はあ、布団を取りに行こうかな。


 確か三階の押し入れにお客様用の布団が合った筈だから取りに行こうと思いドアを開けたら目の前に母さんと緋華さんのお母さんの歌恋(かれん)が立っていた。ドアをそっと閉めたがノックをされ開ける。


「閉まるだなんて酷いのね」

「歌恋さんが目の前にいたら普通閉めますよ」


 歌恋さんは母さんと同じ歳で背は平均くらいだそうなのでそこまで高くはない。顔は緋華さんと同じでクール系の美人ではある。


義母(はは)になる人なのに」

「雨歌ちゃんと歌恋ちゃんは相変わらず仲良しね」


 母さんこれは仲良しとは言えないと思うよ。歌恋さんは唯一僕との婚約をさせようとしなかった人であり、緋華さんの将来を真剣に考えていた人だ。お父さんとお兄さんも凄く反対はしていたそうだけど緋華さんに甘いからなんとかなったみたいです。

この人は僕に会うまでは反対していた。


「君は本当に良かったの? 婚約して」

「よかったです。歌恋さんの方は良かったんですか、認めても?」


 少し考える素振りをして歌恋さんは「今でも伊月くんの方がつり合うと思うよ」と返答してきた。伊月は勉強やスポーツはできて気がきいて顔はイケメンだから緋華さんとつり合いはとれるだろう。僕は周りからも自分からも役に立たないように見えるからこの人の考えは合っている。

物心ついたときから両親に散々言われてきたことだから分かってはいるけど。


「雨歌ちゃん、大丈夫?」

「うん大丈夫。歌恋さん」

「どうしたの?」

「僕は緋華さんと添い遂げるつもりです」


 二人は数秒目を点にした後、母さんは頭を撫でてきて、歌恋さんは「これは勝てないわね、あの子」と言いながら苦笑いをしていた。

勝てないとは誰のことだろうかなんて考えていたら父さん×2名が入ってきた。


 歌恋さんがきていると言うことは旦那さんである政義(まさよし)さんが……家にいてしかも僕の部屋に入ってきた。ゆっくりと父さんと政義さんが近づいてきて少しだけ怖かった。二人とも背は大きいから威圧感があるんだよね。


「流石は雨歌」


 そう言いながら父さんは母さんと交代して頭をガシガシと撫でまわしてきた。お酒の匂いがするので酔っているのだと思う。政義さんは一人分くらい空けて僕の隣に立っている。


「政義さん?」

「・・・お義父さんと呼んでくれ」

「おい、それは俺だけの特権だぞ」

「それならパパでもいい」


 父さんと政義さんが口喧嘩を始めた。二人とも相当な酔っているみたいだから部屋から出て行って欲しい。そういえば緋華さんって今何をしてるんだろ? 母さんと話していたからリビングに居た筈だけど。


(雨歌ちゃん。緋華ちゃんは今お風呂に入ってるからね)


 母さんが小声で緋華さんの現在地を教えてくれたけど、なんでジェスチャーで「今のうちに行っておいで」って言ってるんだろうね。僕は覗くつもりなんて全くないよ。


「あら、覗いてくればいいじゃない」

「「えっ」」


 母さんのジェスチャーを見ていたのか、歌恋さんはとんでもないことを言い放った。言葉を聞いて反応をしようとする前に口喧嘩していた父さん達が声を拍子抜けな声を出した。僕はそんな声を聞いたせいで笑いを堪えなきゃいけなくなった。


「将来結婚するなら一緒にお風呂でも入ってくればいいじゃないの」

「ママ? それとこれは別の話でな」

「私もあんな事を言ってしまったけど、それはどうかと思うよ」

「母親が言うのは流石にどうかと」

「この三人は放って置いて行っておいで」


 意味がわからないって顔してますけど、貴女の方がよっぽど意味がわからないこと言ってますよ。酔っていませんか? 母さん達も。冷静になったのか、父さん達が歌恋さんに色々と言っているので僕は邪魔をしないように部屋を出た。

部屋を出て三階に行かずリビングに行った。


自宅リビング

 緋華さんがお風呂上がるまでには部屋から出て行ってほしいけど、ギャーギャー言い合っているだろうから無理かな。歌恋さんが原因じゃなくて母さんがジェスチャーをしなければこんなことにはならなかった。


「夕夏姉さん、何か面白い本って……」

「久しぶりだな。1年ぶりか?」


 リビングに夕夏姉さんと紫音(しおん)さんがいた。紫音さんは緋華さんのお兄さんで身長は高く髪は暗めの灰色で顔つきはミステリアス? 系の人。年齢は24歳で姉さんの1つ下で同じ職場で働いている。父さんの直属の部下になった。


「お久しぶりですね。シスコン野郎」

「そんな褒めるなよ。ドチビ」


 紫音さんと僕は仲良くはない。小学生二年生の頃に僕と伊月が緋華さんと遊ぶために家に行ったら、紫音さんに飛び蹴りをされ頭をぶつけてムカついたので一方的にボコってしまったことがある。両方とも幼かったこともあり政義さんの説教だけで終わった。

そういえば一部始終を見ていた伊月が少しの間、僕に対してビクビクしてたけどどうしてなんだろう。


「おいチビ。妹は俺に勝てなきゃやらんぞ」

「記憶力ゴミなんですか? 一度ボコりましたけど?」

「あ、アレはノーカンだ」


 今やったら確実に負けるじゃん。9歳も年が離れてる訳だし流石に今やったら軽いケガでは済まなくなるだろうからやめておきたい。


「二人は喧嘩したことあるの? 仲は悪そうにしてはいるけど」


 姉さんはこの話を知らないため、当時の話をしたら爆笑していた。紫音さんが勘違いして僕に飛び蹴りをしなければ、喧嘩になってなかった筈なんだよね。気になって何を勘違いしたのかを聞いた話では当時喧嘩していた連中が家に襲撃を仕掛けることを知った為、待ち伏せをしていたそうだ。

