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6話 未遂? 1

自宅リビング

 テレビの前にあるソファーに座り、いいものが買えたと一人で喜んでいた。時間は14時半でお昼はまだ済んでいない。

空には水色で花形のヘアピンを買ってきたけど、気に入ってくれるといいけど。海兎にはターコイズと言う宝石? の付いたネックレスを買った。イイ感じの指輪があったからそれにしようかと一瞬悩んだけど、やめておいてと思った。


 海兎なら別に問題はないけど、空に渡したら婚約指輪と周りに言いふらすだろうからなあ。小さい頃から結婚するとか本気で言っていたことを思い出したからスッと元の位置に戻した。

それはおいて、昼ご飯はどうしようかな。今家にいるのは僕一人でみんなはもう出ているので家のどこにもいない。うーん、何を食べようか本当に悩むなあ。


 冷蔵庫にあるもので済ませようと思いソファーから立ったと同時にインターホンが鳴る。誰か来る予定なんてあったかなと思い、受話器から誰が来たかを確認するが誰もいなかった。


「誰かのイタズラなのかな」


 ピンポンダッシュって本当にやる人がいるなんて思わなかった。それよりもお腹がすいたから何か軽く作って食べるかようっと。そういえば、みんな帰って来てもいい時間帯なのにまだ帰って来ない。

梨奈姉さんと碧兄さんは生徒会で業務をこなしていることだろうから遅くはなる筈で、夕夏姉さんは急遽仕事場に呼ばれて渋々出勤していた。


「家が静かなのは凄く久しぶりなような気が……」

「みんな、雨歌くんのこと好きだもんね」


 後ろを振り向くと緋華さんが立っていた。どうやって入ってきたのかと一瞬考えたけど、母さんの鍵を持っているということは会って借りたな。音もなく入ってくるとか忍者かな?


「寂しかった?」

「・・・はい」


 その言葉を聞いた瞬間顔が見たことがないくらいにニヤけていた。なんでこの人、普段無表情でいるんだろうと思ってしまうぐらいニヤけている。そんなことを思いながら緋華さんを見ているとこちらを見ている目が変わったのが分かった。

僕の本能が告げる逃げなきゃ喰われると。


 すぐに行動に移しベランダから逃げようと鍵を開けるが、僕と緋華さんでは身体能力が違いすぎるので簡単に捕まってしまう。捕まって後ろから抱き着かれてしまったけど今回は簡単に諦めてしまってはいけないからなんとか抜け出そうとするが無理すぎる。


「今はまだしないから安心して」


 安心できないんですよ。呼吸は乱れているし、顔を見ようと上を向くと目はまだ獲物を狙う捕食者のままだ。我慢できるならいいですけども……できないですよね。うん、絶対に出来ないから何分持つのだろうか、予想してみようかな。

あと、5分は我慢できるだろうけどそれ以上は我慢できないから誰かに連絡をしなきゃ。


「誰かに連絡を入れるつもり?」


 携帯を取られた。伊月に助けを求めようとしたのに……これじゃあ現実逃避するしかなくなるよ? ソファーに僕の携帯を投げて抱きしめる力が強くなり始めたなあ。


「既成事実を作れば……絶対逃げれないよね?」


 逃げるつもりは全くないので既成事実を作らなくても大丈夫ですよ。緋華さん以外に恋人や夫婦になりたい人なんていないんですから。そんなことより後ろから抱き着かれている状況をなんとかしないといけないような気がするけど、力が強すぎてどうにもできない。

梨奈姉さんと碧兄さんが帰ってくるまで耐えればこの状況から抜け出せる。


「子供は何人ほしい?」


 おっとこれは本当にヤバイ状況になっているかもしれないんですけど!! この質問に答えたら次の瞬間におさらばだよ絶対に。答えなければ悲しむだろうから……どうすれば?

このまま誰も来なければ、どうしようもないから正直に答えてやる。


「・・・ひ、緋華さんとの子供なら何人でも欲しいです」

「雨歌ー-ー無事……か?」

「伊月!?」


 伊月が入って来たと思いきやすぐにドアを閉めた。さっきの言葉聞かれたよね? 絶対に聞かれた。恥ずかし過ぎるから明日、顔を合わせずらい。

そんなことを考えていると緋華さんの体が熱くなっていることに気が付いた。


「あの……緋華さん?」

「雨歌くん、今日は帰るね。これお義母様に返しておいて」

「えっ、あ、はい」


 緋華さんは抱き着いたままで鍵を返した後、凄い速度で僕から離れて帰っていた。頭が状況に追いつけないためか、そのまま何分かフリーズしていた。

帰ってきた夕夏姉さんに声をかけられてから意識が戻った。


「さっき緋華ちゃんと会ったんだけど何かあった」

「何もないよ。これ二人への入学祝いだから渡しておいて」


 テーブルに置いて置いたプレゼントを夕夏姉さんに渡してリビングから出て自分の部屋に向かう。


➖自宅(部屋)➖

 ベッドに倒れるように寝転がった。まだ緋華さんに抱きつかれた時の感触と温もりが残っていて少し落ち着かない。あの時は全然気にしてなかったのに今になって身体の柔らかさや匂いで頭がクラクラしてきた。


