2話 入学2
➖教室➖
引っ張られたまま教室に入った。色んな人がいると思いつつ、黒板に掲示されている席表を見る。
「これってなんの順番?」
「さぁ、わからん」
入り口に近い席の一列目1番目に僕が居て、伊月は二列目3番目にある。50音順では無いのは確かなので二人で頭を悩ませていると、後ろから教えてくれた人が居た。
「それはね、入試の時の成績順だよ」
教えてくれたのにお礼を言おうと振り返るとさっきぶつかった人が立っていた。彼は、さっきぶりだねと言ってきた。
教室に居ることにびっくりはしては無いけど、そういえば誰? と心の中で言った。
「自己紹介がまだだったね。ボクは古村匡介だ。よろしく」
「俺は津堂でこっちのチビっこいやつは不澤だ」
僕の自己紹介が奪われた。少し不機嫌そうに自己紹介してる。一体どうしたんだろうかな。
ちょっと待て、誰がチビっこいのだよ。確かに小さいけどさ言い方は他にあるだろう。
「一応聞いておくけど、君は男だよね」
「男ですよ。よく間違われますけど」
中立な顔立ちなのでよく性別を間違われる。あと、年齢も間違えられるのでその都度、訂正するのが面倒になってくる。
古村くんは何かに気がついたみたく、慌ててフォローを入れてくる。
「男だとは分かってはいたんだが、念のための確認だから気にしないでくれ」
いい人なのでは? と僕は思ったけども幼馴染は違うらしく警戒をしている。いい人そうではあるのに警戒なんてしなくてもいいのに。
(アイツはクサいから気をつけろ)
小声で話しかけていたと思ったら失礼な事を言う。全然匂わないのにという顔をして伊月を見る。
呆れながら、体臭とかではないからなと言われた。
流石は僕の幼馴染だなと感心して別の意味でクサいとのことだと分かった。言葉って難しいから分かりにくいね。
僕に向かって手を差し伸べてるけど、握手をしたいのかな?
「・・・君たちは凄く仲がいいだね」
「当たり前だろ? 幼馴染だからな」
握手した方がいいか迷っていたら伊月が握手をした。警戒してたよね、君はさ。
しかも見つめ合ってるから放っておいて席に行っておこう。
少し眠いからこのまま寝ておいてもいいよね。知らない人ばかりだから、話しかけるのも怖いから寝よ。
リュックを机に置き、その上に寝ようとしてると肩をトントンとされた。背後を振り向くと背の高くて髪が茶色の獣人が居た。
「あの二人止めなくていいのか?」
教卓を見るとまだ二人は握手をしながら見つめ……いや睨み合っていた。
もう仲良くなっているみたいだから無視しておくのが友達想いという奴だな。
「アレは放っておいても大丈夫ですよ」
「それならいいんだが」
「一つだけ聞きたいことがあるんですが」
「ん? なんでも聞いてくれていいぞ」
尻尾って触っていいのかを聞いた。仲良くなったらなと笑いながら言ってくれた。仲良くなったらモフらせくれるのね。
彼とは積極的に話しかけようと心に決めた。
「俺は、狗谷智成だ」
「僕は不澤雨歌です」
同級生だから敬語じゃなくていいと言われたが知らない人と喋るのは怖いから慣れるまで敬語で話そう。狗谷くんは背が高いから威圧感あるから凄く怖い。
その後はチャイムがなるまで狗谷くんと喋った。
犬の獣人で背が204cmもあるそうなので怖がられることが多いそうだ。怖がらずに話してくれるのが凄く嬉しかったみたいで色々と話してくれた。
まだ話は少ししかしてないけど、好きになった。
「お前ら、全員席につけ」
チャイムが鳴って1分ほどで担任らしき男性が入って来た。197㎝ほどの背丈でスーツを着て目が鋭く、雰囲気は凄く怖い。
「これから1年担任をする、ショケイくん先生だよろしくな」
「副担任の水原です」
もう一人居たんだ。担任の先生が怖くて気付かなったが女性の方は背は低めで163㎝はあって顔は幼いけど、キリッとした表情をしている。
先ほど、ショケイくん先生と名乗った担任の人が1日の流れを説明してくれた。
これからするから体育館へと移動して入学式、そのあと学校内の案内、教科書などの配布、HRをして解散という流れらしい。
説明が終わり、ショケイくん先生が教室を出て、他の生徒が続々と後をついて行き、伊月も出ていた後に僕もついて行こうとしたら副担任に止められた。
「貴方は少し待って」
副担任の……水原先生は真剣な表情でこちらをじっと見て口を開いた。
「ネクタイが少し曲がっていますよ」
「すいません」
慌てて直そうとしたのはいいがどう曲がっているのかが分からなくて一人でテンパっていたら水原先生が直してくれた。
「これでよし、行っても大丈夫です」
「ありがとうございます」
少し遅れて教室を出たが待ってくれた。先に行っていると思っていたから少し安心した。人数の確認が取ったあと体育館に行き、入学式が始まった。
入学式は1時間程で終わりそのまま学校の案内をして教室に戻り、10分間は休憩時間になった。生徒たちはトイレに行ったり、同じ中学同士で喋ったりしていた。
そんな中、僕は机で顔を隠していた。何故かと聞かれると僕の家族が目立っていた為である。
すごく恥ずかしいから、顔を隠しているのだけど伊月が喋りかけてきているので相手をしてあげないと少し拗ねるので面倒だ。
幼馴染の僕にかまってくれるのは嬉しいけど、他に友達を作ってくれないと僕は安心できないんだけどな。顔を上げて伊月を見る。
「さっきは凄かったな」
「僕は恥ずかしかったよ」
だろうなと笑われながら言ってきたので少しムカついたがあることに気が付いた。話している生徒の何人かはグループになっていることに。
仲のいいグループが出来るのは何が何でも速すぎないか?