僕と伊月しかいなかったのになんで勘違いするかなと当時は思ったけど、今では理由は分かった。


「妹に手を出すなよ」

「出さないですよ!! 出すとしたら結婚してからです」

「よし、処刑な」


 妹離れが全くできない兄で悪い虫(僕を含む男子)を追い払う役を担っているからだ。たまにちょっかいを掛けられることがあったけど、そのたびに緋華さんが怒って紫音さんが凹むというのを繰り返していた。伊月は良くて僕はダメらしいから解せぬ。


「そういえば、1年間ヒーロたんと会ってなかったけど冷めたのか?」

「その呼び名はやめてないんですね。あと冷めているわけないでしょ」


 そんなことを言いながら僕は紫音さんの目の前に座る。ドアが僕の後ろにあるのでいつでも此処から抜けれる。夕夏姉さんは僕の隣で大人しくせんべいを食べているけど、なんで姉さんがそんなに大人しくなっているのかがわからない。


「バカ親共は?」

「僕の部屋にいると思うから見てきたら」

「あれ? お前敬語はどったん?」


 布団を取りに行けないだろうから今日はどこで寝ようかな。おそらくだけど四人とも酔っていそうだしあのまま部屋に戻ると確実に「一緒のベッドで寝たら?」とか言ってきそうだから僕は別の場所で寝た方がいいかな。そうするとソファーくらいしか空きがないから掛け布団か何かを持ってきた方がいい。


「どうした? 何か悩んでいるなら話は聞くぞ」

「聞くだけでしょ」

「なあだから敬語は? 急に無くすなよ」


 僕一人で悩んでいても仕方ないので紫音さんに話すことにした。話を聞き終えた紫音さんが野宿を提案してくれたけど即却下した。紫音さんに話した僕が馬鹿だったと反省をしながら何かいい案がないかを考えるけど、やっぱりソファーで寝ることしか出てこない。


「職場の仮眠室使わせてもらえるがそこにするか?」

「職場って特殊課とか呼ばれている所の?」

「お前が良ければだがな」


 あそこには正直行きたくはないけど、酔っぱらった人達の相手はしなくないから行こうかな。行くとしても明日の学校が間に合うかどうかなんだけど。最悪間に合わなくて問題はないだろうからいける……多分。


「ウチのが迷惑を掛けている分、送り向かいはしてやるよ」


 紫音さんを少し見直していると「ワザと遅刻させるかもしれないけどな」とか言っていたので呼び捨てにしてやろう。たまに僕に対して優しくしてくれるからさん付けだけはしていたのに、ワザと遅刻させようとする人には敬意なんて払ってたまるか。まだされてないけど。


「冗談だよ。そうなことしたら俺の命が危ないからな」

「信じますよ?」

「そうと決まれば今から行くぞ」


 今から行くの!? もう少し後でもいいような気がすると思っていたけど、父さん達に見つかると厄介なことになるかもしれないから今から行くってことなのかな。隣に姉さんがいるから意味がないのではと思い静かな夕夏姉さんを見ると寝ていた。

右手にはせんべいがあり、左手にはお酒の缶が握ってあった。


 夕夏姉さん……お酒は強くなかったのになんで飲んじゃうのかな。今の僕からすればありがたいけど、姉さんは二日酔いをするかもしれないのは弟しては心配ではあるな。なんて考えていたら紫音さんに手首を引っ張られて玄関まで連れられた。


「親共に見つかるよりかは緋華に見つかる方がヤバイ」

「そんなにヤバそうではないとは」

「何を言っているんだ。兄としては溺愛しているが、ストーカーを容認はできないぞ」


 確かにストーカーは容認はできな……待って今までの僕って受け入れてなかった? いや諦めていただけだし大丈夫だよね。緋華さんのストーカー行為は無くなっている訳だし何も問題はない。・・・緋華さんは今はそこまでヤバくないと思っておきたい。

何故か緊張感が走る。


「誰にもバレないようにいくぞ」

「そうしましょう」

「雨歌くん、お兄様?」


 これは後ろを振り向いたらいる奴ですね。ホラー映画でも良くある演出ですけど、実際にされると凄く怖いことが分かった。そういえば緋華さんに何かを隠すことなんてできるのかな? タイミングの悪いところでいつも現れるから……無理かな。


「こ、コンビニに二人で行くだけだ。心配するな」

「本当に?」

「紫音さんと色々と二人で話したいこともあるので」

「・・・分かった。お兄様と話があるから雨歌くんは先に行っていて」


 僕は先に家を出たのは良いけど、これって家に帰って来なきゃいけないことになってしまったのでは? ソファーで寝なきゃいけないかな。なんて考えていたら紫音さんが出てきた。


「すまん」

「緋華さんがいたら仕方ないよ」

「すまんな。流石に怖すぎた」


 紫音さんと二人で歩いてコンビニまで向かい、適当にお菓子や飲み物を買って帰った。帰ったらリビングに母さん達が正座させられていて緋華さんが説教していた。夕夏姉さんは自分の部屋に戻っているみたいで良かったけど、母さん達は何をやった?


「雨歌くん、お帰りなさい。さあ一緒に寝よ」

「待ってください。布団を取りに行くので」

「一緒にね・よ・う・か?」

「はい」


 僕は一緒に寝るのは構わないんですけど、緋華さんのご家族が何かを言ってくるかもしれない。と少し期待していたけど、三人とも圧を掛けられていたから何も言ってこない。僕の両親はというと目をキラキラさせていた。朝起きたら大変なことになっているだろうね。

もう知らないからね。


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