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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
97/706

97 皆に見てもらおう

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 小さな子供がいる家庭は一旦帰宅させて、残りの村人で襲撃に備えることにした。


 さっき倒したばかりの魔物の肉は誰も食べないと言うので、俺とアニカが村の外で焼いて食べることに。本当に魔物の肉を食べるのか…?と村人達も興味津々で俺達の様子を見守ってる。

 村の外に運び、ささっとナイフで捌いて焚き火で焼き始める。トールだけ一緒に食いたいらしい。


「ホントに美味いのかよ…?」

「まぁまぁ美味い。ちゃんと肉だしあんまり臭みもない」

「お腹も壊したことないしね!多分トールも大丈夫だよ!」

「アニカの話はあてにならないからな」

「なんでよ!?」


 遠目に見てる村の皆も笑ってる。そりゃそうだ。誰もが知ってる。


「食いしん坊だからだよ。拾い食いしては腹壊しまくってたろ?」

「昔のことは忘れなさいよ!過去のことをいつまでも…。そんなだから隣村のあの娘にフラれるんだよ」

「えっ!?どういう意味だ?」

「なんでもない!」

「いやいや気になるって!俺がフラれたことと、過去のことを覚えてるのになんの関係が…」

「お黙りっ!!まったく…オーレンといいトールといい……クローセの若い男はキャンキャンよく吠える!」

「なんだとっ?!とにかく教えろって!」

「やかましい!うら若き乙女を食いしん坊の悪食呼ばわりしたトールに教える義務はない!!」


 アホな掛け合いを聞いてる村人達は爆笑。俺はトールの気持ちがわかるといった風に頷いておいた。

 やがて肉が焼けた。簡単に手持ちの塩コショウで味付けして、ほいっとトールに手渡す。


「納得いかねぇ…。…おっ!ちょっと固いけど確かにイケる!全然食えるし、思ったより美味い」

「でしょ!ちゃんと下処理とかして調理すればもっと美味しくなるから!どうせ余るからよかったら皆で分けて食べてよ!」

「余るかぁ?このくらいの量はお前が残さず食っちゃうだろ」

「食うか!失礼な!」


 アニカの言う通りで、ウォルトさんが調理したフォレストウルフの料理はめちゃくちゃ美味い。それはさておき…。


「アニカ。やるか」

「やっぱり空腹なのかな?アイツを思い出す!」

「なんだ…?どうした?」

「トール、そのまま動くなよ」


 アニカが魔法を使う。


『夜目』


 ウォルトさんに内緒でアニカが修得していた魔法。夜間や暗いダンジョンでの戦闘においては必須。数分は持続できる。薄暗くて魔物の姿は見えてるけど、念には念を入れておくのが俺達の流儀。


