31話 デート?1
➖教室(1-1)➖
あれから何もなく午後の授業を受けて今は放課後で僕は頭を抱えていてその理由が課題を出されたからである。授業についていくのがやっと何に課題の提出だと……絶望だぁ。ここは伊月先生に頼むしかないと思い後ろを振り向くと他のクラスメイトに喋りかけられていた。3、4人いるからあの中に入って行くのは少しと言うか大分無理しないとな。
「準備は出来たのか?」
「え? 伊月」
「他に誰がいるんだよ。ほら帰るぞ」
伊月はそう言って先に教室から出て行った。何が起こったかは分からなかったけど、少し怒っている雰囲気ではあったな。さっきいたクラスメイトは……うわぁ、何か怒らせること言ったなこれは。中々機嫌が直らないから面倒なんだけど。母さんに今日は晩御飯をいらないって連絡を入れておかないといけないな。今日はゲーセンに行ってその後、トッド寿司に行こう。それで落ち着く筈。そうと決まれば急いで伊月を追いかけないと。
「伊月、ゲーセン行こ」
「・・・どった急に」
「ほら、最近は行けてなかったでしょ」
「それなら晩御飯は寿司だな?」
あれぇ? もうすでに機嫌が直ってないかこの人? まあ別にいいけど。伊月は本当に楽しそうにゲーセンに行ったらどんなのをする? とかクレーン系はやっぱり外せないよなぁなどを喋っているけどいまいち楽しさが分からない。伊月に何度か付き合って行っているが家でゲームをするのと何が違うかは分からないでいた。伊月は色々と説明してくれてはいるけど、僕はそれを分かっていないのが悪いのかな?
「着替えてから行こうな」
「いいけどどうして?」
「そりゃデ――出かけるんだぞ?」
「わかった」
伊月が楽しみにしていた理由は僕と遊びに行くことだったのか。嬉しさはあるけど、今別の何かを言いそうになっていなかったかな? まあ伊月のテンションが上がりまくって少しつまっただけだろうから気にしないでおこうっと。僕らは一度帰って着替えてから集合することにした。家に着くのは僕の方が早いから伊月の家に向かう。家に帰って母さんに説明をしたら、夕夏姉さんと二人がかりである服に着替えさせられた。母さんに「その格好で行くなら遊びに行くのを許します」と言われたので、これで行くしかないか……うぅ恥ずかしい。
➖伊月の部屋➖
―伊月視点―
危なかった。遊びに誘われたことが嬉しすぎてデートと言いそうになった。雨歌は俺のことを親友として見ているからなそれを壊すわけにはいかん。はぁ……どうしたらいいものか。緋華には分かって俺には分からないモノがある時点でホント勝ち目ないのか。重婚をアイツに承諾させればいいんだけど、雨歌が即答しているからツミなんだよ。
「バカ息子……これ持って行きな」
「金ならあるぞ」
「いいから持って行きな。それとおめでとう」
「???」
「ウーくんが来てるからさっさと準備しな」
お袋、頭でも打ったのか? 何が「おめでとう」だよ。何もしてないしおめでたいことなんて何もないだろ。雨歌と仲直りしたことに対して嬉しいわけではないだろからなお袋の性格からして。まあ考えても仕方ないから降りるか。雨歌も来ていることだしな。
俺は自分の部屋から出て階段で下に降りている際に玄関が少しだけ目に入りる。、いつもなら気にも留めない筈なのに降りるのをやめてまで玄関……タタキを見つめる。雨歌がいつも履いているお気に入りの靴は無く、代わりに見慣れないのがあった。誰かお客さんでも来ているのか? いやでも新品の靴を履いてくるような人はお袋の知り合いにはいなかった筈。
アレか、靴に慣れる為に履いて来たのか。確かに大事だもんな、新しいと中々慣れないからいつもより少し強く力を込めたりするんだよな。というかせめて玄関に入れておいてあげろよ。階段を最後まで降りて外に出るが誰も居なかった。およ? 誰も居ねえじゃん。お袋、そろそろヤバくなってきたのか。
「おい、お袋外に雨歌いなかった……ぞぉを?」
ドアを閉めてリビングに向かいお袋に話かけるが、そこには少し見覚えがある顔が映った。ドアを開ければすぐ近くにテーブルとイスがあり、そこにアイツが座っていてお袋はキッチンにいる。俺は見間違いかと思い目をこすりソイツとお袋を見る。・・・お袋は俺が混乱しているのが分かっているようでニマニマしていた。
「・・・ごめんね? 母さん達がこれを着てからじゃないと行かせないって」
「あぁあ~OK。少し待て整理する」
今日は雨歌とゲーセンに遊びに行ってトッド寿司に食いに行くという話をして1度着替えてから再集合しようと言って別れた。雨歌はあの人達に「この服を着て行かないと行かせない」と言われたんだな? 服だけならまだ分かるが何故靴も新しいのが用意されてるんだよ。こんなの聞いてねえよ!! マジでデートになるぞ。あの人達最高か!?
