32話 デート?2
➖Rinneモール➖
―伊月視点―
着いたのはいいが雨歌が全くこっちを見なくなった。アレが原因なのは分かってはいるんだが、どうしたらいいかが分からん。どうにかしていつも通りの雨――お袋から連絡がきた。メッセージを開いてみるとそこには「バカなアンタにアドバイス。まずは服を褒めなさい」とあった。どこかで見てんのか? 周囲を見渡すもお袋らしき人物はいない。次は夕夏さんからきた。開くと「いやぁ~お熱いね。責任取らなきゃね?」とあった。いやマジでどこかで見ているだろ。
「どうしたの?」
「いや、なんでもない」
「そっか」
探すことに集中するのはやめるか。夕夏さんはメッセージは無視するとしてお袋のアドバイスは採用するとして……どう褒めればいい。ここは「似合ってる」って言うべきなのか? それで雨歌に「女装のが好みなの?」とか聞かれたらなんて何も答えられないぞ。女装に対して興味があると思われるのは俺のイメージが壊れるかと言って「お前だから興味ある」なんて言ってみろ。自分で自分を殴りにいくぞ。・・・覚悟を決めて言うか。
「雨歌、その……だな」
「何かあったの?」
「似合ってるぞ、それ」
「っ!? えと、ありがとうございます」
耳まで真っ赤にしながら敬語でお礼を言う雨歌を見て俺は、ハートをズッキューンと撃ち抜かれていた。緋華が雨歌にぞっこんな理由は分かってはいたがこれはヤバいな。もう少し協力をしてあげてもいいかもしれないな。見返りとして少しは雨歌と一緒に居させてもらうか。考え事をしていたらもうすぐで映画館に着くな。雨歌のスマホがなったので端っこで立ち止まり確認させる。周囲を見渡すと変装はしているが見慣れている奴らがいた。距離は結構離れているし、俺らからは見えずらい位置に居る。
「・・・はぁ?」
「どうし―――は?」
雨歌が画面を見て声を出したので何があったかを聞こうと思ったが身長差で見ようと思っていなかった画面が見えた。婚約者を増やすだと? 緋華との婚約はお互いに承諾をした上での婚約だったのに雨歌の親父さんは何を考えていやがる。しかも性別は男と書かれていたので俺はどこの馬の骨か分からない奴には雨歌はやらんぞ。なんて考えていたら、雨歌がぷるぷる震えていて涙目になりながらこちらにスマホを向けてきた。先ほどまで俺も見ていたメッセージの画面で少し前に送られてきたのがあった。そこには「伊月」と「女装」という文字があった。というかそれしか目に入らなかった。
「仕組まれたってことか」
「きょ、共犯じゃないからね」
「分かってる」
お袋は知らない可能性はあるが親父は知っているだそうな。男親三人は物凄く仲いいからな。にしてもどうして急にそんなことが出てきたのかを考える必要があるんだが今は先にやることがあるからそれはお互いに家に帰ってからだな。雨歌は少なからず罪悪感を感じているだろうから少しでもそれを無くさないとな。
「今は気にせず遊ぶか」
「でも……」
「お前が本当にいやと思うなら俺が一緒に逃げてやる。だから今は映画でも見ような?」
「うん」
少し安心したようだな。まぁ緋華よりも俺の方が長い時間一緒に居た訳だし、安心されるのは当たり前だしな。少しだけだからなぁ帰るまでは出来るだけ忘れさせないといけないが、巻き込まれた筈の雨歌に罪悪感を与えた奴らは絶対に許さん。どういう理由があったとしても。
雨歌の腰に手を当てながら一緒に歩くが少しだけ俺が後ろにいるようにした。
雨歌に気づかれたくないのでそうしているだけで決してアイツらの為ではない。俺は雨歌や周りの人に気を付けながら、俺らをコソコソと見ている奴らに対して口パクで一方的に伝える。何か言ったのかが分かる奴はいるからそうしたが、分からないのであればメッセージを送ってやるがな。あとは放っておいて雨歌と映画を楽しむか。
「どの映画にしょうか」
「アクション系かホラーかだな」
「アニメとかあまり知らないしね、僕ら」
映画館に着いたが何を見るかを決めていなかった為、二人で1つのパンフレットを見ながら決める。俺的にはサメ映画が面白そうに思えるが雨歌はこういうのは苦手だからな。ホラー系はいけるのになんでサメ映画は無理なんだよと思っていたが、そういえば昔水族館で雨歌に向かってくるサメがいたな。水槽のガラスで何もなかったとはいえアレは怖いか。思い出しながら小声で笑う。
「なんだよ」
少しだけ笑っていたのが聞こえたみたいで頬を膨らませながら俺に言う。それを見て俺はこういう時間がたまにあれば結ばれなくてもいいと思えればいいのにな。雨歌が突然、「アレ見ない?」とどこかを指さしながら言う。指されている方を見るとスクリーンに広告が流れていた。恋愛系か、確かに雨歌はこういうのは好きそうだな。内容は……高校生の話だがあれだな。主人公の幼馴染として出てくる二人の関係が俺と雨歌に似ているような気がするが気のせいか。
「これにするか」
「いいの?」
「いいさ、俺も楽しめそうだしな」
見るものが決まったので入場券を買い飲み物だけ持って、第3スクリーンに入る。アニメーション映画でタイトルは“伊の月は雨が歌う恋日”ね。結ばれる筈の二人がストーカーに邪魔されるって話か。ストーカーって言ったら緋華が思い浮かぶな。雨歌にGPSや盗聴器を付けてるだろうし、盗撮もしてそうなだからなアイツ。
「楽しみ」
「だな」
映画が始まった瞬間、衝撃を受けた。始まりは火の中で一人の男の子が立って居て誰かに向かって何かを言って建物が崩れ落ちたところで画面が切り替わった。主人公は恋祈って名前か。『高校二年生になったばかりのイケイケJK』じゃあねぇよ、ナレーション。もっと感情を込めろよ、何を棒読みで言ってやがんだよ。制服に着替えて学校に行くのかと思ったらクローゼットを開けて写真を一枚手に取って内ポケットにしまう。カメラが切り替わりクローゼットの中が見えるようになると先ほどの男の子の盗撮があちらこちらにあったので、俺はそこで考えるのやめた。
「伊月、終わったよ?」
「まさかのタイムリープ系の話だったとはな」
「主人公が邪魔するストーカーだったしね」
俺には訳が分からなかったが雨歌が楽しんだみたいだからな。よしとするか。俺と雨歌は映画館を出てこの後はどうするかを話し合いながら適当に歩く。モールの中で気になった場所があったのでそこに立ち寄よることにした。服屋に入って思ったことは凄いなだった。女装男装専門店だったからだ。こんな所があったなんて知らなかった。
「あったの知ってた?」
「いや。その服もここでなのか」
「そうらしいよ」
「興味でも沸いたのか?」
少しだけイジワルするのが目的で言ったが、雨歌は恥ずかしながら「まだ決まった訳じゃないけど、婚約すかもだからさ」と言われた。コイツ俺のことを殺しにかかっているのか? 気にしなくてもいいと言った筈なのに、気にしてたのかよ。一人で苦しんでいると「女装してた方が伊月としていいでしょ」と言ってきたので俺は頭を撫でた。ここで「どんなお前でもいい」と言えたのならよかったけど、気を使われているのでそれは言わないようにした。
BLを追加したのとあらすじを少しだけ変えました




