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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
95/724

95 思いもがけず帰省

暇なら読んでみて下さい。


( ^-^)_旦~

 フクーベのEランク冒険者であるオーレンとアニカは、受注できるクエストがない日や悪天候で冒険は危険だと判断した日は基本的に休日にする。今日はまさにそんな日だった。

 朝から受注できるクエストもなく、さらに天気は大雨と休日確定の1日。そんな日でもオーレンはやることがある。ウォルトから教えてもらった付与魔法を修練すること。



 アニカに教えてもらいながら、暇を見つけてはコツコツ繰り返し付与を試みて、時間はかかるけど付与魔法を発動させることができるようになった。

 ただ、いくら修練を重ねても効果を長く持続かない。1分と持たず効果が切れてしまう。


 全く操れなかった頃を思えば雲泥の差だけど、どうも最近行き詰まっている。教えてもらった通りに修練しているつもりでも、上達がいまいち。

 俺の限界なのか?…と首を傾げてもわかるはずもない。一度ウォルトさんに会いに行く必要があるな。窓ごしに見える、朝から降り止まない雨に1つ息を吐いて、アニカの部屋に向かった。


 ドアをノックすると、「はいよ」と軽く適当な返事が聞こえた。アニカは全く可愛げがない。まさに生意気な妹だ。少し待つとドアが開いて中から顔を出す。


「なにかあった?」

「なんだよ、その顔!?まだ仮装祭りには早いぞ?」


 アニカの顔は真っ白に塗られてる。眉毛は海苔のように太くしっかり描かれて、紅を引いた唇はいつもの倍はある。しかも、血のように赤く塗られて怖い。


「化粧の練習してたんだけど…。で、なによ?」


 コイツ……マジか…。化け物メイクかと思った。けど、これ以上ツッコんだら手が出るな…。


「ところで、付与魔法について訊きたいことがあるからウォルトさんのところに行こうと思ってるけど、お前も行くだろ?」

「いかいでか!私を置いていったらどうなるかわかるでしょうよ!」


 タダでは済まないのは間違いない。


「だよな。で、いつ行く?」

「今日に決まってる。思い立ったが吉日でしょ」

「無理だろ。外、見てみろよ」

「外がどうしたって?」

「いや…。大雨…」

「どこが?」


 首を傾げるアニカ。言われて窓から外を見る。


「嘘だろ……」


 さっきまで外は大雨だった…のに、嘘だったかのように晴れ上がっている。


「お前の気持ちは……雨雲すら吹き飛ばすのか?」

「当たり前のことを…私をなめるな!」

「じゃあ、久しぶりに行くか」

「よし!じゃあ準備するから10分後に!」

「了解」


 準備を終えた俺達は、戸締まりの確認を終えると早速出発した。


「そこのお2人さん!ちょっと待ってくれ!」


 歩き出したところで背後から声をかけられる。振り返ると飛脚らしき犬の獣人が立っていた。


「アンタ、オーレンか?」

「そうです」

「手紙を届けにきた。受け取りのサインをもらえるか?」

「ありがとうございます。誰だろう?」


 サインして手紙を受け取ると、裏に書かれた差出人を確認する。意外な人物で…。


「村長からだ。村を出てから手紙なんて初めてだな」

「気になるね。読んでから行こう」

「そうだな。わざわざ手紙なんて村でなにかあったのかもな」

 

