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召喚のみでやってきます!  作者: オスめこ
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閑話休題~爺さん視点




「もうちょいだぞ新入り。お前さんも早く騎獣か何かを見つけんとなぁ。このちっこい体じゃあちょっとした冒険も一苦労…おいおい寝ちまったのかよ…」


この無性別の魔術師は、数時間前に突如としてこの世界にやって来た。放り込まれたのか、自分の意志でやって来たのか。今回のように別次元から魔力を持つ奴が来れるようになったのは、果たしていつからなのやら。

今まで秩序側で確認できた奴らは悲壮感などまるで無く、皆遊戯に耽る為に来たとばかりに魔法を会得し、己の気ままに力を行使している。まあ恐らくこの新入りもそうなのだろう。唯一俺があった奴らと違う点を挙げるならば、他よりも礼節が足りているところだろうか。

最初こそ穏やかなものの、力を付けると増長する者もいるし、中には自身は神の一族だからと訳の分からん事を話す馬鹿もいたそうだ。


曰く、この世界は作られた物であり、私はその一族だと― 


様々な便宜を図れと詰め寄り、各方面に癇癪を起したガキのように騒ぎ立て、終いには自身の新たな国を作ると宣うなど、王都の方で散々だったらしい。


全く持って愚かな事だ。様々な種族が、それぞれ別個の神様を信じ、信仰している。無論先のように己を神の被造物と捉える種族も多い。だからこそ、世界が作られた物と言われても困惑などないが、何処の馬の骨とも知らない、それも偶像や神話とかけ離れた姿の輩に好き放題言われた者の心境などまあ考えるべくもないだろう。結局そいつは指名手配され、混沌の方面に逃げたしたそうだが、さてはて。



くだらない事を考えつつ支店に戻ると、カスミナがゴブリン達に何やら指示を出していた。恐らく新入りの部屋の準備や教本なんかを用意しているのだろう。バタバタと喧しく走り回る使い魔達を押しのけ、新入りを暖炉の近くの揺り椅子に下ろす。改めて顔見ると本当に可愛らしいもんだ。言動は男勝りなのだが、ただ座っていれば男女両方に声を掛けられ、このように無防備に寝ていては幼子を愛する倒錯者達に狙われるだろう。


「ゴル。しっっっかりとサポートすると言ったのは何処の誰かしら?なぜ【ソーニャ】ちゃんに血の匂いがこびり付いて、可哀そうに疲れて寝込んでいるのか。納得のいく説明しなさい」


―こいつみたいに―


椅子に腰かけ、喉を潤そうと瓶に手を掛けたが、それすらも許してくれんらしい。射殺さんと睨み付け、怒気に怯えたゴブリン達が我先にと裏手に縮こまってしまった。


「そんな事は言った覚えはねぇし、血の匂いは回収の手順を教えただけだ。おまけに外れから抱えて来たんだぞ俺はぁ。休憩だ休憩。年寄りにムチ打たんでくれや」


「半分ドワーフが何を抜かしているのかしら。それにあなたまだ60でしょう?私が死んでも働けるわよ…それで?その子。どうだった?」


「どうって何がだよ」


「試験に決まっているでしょう。何と戦ったの?」


「ああ…」


どうやら俺が無茶させたと気が揉んでいたのだろう。ふっと目がいつもの表情に戻り、どさくさに紛れてつまみ食いしていたゴブリン達が再度バタバタと走り出す。一口黒酒を呷り舌を湿らせ話を続ける。


「フェラルファングの群れだ。野良のな。全部で5。内一頭はフレイマーだ」


「手助けは?」


「してねぇよ。召喚したスケルトン一体で討伐成功だ」


「まあ!ファング達の、それにフレイマーもいたのにスケルトンのみで倒すだなんて。すごいじゃない」


「ああ。こいつ中々いい召喚士になるかもな。初めての戦闘。如何に安全な場所で俯瞰して戦場を見渡せるとしても、大半は恐慌してパニックになったり、今回みたいな強い個体がいた場合は手を貸すもんだが。魔力の大半を使って支援してたよ。それにあのスケルトンは敵を倒して証明してみせた」


「それは凄いし、疲れちゃうのも無理はないわね…事情は分かったわ。私は【ソーニャ】ちゃん今回の件の報告書、作成しとくから、あなたも休憩したらゴブリン達と一緒にお部屋の準備しときなさい」


「おいおいおい。一応辺境でも腕利きの俺が召使いかよ。そりゃねぇだろカスミナさんよ」


「お黙り。今は特別支援要請なんてないし、偽竜種なんかも飛んできてないから仕事なんてないわよ。腕利きのあなた様に沿うような依頼なんてこの子のお部屋準備くらいなんだから。いい?絶対にお部屋を酒臭くなんてしないでよ。その革袋はこっちに置いて行ってちょうだい」


「そりゃ無理なご相談で…ぷはぁー!」


あからさまに目の前で飲んでやると、まさしく汚物を見るような目で睨み付けられる。しかしドワーフの血が混じっているのだ。酒の匂いがしない時など、戦場真っただ中の時ぐらいなもんだろう。


あちらがしっしと手で振り払ったので、気兼ねなく新入りの傍に座り、酒を楽しんだ。果たしてこいつはイケる口なのだろうか。次に目が覚めた時はあいつに隠れて一杯飲むとしよう。


こうして新入りの目覚めを楽しみにしつつ、(結局荷物運びなどさせられて)その日は平凡に終えたのである。








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