15話 かみ1
➖教室(1-1)➖
教室に着いて狗谷くんにオカルト研究部の問題について聞いたみたけど、何も知らないそうなので伊月と二人で頭に「?」を浮かべてコソコソと小声で話す。恐らく部長しか知らないから体験入部の際に聞いてみることに。伊月は作戦を考え直す必要があるって言ってたけど本当にそんな必要あるのかな?
「そういえばお前らの仲のいい先輩は来るのか?」
「緋華さんなら来るって言ってたよ」
伊月は嫌そうな顔をしていたけど、僕的には嬉しいんだよね。伊月と一緒のことの方が多ても楽しいけど緋華さんも含めた三人が一緒なのも楽しくて僕は好きだから二人と一緒に体験入部できるのが凄く嬉しいんだよね。無意識にニコニコしていたのか、伊月に両頬をつねられた。
「本当に仲がいいな」
「そうかな」
「雨歌、ちゃんと喋れてないぞ」
伊月が頬をつねるからちゃんと喋れなくなっているだろうが!! 僕がかんでいるみたいに言ってくるんだよ。狗谷くんは笑ってないで助けてくれてもいいのに。あと、クラスメイトの人達もまたやっているよみたいな顔で見てるけど、三日くらいしかこの光景を見てないよね? なれるの早くない?
クラスメイトの適応力が高いのは分かったけど、温かい目で見るのはやめて欲しいんだけども。僕と伊月のやりとりって、このクラスの名物みたいになってしまっているよね。
数分後に伊月は離してくれたけど、少し頬が痛いので軽く足を蹴る。
「緋華とお前ってなんで俺に対して蹴りを入れたりするわけ?」
「なんでって伊月だから」
伊月は「なんじゃその理由」と言いながら自分の席に戻って行った。伊月が席に着くと同時にチャイムがなり、HRが始まる。HRのすぐ後には授業が始まるが、僕と伊月と妖狐さんはショケイ先生ではなく水原先生に呼び出しを受けた。何か悪いことでもしたかなと思いながら職員室に行く。
➖職員室➖
「呼んだのは昨日のことについてです」
僕は何もしていないんだけど、どうして連れてこられたんだろ? 伊月は結構問題を起こしてるから知ってるけど呼び出しをくらったら反省文を書かされるということを。伊月ならわかるけど、何故妖狐さんが呼ばれているのかが謎過ぎる。
「約一名、全く分かっていないようですが」
「雨歌のことは無視でいいですよ」
「そうですか。津堂くんは反省文を二十枚の提出をお願いします」
昨日の件ってあれかと思い出して伊月の罰に笑う。伊月が僕の両頬を引っ張りながら「アホなことをしたのは自覚しているよ」と少しキレ気味で言ってきた。僕は伊月の腕を掴み引っ張られ続けるのを阻止しようとするも力負けして更に強く引っ張られる。伊月は痛がりながらも抵抗している僕を放っている状態で水原先生と話を続ける。流石に多いと思ったのか、減らせないかを交渉しているみたいだった。
「締め切りは来週中でいいです」
「それならできそうですね」
「他二人の処分ですが」
やっと放してくれたけど痛い。今日はなんで頬を引っ張たりするんだよ。ん? ただ巻き込まれた僕たちも何か罰があるの? 流石に伊月よりは軽い罰ではあるよね。そうじゃないと理不尽過ぎる。
「二人の罰は生徒会の手伝いをしてください」
「いやです」
「不澤くんに同じく」
(おもろ)
断られるとは思ってなかったんだろう水原先生は固まってしまった。生徒会での仕事は面倒だし、結構時間が掛かるからやりたくはない。伊月笑ってるけど、大丈夫なの? 妖狐さんにさっきから凄く睨まれているよ。妖狐さんに何をされても文句は言えないことをしているのを自覚した方がいいからね、昨日のは。まあ僕には関係がないから何も言わないんだけど。
「断られると罰が大きくなりますよ?」
「ウチと不澤くんは巻き込まれただけです」
「では津堂くんが悪いと」
「はい、なので帰っていいですか」
水原先生は意外にも僕と妖狐さんが帰るのを許してくれた。伊月にはお説教をするのでもう少しだけ残ることになった。職員室を出て妖狐さんを見るとスッキリしたような顔をしていた。伊月に言われたことが相当ムカついたんだろうな。
➖廊下➖
「そういえば、今日はオカ研部にいくんだよね」
「そうですけど」
「行ってもいい?」
「狗谷くんに聞いてください」
妖狐さんに「それもそっか」といい教室に向かう。僕も教室に戻ろうとして歩き始めたら後頭部に何かをぶつけられた。後ろを振り向いて探してみるも誰もいないし隠れる場所なんてないのでおかしい。下に何か落ちてないかを探してみるけど何もない。虫がぶつかってきたのかな。