「お前、ここが小中高とエスカレーター式で上がれるのと外部から受験できるのを忘れているだろ」
そういえばそんなことを言っていたような気がする。だからこんなに早く仲がいいグループが出来ているのか。
「忘れてやがったな」
「ごめん」
「緋華も小中高とここだろうが」
すっかりと忘れてた。ここに受かる事が大事だったから必死に頑張って勉強をしていたから仕方ないよね。うんうんと頷いていたら後ろの方から狗谷くんがやって来た。
「仲良さそうだな」
「狗谷くん」
狗谷くんが来てくれたことに喜んでいたら伊月が狗谷くんに向かって、お前は誰? と言ってしまった。小学4年生くらいから色々と警戒をするようになってしまった。
「伊月、この人は狗谷くんで仲良くなったんだよ」
「雨歌には聞いてない。俺は津堂伊月だ。そっちは」
「狗谷智成だ、よろしく頼む」
狗谷くんが手を出して来たけど、握手をするのかな? さっきの人は僕に対して出して来たけど今回は伊月に対してだからな。こういう時は握手をしようとしないから友達が少ないんだよね。
「こっちこそ、よろしくな」
「はあ!?」
伊月が手を握ったことに驚き過ぎて、はあ!? と言ってしまった。好意的に握手をしたのを見るのは、初めてだからびっくりした。狗谷くんが固まってしまっている。
「どうかしたか?」
「ちゃんと握手をしたのを初めて見たから」
「驚いたと」
伊月が固まっている狗谷くん説明をしてくれて納得してくれたみたいでホッとした僕であった。高校で初めてできた友達に嫌われるのは凹むから嫌われなくて良かった。
嫌われるのは慣れてはいるけど、友達に嫌われるのはまだ慣れていないのでやめて欲しい。
「幼馴染ってだけでここまで仲がいいとは」
「狗谷はいないのか?」
「居ることにはいるんだが」
何か訳アリみたいなのでそっとしておいた方がいいのかな。僕は伊月より友達がいないからこういう時どうすればいいかが分からない。
「嫌われているんだろ」
なんで堂々と気にしていそうな言葉を言うのかな。凹んでしまったら、どうするんだよ。
「そうだよな」
ほら、少し凹んでいるじゃんかさぁ。気にする人はするのになんでそんなことを平気で言えるのかが不思議で仕方がないよ、僕は。
「ごめんね。狗谷くん、悪気はなかったんですよ?」
「いや、いいんだ。そうじゃないかと思っていたからな」
「気にしなくてもいいと思うぞ」
凹ませた元凶を睨みつけると、悪かったと狗谷くんに謝ったのでよしとするかな。立ち直ったと思われる狗谷くんと伊月とおしゃべりを再開しようと思っていたら、足音が近づいてくる。
「ウチも混ざてもらえると嬉しいなあ」
先ほどまで喋っていたグループから抜けて来て、男三人の所に何故だか制服を着崩しているギャルの方がやって来た。狐の尻尾と耳があるから獣人だと思っていた。伊月が僕の席の近くから離れて先程来たギャルの人を睨みつけていた。
「妖狐がなんの用だ」
「さっきも言ったんだけど」
妖狐って凄く珍しいんじゃなかったけ? と首を傾げていたら狗谷くんが小声で教えてくれた。吸血鬼と妖狐は数が少ない為、珍しいと。
狐の獣人と妖狐の違いを聞かれても何も分からないので聞かないでほしい。
二人が威嚇し合いながら険悪な雰囲気
「二人ともやめたらどうかな?」
「お前には用がないから黙れ」
「そうそうアンタはお呼びじゃないから」
古村くんが止めに入ったが、止まる気配はない。というか敵意が古村くんに向いているんだけど。
(これは止めに入るべきだと思うぞ)
確かにそうかもしれない、でもさ止めに入っても僕も古村くんみたいに睨まれながら言われたら泣くよ。
仕方がないから間に入るけど、絶対に相手にされないから期待をしないでほしい。席を立ち、二人のいるところに行き止めに入る。
「威嚇し合うのはやめたら?」
「雨歌が言うならやめる」
「ウチもやめようかな」
思っていた反応と違うのは何故。それと周りから止めだぞすげーとか言ってるのが聞こえてくるけど、僕は何も凄くないからね。そこのところ勘違いしないでね。
古村くんは二人に心にくる言葉を言われてたけど、大丈夫……みたいだね。友達に慰められてるみたいに見えるけど、男二人に対して女の子が六人って何?
