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51話 嫉妬3

➖自宅(部屋)➖

 伊月がクラスメイトを投げるという事件以降は何も起きずに土曜日の朝になった。伊月は投げたその日の夜に3組の両親からお説教をくらって物凄く落ち込みはしたらしいけど、反省はしていないらしく「何か危害を加える奴がいたらまた投げるから安心しろ」って僕に対して言ってきた。流石にそれはダメなのでおばさんとおじさんにこっそりと言われたことを教えた。おじさんは呆れていたけど、おばさんはブチギレてしまい伊月にあることをさせている。


「俺は何も悪いことはしてないのに」

「うん、まぁ頑張って」

「終わったら速攻でデートだぞ」

「分かってるよ」


 おばさんが科した罰は巫女服のデザインを描かせることだった。伊月は聞いた時は物凄く嫌そうにしていたけど、緋華さんに「土曜日雨歌くんとデート行って来ていいから」と言われてやる気が出たのか、納得のいく物が出来ないと今日のデートは行かないと言ってきた。期限は決めてはいないそうだけどスイッチが入ってしまっているから止めれない。


「今はどんな感じ?」

「緋華さん、全然ですね」

「そう……はい飲み物」

「ありがとうございます」


 緋華さんが飲み物を持って来てくれたのでそれを受け取り一口飲む。中身を見てなかったので分からなかったけど麦茶だったんだ。伊月の分もちゃんと用意してあるから少し安心した。起きてから何も食べてないし飲んでもないので少し心配だったんだよね。少しだけ不格好だけどおにぎりもある。伊月に対して優しい所もあるなと思っていたら「伊月の分はない。雨歌くんのだけ」と緋華さんが言った。


 僕は朝ご飯はもう済ませているから作ってあげてもいいんじゃないのかな? と思うながらおにぎりを見る。泊まっている間は母さんの料理の手伝いをしてくれているので料理の腕は上がっているとは思うけど、おにぎりは不格好なのは相変わらずで安心した。おにぎりはお腹に入らないので伊月に食べてもらった。緋華さんは嫌そうな顔をしていたが捨てるのも勿体ないと僕が言ったら受け入れた。


「完成だな」

「巫女服なの? これが」

「お前が着る訳でもないんだからいいだろ」

「渡すのはあの子でしょ」

「だからこれでいいんだよ」


 緋華さんが完成した巫女服のデザインを見ながら伊月とそんな会話をする。僕も見ると緋華さんがこれは巫女服なのかと言いたくなる気持ちがよく分かった。巫女服というよりかはジャージ寄りだった。巫女服と言われれば確かにそう見えるけど、巫女服ぽいジャージなんだよね。伊月が考えたものなので口出しはしないでおくとしてコレを作るのは大変なのでは? 服とか作ったことはないけど相当大変な感じはする。


 巫女服のイラストを描いている横には文字が細かく書かれていて機能や素材、その人が使うであろうポーチなどがあった。なんでそこまで細かくかけているのかが不思議ではあるけど、そんなことよりも僕は少しだけモヤモヤしていることに違和感を感じていた。伊月は反省はしていないだけでちゃんと悪いと思っているのでしっかりとその人のことを考えて描いているから褒めるべきなんだけど……モヤモヤする。


「コレをどこに作ってもらうんだ?」

「私が行ってくるから渡して」

「いや……だからどこに」

「渡して」


 伊月は書いたものを渡してそれを受け取った後、緋華さんは部屋の外へと出て行った。本当にどこで作ってもらうんだろうかと気になるけど今は伊月に「お疲れ様」と言う。まだ時間は10時だけど疲れただろうから少しだけ休ませておこう。そう思い膝をポンポンと叩く。罰で描いたとはいえちゃんとやり切ったので何かしらご褒美をあげたくなった。


「どうした? 少しだけ機嫌が悪いようだが」

「別になんでもないよ」

「それで何故膝枕を?」

「ご褒美」

「罰なのに?」

「したくないならいいや」


 僕はそう言って部屋から出てリビングに向かう。リビングに入ると母さんと緋華さん、梨奈姉さんに空が一斉に僕の方へと来て逃げないように囲まれた。いや、なんで? 正面に居る母さんが手に持っているのを見て分かってしまった。あぁ~



―伊月視点―

 雨歌が部屋から出て行った後、俺は少し悶えていた。悶えていた原因は雨歌が嫉妬していたからである。俺と緋華のやりとりで嫉妬や拗ねは見せるが他の事でそういった感情を見せてこないので初めて見ると言っても過言ではないくらいにレアな姿を見れた。これに関しては雨歌本人に言っても否定してくるだろうから言わないが……可愛くないか? アイツのせいで他の人が可愛く見えねぇんだよな。


 だからその辺の奴らに告白されてもなんとも思わなかったりするし、世間一般的に可愛いって言われている人を見ても『そうか?』って思うからな。有名な女優? が一度でテレビの収録で街に来ていたのを見たが『有名人がきてるんだぁ、へぇ〜』で済ませた。その時に一緒にいた雨歌からは「伊月は何になら興味があるの?」って聞かれたので「目の前にある者」って答えたら首を傾げられた。キョトン顔も可愛かったので写真を撮ればよかった。


「伊月……何してるの?」

「悶えてる」

「そう。はいこれ」


 音もなく入ってきた緋華から渡されたのは紙袋だった。中身を確認したら服が入っており、ペアルックになってるからそれを必ず着って緋華に言われた。コイツとペアルックなのは絶対にいやだと顔で訴えると「雨歌くんとのに決まってる」と言われた。その顔には『私も絶対にいやだ』と書かれていた。


 普通に考えてそうだろうな。コイツ、俺のこと大嫌いだし同じものなんて指輪くらいだろうな許すとしたら。・・・とりあえず着替えるか。緋華が出ていったのを確認してから渡された服を着る。着てからわかったがこの服買ったの絶対にお袋だ。はぁ、今日は服とか持ってきてないしこれで行くか。雨歌とお揃いだしな。


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