「どったの?」
「何かぶつかったんですけど……」
「急に出て来たけどその手に持ってるのは?」
何も持ってなかった筈の手に大きめに丸められている紙があった。確かに持っていなかったし持っていても気付く筈なのになんで気付かなかったんだ僕は。不思議に思いながら丸められた紙を開いていく。書かれた内容を見て首を傾げる。
「呪わていないよね」
妖狐さんがそういう事を言うから僕はこれをどうしたらいいのかが分からなくなってしまった。捨てようかなって思っていたところなのに、捨てようにも捨てられなくなった。紙に書かれている内容の最後の一文がストーカーからのと同じで『君をいつでも見守っている』ってことが書かれている。もちろんそれだけではないけども1番やばいのは髪の毛が入っていたことだ。
「悪意はないでしょうから大丈夫ですね」
「いや、お寺行ってきたら?」
お寺は雰囲気が苦手なので行きたくはないかな。髪が入っていたぐらいで何も実害は出ていないし、燃やす際に対応に気を付ければいけるのでは? 緋華さんの手紙の内容よりかは随分とマシだからいける。伊月にもとりあえず見せておこうかな。それよりも早く教室に戻りたい。
気にしても仕方ないので髪の毛を綺麗に包みズボンのポケットの中にしまい教室に再度向かう。妖狐さんはマジかコイツって顔をしていたけど、何もなかったかのように僕の隣を歩いている。オカルト研究部に行くついでにコレについても調べられるか確認してみようか。
➖職員室➖
ー伊月視点ー
「津堂くん、君は不澤くんと関わるのやめなさい」
廊下を爆走したことの説教が終わったら頭のおかしいことを言ってきた。俺が雨歌との関りを断てるわけがないのに何を言ってんだこの教師は。ショケイ先生にも「不澤と関係を持つなら覚悟をしておけよ。アレは面倒なのに好かれているから」と言われた。何に好かれているかを追求したが、「神を信じるか?」と言われただけでそれ以上は何も言ってくれなかった。
「聞いていますか?」
「交友関係を口出しされる筋合いはないです」
「では場所を移しましょう」
水原先生に誰も通らないし近づこうともしない場所に連れて行かれることになった。これから話すことは誰にも聞かれたくないってことは流石に分かる。ここの教師勢はおそらくではあるが生徒には決して言えないことを隠しているな。それが何かまでは分からないが“転生者”と“カミサマ”のことを知っているのは何故かと思っていたけど、先に気になったことがあったからそっちの方に集中していたので忘れていた。
➖旧理事長室➖
「好きなところに掛けて」
旧理事長室という場所に着いたのだが、凄く綺麗されていて使われていないとは思えなかった。生徒に何か危害を加える訳ではないだろうが少し警戒をしておくことにしよう。俺が水原先生の正面のソファーに座ると自分のことを話し始めた。
まずは水原先生自身が転生者であることを言われて驚いたがそれよりも驚いたのが“カミサマ”について知っていたからだ。“願い”の代わりに正体を教えてもらってわかったのは、“カミサマ”は名前であって俺らが思い浮かべるような“神様”ではないらしい。
“カミサマ”は「神は神でも“死の神様”であるからね」と言われて、サービスとして教えられたことは彼女の前世での妹がこの世界に転生されると言われて固まったそうだ。その妹は本来ならばで事故死をしている子に転生させることを伝えられた。
「何故それを俺に教えたんですか?」
「君は口が堅そうだし、転生者の妖狐さんと色々と話しているでしょ」
学校内では監視されている可能性があるのか。まあそれは別にいいとしても俺が妖狐と話しているだけでこんな情報を教えてくれるわけがないので何か目的があるはず。目的を予想していこう。
予想1,雨歌と離れさせるため
これは別の手段を使えばいけるので違う
予想2,妹を見つけるため
今世の容姿がわからないので探しようがない
予想3,手帳の内容
ゲームで出て来ているならこれが1番可能性としては高い
予想4,目的は何もない
ただ教師として自分の経験を俺に教えてくれただけかもしれない
「本当はね、君は彼を見る目が愛に満ちているから教えたの」
「それだけの理由で」
「絶対に実らない恋をしている君へのプレゼントと思っていて」
水原先生は「どんなことをしても君と彼は結ばれないから」と俺に聴こえないと思ったのか。凄く小さく消えそうな声で言っていたのを聞いてしまった。先生は“カミサマ”とやらに俺の恋の結果を聞いていたのか。