「ハウンドドッグだな。5匹か」

「お前ら…。もしかして…わざとおびき寄せたのか?」

「早く実力を見てもらえば皆が早く休めるでしょ!」

「だからって…大丈夫なのかよ?」

「このくらいなら問題ない。心配なら村に入ってくれ。アニカ、行くぞ!」

「了解!」


 駆け出した俺達はハウンドドッグの群れと激突する。油断は微塵もない。いつもの冒険と同じだ。


「オラァァ!!シッ!」

「うりゃあっ!」


 駆けながら先頭にいた魔物の首を刎ねると、アニカも『身体強化』を使ってダガーで斬りつけた。最近のアニカは魔法だけでなくウォルトさんから近接戦闘も学んでる。


「オラァァッ!アニカ!」

「わかってる!『氷結』」


 その後も連携して危なげなく残りの魔物を倒していく。最終的に『夜目』の効果が残る内に倒しきった。武器をしまってトールの元へ戻る。


「ふぅ。終わったな」

「ちょっと危なかったよ!冷静にならないと!」

「悪い。気合いが入りすぎた」

「お前らは…ホントに冒険者になったんだな…」


 トールがボソッと呟いた。


「嘘なんか吐かないぞ?」

「そうだよ。冒険者っていってもまだEランクなんだけどね!」


 俺達は揃って苦笑する。なんせランクが1つ上がったばかりのド新人。全く自慢にならない。


「どうだった?夜は俺達に任せてもらえないか?」

「どうしても人手がいるときは起こして手伝ってもらうかもだけど、それ以外はゆっくりしてほしい!」


 戦闘を見ていた村長が口を開く。


「オーレン、アニカ。お前達の実力はわかった。夜の警護を頼んでもいいかのう?皆、異論はないな?」


 納得の表情で頷く村人達。


「昼間でもなにかあれば直ぐに起こしてくれ」

「怪我したら治すからいつでも言ってね!オーレン以外は!」

「なんでだよ!俺も治せ!」


 とりあえずの一笑い。その後、倒した魔物の死骸は他の魔物をおびき寄せてしまうから、できれば食べるなりして処分するのがいいと村長に伝える。


「う~む…。そう言われてもどう調理したもんかのぅ。儂らにはそういう文化がないぞい」


 すると、ウィーおばさんと複数の女性陣が声を上げた。


「村長。そっちは私らでなんとかするよ。魔物でも食料になるならあっても困らないし。アニカ。美味しい食べ方知ってるんでしょ?教えてよ」

「任せて!」


 女性陣は倒した魔物を運んでいく。どうやらアニカの家で調理するみたいだ。他の男性陣には家に戻って休むように伝えて俺は村の巡察を開始する。


 …と、解散して直ぐに声をかけられた。


「オーレン。久しぶりだな」

「ホーマおじさん。久しぶり」


 挨拶を交わしたホーマおじさんは、アニカの魔法の師匠でクローセで唯一魔法を使える村人。…といっても生活魔法だけ。ぽっちゃりして人のよさそうな中年。


「さっきのアニカの魔法を見て驚いた。この短期間でよくあれだけの魔法を…」

「アニカには魔法の師匠がいるんだ。優しくて凄い人なんだよ」

「いい出会いがあったんだな…。本当によかった」


 ホーマおじさんは昔から弟子のアニカに優しかった。きっと心配してくれてたんだろう。


「本人にも言ってやってよ」

「そのつもりだったけど、女性陣の勢いに押されて話しかけられなくてな」

「確かに。おばさんたちは変わらず元気そうだね」

「間違いない。絶対長生きするぞ。いずれ、クローセは女性だけの村になるかもな」

「聞かれたら殺されるかもよ…」

「内緒だぞ…」


 少しだけ他愛のない話をして別れた。結局、この日の夜は魔物に襲撃されることはなかった。



 ★



 夜の警護を終えた俺とアニカは、それぞれの実家で寝泊まりする。


 目を覚ましたとき外はもう夕方だったけど、家には誰もいなかった。まだ仕事をしてるのか。

 眠い目をこすって大きく欠伸をする。まだ半分寝ている身体を起こしたくて、台所に向かって水を飲む。すると、鍋に入ったいい匂いのするスープが目に入った。…昨日の魔物の肉か?


 一匙掬って口に運ぶと美味しさに驚く。よく考えると、昨日からまともに飯を食べてない。晩ご飯かもしれないけど1皿分は頂こう…と食べ進める。

 身体に染み渡る懐かしい味付け。まさにお袋の味。初めての食材を見事に調理できるなんて、やっぱり世の母親は凄いと感心した。


 満腹になって椅子に座ったまま寛いでいると家族が帰ってきた。親父と母さん、そして弟のアンディ。


「兄貴、起きたのか」

「アンディ、久しぶりだな。仕事お疲れ」


 家を出る前はよくケンカもしたけど、別に険悪なワケじゃない。年も2つしか違わず容姿は兄弟なだけあって似ているらしいけど俺にはわからない。


「兄貴もな。俺は見れなかったけどみんな凄いって褒めてたぞ」

「まだまだだけど、そう言われると嬉しい」


 久しぶりに兄弟で会話していると、母さんが訊いてくる。

 