 もう何もしたくないからこのまま寝ようかな。伊月に対しての言い訳は明日会うまでに考えておけばいいわけだし、緋華さんとは出来るだけ会わなければ問題はないだろうから。今は何も考えずに寝よう。


「雨歌くん、ご飯出来てるから起きて」

「あれ? 母さん」

「お義母様ではないよ」


 夢の中で緋華さんが出てくるとかどんなだけ僕は好きなんだよ。凄く好きじゃなかったらストーカーをしている人なんて受け入れる筈がないじゃん……普通は知らないけど。

・・・夢ならベッドの中に引き摺り込んでも大丈夫だよね?


 僕を揺さぶる緋華さんの腕を掴みこちらに引き寄せる。緋華さんは凄く驚いた顔をしていたがお構いなしにベッドの中に引き摺り込む。

夢の中でも怪我をしないように気をつけているので大丈夫だろう。


「雨歌くん!?」


 緋華さんは伊月よりも7cmくらい高いのでいつも僕が見上げるか、緋華さんがしゃがむかして目線を合わせてるけど今回はベッドの上で寝転がって、目線が合うようにした。僕が見ている夢だけど、この中なら強欲になってもいい筈。

数㎝でも顔を近づけたら、唇に触れてしまう。


 右手で緋華さんの髪を撫でる。撫でる際に「んっ」という声が緋華さんからこぼれて少しだけドキッとした。妙にリアルな夢だと思ったが気にするほどではないかな。今の緋華さんのことを目に焼き付けておきたい。見つめ合っているとドアが開き、碧兄さんが入ってきた。


「おい二人共、飯できて……あ~避妊はしとけよ」

「・・・」

「もしかして……夢じゃない?」


 緋華さんは顔を真っ赤にしながら無言で頷いた。言い訳をしようとしたが、僕も顔から湯気が出てきそうなくらいに熱くなってしまって上手く喋れない。

僕があたふたしている所を見て落ち着いたのか、緋華さんが「分かってるよ」と言ってくれた。


(先に降りてるからね)


 緋華さんは耳元でそう言って部屋を出ていった。出て行ったのを確認して仰向けになった僕は両手で顔を抑えながら一人で恥ずかしさと罪悪感で押しつぶされそうになっていた。


自宅リビング

 落ち着いたのでリビングに降りてご飯を食べようと思ったけど、ドアの前まで来たのは良いけど中がシーンとしているのは何故なんだろう。今入ったら何か言われるだろうから入りたくない。

異様な空気が出て来ているんだよね、リビングから。


 ここでジッとしておいてもどうせバレるだろうから、速く入った方がいいんだろうけど雰囲気が怖すぎてドアノブを握れない。入るなり説教が始まるだろうから入りたくない。


「雨歌ちゃん、速く入っておいで」

「はい」


 母さんに言われたので腹を括ってリビングに入ると母さんと父さんは物凄い笑顔で、夕夏姉さんと梨奈姉さんはなんとも言えない顔をしていた。碧兄さんはゲッソリしていた。

海兎は状況がわからないって顔をしており、空は凹んでいた。


 緋華さんの隣が空いてるってことはここが僕の席ってことでいいのかな。僕以外は全員座ってるからそこしかないんだけど。緋華さんは先程のことがあったから目を合わせてくれない。


 夢と勘違いした僕が悪いですけども少しはこっちを見てくれてもいいんじゃないですかね。まぁ少し距離を置いた方がいいかもしれないかな?


「雨歌ちゃん、お母さんからお話があります。ご飯食べながらでいいから聞いてね」

「・・・はい」

「それじゃあ食べましょうか」


 ご飯を食べ始めてから数分後に母さんが口を開いた。話の内容は説教ではなく、節度を保ったお付き合いをすることだった。まだ祖母にはなりたくないから本当にお願いねと笑顔で言われた。


「ちゃんと卒業をしてからしなさい。緋華ちゃんのことを超大好きなのは知ってるから」

「待ってなんでそのことを知って……」


 母さんの表情が笑顔からイタズラに最高した子供みたいな顔に変わって気付いた。嵌められてしまって慌てて緋華さんの方を見ると、目が合った。

お互いに顔を赤くして、目を逸らす。


 ご飯に夢中になっていて欲しかった。好意を隠しているつもりはないんだけど、もう少しちゃんと言葉にしたかった。家族の前だけど告白してやる。


「緋華さん、僕と……結婚しましょう」

「ふへぇ?」


 言うセリフ間違えた。婚約はしているんだからそこは付き合ってくださいって言うところだろが!! 何を言ってるんだよ僕。


「籍を入れに行くか」

「よかったわね」

「「「「はぁ!!」」」」


 父さんと母さん以外はびっくりしすぎて声が大きくてなっていた。緋華さんは状況がわからないのか、あっちこっち向いている。

うん、かわいい。


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