ハーレム主人公かなと思っていると、
「すごいですなあ」
「誰ですか?」
いつの間にか隣にメガネでぽっちゃりとした男の人がいた。心臓がバクバク鳴っているので、凄くびっくりしている。
「これは失礼、私は楢山武佐です」
自己紹介されたので僕も名前を言おうとしたらチャイムが鳴った。楢山くんはまた後で、話しましょうと言ってくれた。
「お前ら、席に戻らないと首を斬るぞ」
首を斬るとか怖いから席に戻ろう。周りを少し見回すと慌てて席に着く生徒が多かった。
席に着かないと首を斬るとか言う先生は怖いもんね。
だから名前がショケイくん先生なのかとくだらないことを考えていたら教科書の配布が始まっていた。
7冊ほどの教科書がまとめられて配られる。
2、3冊分厚いのがある。重いだろうから自転車で登下校しようかな。寮があればよかったけど無いし、そもそも許してくれないだろうから無理か。
「クラスメイト全員の顔と名前を覚えてもらう為に自己紹介をしてもらうと思っていたが、やめた」
そうだよね。自己紹介しなきゃ分からないから大事なんだけども……今なんて?
あの先生、やめたって言ったよね。みんな驚いているし水原先生に関しては何を言ってるんですか? この人みたいな顔をしてる。
「各自で勝手に仲良くしろってことだ」
僕を含めて数名が無反応でその他が文句を先生に言い、水原先生は、こうなるに決まってます。と言って色々言っている生徒を止めない。
ショケイくん先生は教卓を叩き、文句を言う。
「めんどくさいんだよ。二年連続で一年生の相手をしなきゃいけないんだよ」
それを聞いた僕と伊月以外の生徒が席を立ち先生に文句と暴言を言い始めてうるさくなったので、これは少し長くなるだろうから寝ることにした。
リュックから常に入れてある使い捨ての耳栓を取り出し、着けようとしてらどこからか視線を感じて教室中を見渡すが誰も僕を見ていなかった。
「どうした」
教室を見渡した後に首を傾げている僕の所に伊月がやって来て心配そうな顔で話しかけてきた。隠したりするようなことではないのでどこからか視線を感じることを話した。
話を聞いた伊月は迷わずに教室の真ん中から左側にある窓の方を見て指を指している。
指している方向を見ると誰もいなかった。そもそもここは二階でなので窓の外には人はいない訳で、覗くことなんてできない。
(そこにある木をよく見ろ)
言われた通りに木をよく見ることにしたら、見覚えがある人影が。木に隠れてこちらの様子をチラチラと確認している。落ちると危ないから注意しに行こうと席を立とうとしたら、伊月に肩を押さえつけられて立てなかった。
「伊月、立てないから離して」
「髪にゴミを付けて行ったら、緋華に呆れらるぞ」
それはいやなので髪に付いていると言われたゴミを取ろうとしても中々取れない。本当に付いているのかが怪しい。
「疑ってやがるな。取ってやるから下を向け」
言われた通りに下を向き、伊月がゴミを取ってくれるのを待つ。ゴミを取るだけなのに頭を抱えられ、伊月の方に持っていかれている図が完成した。
先程まで騒いでいた教室が静かになり視線が集まっているのが分かってしまったので、恥ずかしくなって顔が赤くなってしまっている。
「ほら、取れたぞ」
「頭を抱える必要あった?」
「・・・お前にイタズラをと」
最悪だと言いながら机にうつ伏せていると伊月が何かしら、意味深なことを言ったように聞こえた。何を言って、どういう意味なのかが気になって顔を上げ意味を聞こうとした瞬間にドアが勢いよく開けられた。
「雨歌くん、襲われていない!?」
襲われるって何? 僕って誰かに恨みを買うようなことをしてないと思うから大丈夫と思うんだけど、緋華先輩の反応を見ると不安になる。
「大丈夫だから気にしなくていいから帰れ」
「アンタが一番危ないでしょ」
伊月は何故か悪人面でニヤニヤしながら、緋華先輩を煽っているように見える。緋華先輩は伊月に対して何やら敵意を剝き出しにしている。ちなみに緋華先輩はいつも無表情なのだが今回は怒りが少し顔に出ている。
灰色の耳と尻尾が二歩ほど歩けばもふもふ出来るけど、今は二人に近づいてはいけないので席を離れて狗谷くんがいる所までこっそりと移動した。
緋華先輩は人狼という種族なので伊月よりも身体能力は上である。いつも緋華先輩が勝つのでここは大人しくしておくのが賢い選択。
二人がケンカをすると止めに入るのが命懸けになることが多いので止めたくない。
「まだ授業が終わってないからやめろ」
ショケイくん先生がメモ帳らしき物で頭を叩き、二人を止めてくれてそのまま説教をし始めて二人は頭を擦りながらしょぼくれている。
この先生すごいと目を輝かせて見ているであろう僕は先生に近づき大きな笑顔でお礼を言った。