「晩ご飯どうするの?作ってあるけど」

「ごめん。腹が減ってて先に食っちゃった」

「仕方ない。お前は昨日魔物しか食べてなかっただろう?」

「そうなんだよ」

「じゃんじゃん食べなさい!でも、教えてもらってよかった。魔物も意外に美味しいのね」

「だろ?食べないともったいないんだよ。埋める手間も馬鹿にならないし」

「今後は村の貴重な食料になりそうだわ」

「できれば獲れないほうがいいけどな」


 親父がニカッ!と笑う。


「今日は久々の一家集合だ。オーレン、もう一回晩飯食え」

「マジで?!」


 和気あいあいと夕食をとり、限界を超えて食べ続けた結果しばらく苦しんで動けなくなった。



 ★



 ところ変わって、その頃アーネス宅ではアニカが目を覚ましていた。


「ふぁ~!よく寝たぁ~!」


 久しぶりに帰ってきた我が家。懐かしの自分のベッドでぐっすり眠った。寝癖のついた髪も気にせず周りを見渡す。


「起きた?」


 フワリと微笑んで、優しく話しかけてきたのは、私より2歳年上のウイカお姉ちゃん。椅子に腰掛けて本を読んでる。

 栗色の長い髪に整った顔立ち。性格はおっとりしていて誰にも等しく優しい。私が男だったら間違いなく惚れてる自信がある。

 お姉ちゃんは誰もが認める美人だ。フクーベでもお姉ちゃん以上の美人に会ったことがない。タイプは違うけど、サマラさんならお姉ちゃんと同格といえるかもしれない。

 お姉ちゃんは生まれつき身体が弱くて、激しい運動ができないからあまり一緒に遊べなかった。それでも、小さな頃から優しくて面倒見のいい大好きな姉。


「お姉ちゃん、ただいま!久しぶりだね!」

「お帰り。昨日は大活躍だったみたいだね。父さんと母さんが興奮してたよ」

「そうかぁ~!嬉しいけどまだまだなんだよね!」

「私も見たかったけど、ちょっと調子が悪くて…。ごめんね」

「全然いいよ!しばらくいるからまだ機会はあるかもだし!」

「そうだね。楽しみにしておくよ。そんなことより、今日は一緒にご飯を食べようよ」

「いいね!もう、お腹ペコペコだよ」

「行こっか」


 連れ立って居間に向かう。


「アニカ、綺麗になったね。気になる人でもできたの?」

「お姉ちゃんの目は誤魔化せないかぁ~。っていうか、そんなつもりもないけどね!実はそうなんだ!」

「ふ~ん、気になる。あとで詳しく聞かせてもらおうかな」

「お姉ちゃんなら教えてもいいよ♪」


 楽しく会話しながら居間へと向かう。お父さんはまだ仕事なのか、居間にはお母さんしかいなかった。


「やっと起きたか寝坊助め!ご飯食べる?」

「もちろん!」

「魔物の肉、美味しいじゃん。今まで食べなかったのが悔やまれるくらいだね」

「仕方ないよ!毒とかありそうだもんね!私も冒険してなかったら今でも食べてないと思う!」

「けど、料理ができないアニカがよく調理法なんか知ってたね?」

「料理好きな人に教えてもらった!男なんだけどすっごく料理上手なんだよ!色々とお世話になっててさ!」


 お母さんとお姉ちゃんは、ニヤニヤしてる。


「なに?どうしたの?」

「べっつにぃ~。アンタがそんな顔するなんてねぇ~」

「ふふっ。お父さんには言わない方がいいかも」


 なんのこっちゃ?クスクス笑う2人を見て意味がわからず困惑した。

読んで頂きありがとうございます。

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