とりあえず籍を入れに行くか……いやそうじゃないだろ。スマホを取り出して写真を1枚だけ撮り雨歌の腕を掴みリビングを出る。出た後雨歌が心配そうな声で「ごめんね。僕が女装で出かけることになって」と言われたのでデコピンをしてから「とりあえず行くぞ。恥ずかしいだろうから映画に変更するか」と言った。お袋、先に教えておいてくれよ。勢いだけで籍を入れに行きそうになったぞ。
「本当にごめんね」
「お互いに楽しまなきゃいけないしな」
「ありがとう」
なんていうのは建前で流石に明るい所で今の雨歌を長時間見ると俺が死ぬ。雨歌の恰好はリネンワンピースで青色で膝下までの丈の長さで、長袖で大体親指の第二関節くらいまで長い。靴はブーツで厚底でいつもより目線が高く肩掛けバックもしている。いや、服装は今はいいんだよ。なんでメイクまでしてんのよあの人達は、メイクのせいかおかげか一瞬分からなかったぞ。義理とはいえ、息子なんだぞ。脅すようなことを言ってこんな最高な恰好をさせて。
「これ、母さん達から」
「手紙?」
雨歌がなんとか靴を履き終えた後に手紙を渡してきた。内容を簡単にまとめると「いつも雨歌がお世話になってます。ほんの少しお礼です。気に入るよね。だって大好きでしょ、雨歌のこと」と書かれてあったのでクシャクシャにして玄関に置いてあるゴミ箱に投げ込んだ。絶対にコレ書いたの夕夏さんだろ。あの人以外いねえな。
「行くか」
「うん」
家を出たが雰囲気が凄く気まずくて何も喋らずに大型ショッピングモールに向かう。雨歌は俺の反応を気にしているのかチラチラとこちらを見てくるが、それを気づいていないフリをしながらただ歩く。その姿が可愛いので抱きしめたくなるが我慢しないといけない。なんとしても緋華に重婚を認めてもらわないと辛すぎてどうにかなりそうだぞ。
「伊月、あそこ」
「ゔん?」
雨歌が立ち上がり前を指さす。その際に俺の服の袖を摘まんだので少し悶えてしまったがなんとか前を見た。今は結構遠い距離だがこちらに歩いてくる男女の姿が見えた。古村とその幼馴染だ。歩道の幅は広いが人の量は多くないので俺らに気づくのは時間の問題だった。どうしたものかと考えて思いついたものはベタなものだったが今は仕方ない。緋華も今回に関してはブチギレだろうがなんとかしよう。
「雨歌」
「どうし――!?」
名前を呼び振り向いて来たところにキスをするというので回避を出来るかを試してみる。おそらくこの場で何も言われないだけで俺は明日にでも学校で言われるだろうが雨歌は女装のと二人には後頭部しか見えないので絶対にバレない。横目で二人のことを確認しながら通り過ぎるまでキスをし続ける。雨歌は状況を理解しているので抵抗はしない。だがキスをしたのは失敗だったかもしれない。俺は少しだけガタが外れてしまい、雨歌の口の中に舌を入れた。
「ぅん!?」
雨歌は驚いて少し抵抗したが今の状況を思い出し受け入れた。その行動を確認した俺は舌を雨歌の舌に絡ませ唾液交換? をする。二人が通り過ぎているのは分かっているがやめられなくなってしまっている。雨歌は目を瞑っているので俺の表情も見えていないので、俺は愛おしい雨歌の表情を見ながらキスを楽しむことにした。時間はどのくらい経ったか分からないが相当長くしていたと思う。
「な……んで、やめなかったの」
「他にも顔見知りが何人かいたから」
「はぁ、伊月だから許すけど次はやめてね」
「分かった」
顔見知りがいたなんて嘘なんだけどな。ディープキスをされてもいいのかよ俺には。まあ緋華もいいんだろうがよ。そんなこと言ったらまたしても知らないぞ?