 封筒を開けて内容を確認する。




 険しい表情のまま手紙を読み終えた。


「村に魔物が頻繁に現れるらしい。なんとか撃退してるけど、結構しつこいみたいだ。自警団も怪我人が増えて、大変だからできれば力を貸してほしいって」


 小さな村で結構な一大事だ。


「それは…早く行かなきゃ!」

「だな。クローセに帰るか」

「そうしよう!」


 …と、さっきの飛脚が再び通りがかる。アニカが駆け寄った。


「すいません。ちょっといいですか?」

「なんだ?嬢ちゃん」


 立ち止まった飛脚となにやら話してるけど、俺には聞こえない。話がまとまったようで、飛脚は笑顔で頷いてアニカが紙とお金を手渡すと、ペコリと頭を下げて戻ってきた。


「どうしたんだ?」

「なんでもない。行くよ」


 クローセに行くならと再び準備し直した。


 フクーベから故郷であるクローセ村に行くには、歩きだと丸1日かかる。かといって、馬車は月に一度の行商のときくらいしか出ていない。

 今日手紙が届いたということは、今日か若しくは昨日行商がフクーベに戻って来たはず。


 行くだけ行ってみるかと馬車の待合所へ向かうと1台の馬車が止まっていた。

 従者に聞くと、今日は大雨だからと予約を断ったが、急な晴天で補填のタメに誰か乗る者がいないか探しているとのこと。

 俺達にとっては渡りに船で、クローセ村まで乗せてもらえるか交渉すると快く了承してくれた。


 予期せず帰省することになったな。2人で馬車に乗り込む。


「ウォルトさんに会いに行く予定が狂ったけど、大丈夫か?」

「クローセが大変な時にそんなこと言ってられない。私はそこまで色惚けしてない」

「そうか」

「みんな、無事だいいけど…」

「そうだな…」


 村に魔物が現れること自体は珍しくない。でも、頻繁に現れるようなことはなかったし、自警団で撃退できるような魔物しか現れなかった。

 なにか異変が起きているのか。それとも偶然なのか。いずれにしても、生まれ育った大切な故郷の力になりたい。



 ★



「なんじゃこりゃ?」


 馬車に乗ること5時間。到着したクローセ村の入口に立つ。


 木製の門柱には、ようこそ クローセ村へ』の看板。ちなみに、元々あるのは柱だけで門扉はなかった…はずだけど、魔物の侵入防止か横向きに板が雑に張られてる。


「即席で塞いだ感じだね」

「だな」


 ちなみに、村は全周を木の柵で囲んでる。大した柵じゃないけど、意外に獣や魔物の侵入を防ぐのに役立っていて、襲ってくる獣や魔物の勢いを殺せるだけで防衛しやすくなるから。

 板の隙間を縫ってクローセに入った。歩きながら見渡しても、村の風景に変わりないように見える。


 唯一いつもと違うことといえば…。


「まだ明るいのに誰もいないな。畑にも出てきてない」


 いつもなら外で畑仕事をしていたり、大工仕事をしている時間。


「もしかして避難してる?かなり頻繁に襲ってくるとか」

「わからない。とりあえず、村長のとこに行ってみるか」

「いいかもね。まずは事情を聞かなきゃ」

「そうしよう」


 村長の家は村の中心部にある。元々人口が少ない村だけど、神隠しにでもあったのかと思うくらい静かだ。とにかく、村の状況を把握するべく村長の家に向かう。


 家に辿り着いて、緊張の面持ちで玄関のドアをノックしてみても反応がない。ノブを回してみるとすんなり開いた。


「村長、いるのか?」

「傷付いて倒れてるとかないよね…?」


 アニカの言葉に顔を見合わせて、急いで家の中に入って呼びかける。


「村長~!いるかぁ~!」

「村長~!いないのぉ~?」


 幼い頃から何度となく来ている家。勝手知ったる俺達は、勝手に入って歩を進める。数年前に奧さんを亡くした村長は変わらず1人暮らしのはず。

 すると、寝室のベッドでうつ伏せに横たわる村長の姿が目に入った。慌てて駆け寄る。


「村長!大丈夫かっ!?」

「大丈夫っ?!」


 テムズ村長は、80歳を超えてる好々爺。見た目は物語の仙人みたいに長い髭を蓄えて、ツルっと禿げた頭に皮と骨しかない瘦せた体型。軽々と仰向けにひっくり返した村長の頬を軽く叩いてみる。


「村長!しっかりしろ!」


 見た目には外傷はないみたいだし、しっかり息もある。ただ、ぐったりして動かない。


「オーレン。ちょっとどいて」


 俺を押し退けたアニカは、起きる様子がない村長を引き起こしてベッドに座らせると、右手を振りかぶった。


「村長っ!!起きてっ!」


 パパパパパパパパパパッ!


 高速往復ビンタが炸裂する。倒れる隙を与えない速さ。ビンタし続けながらアニカは懇願する。


「村長っ!起きてっ!!死んじゃやだよっ!」

「…儂…。起…き……」

「おい、アニカ。村長起きた…」

「まだ逝くのは早いよ!頑張って!」

「ア……ニ…… や…め…」

「奥さんが亡くなるとき「ゆっくりしたいから、しばらくこっちに寄こさないで」って頼まれたのっ!逝っちゃダメ!」

「なっ………」

「昔…1本だけ残ってて大事にしてた髪の毛を寝てる隙に抜いたのは私なの!謝らせてよ!村長ぉ~!!」


 最後にバチーン!と強烈な一撃をお見舞いすると、村長はきりもみしながらベッドに倒れた。


「アニカ!」

「なによ?!もう1回やる!」


 涙目で訴えてくるアニカの肩を掴んで制止した。


「村長もう起きたからやめとけ」

「なに言ってんの?!意識ないじゃん!」

「最後のビンタのせいだ。村長は直ぐに起きてたぞ。たまには落ち着いて俺の話を聞けよ」

「…………マジで?」

「マジだ」


 村長が意識を取り戻すには、しばしの時間を要した。



 ★



「まったく酷い目にあったわい…。アニカ。人の話はちゃんと聞かんといかんぞい」

「ごめん」


 素直に反省するアニカを見て、ホッホッ!と村長は笑う。


「ちょっと見ない内に、治癒魔法を使えるようになっとるとは。大したもんじゃ」


 真っ赤に腫れあがっていた両頬はアニカの『治癒』ですっかり元通り。


「俺達はフクーベで師匠に巡り会えたんだよ」

「そうなの!凄い師匠なんだよ♪」


 ウォルトさんに出会ってなければ、村長を回復させることもできなかった。


「よかったのう。…して、手紙を読んで来てくれたのか?」

「そうだよ。読んで直ぐに来たんだから。ところで、村に誰もいないけどどうしたの?」

「そうじゃった。それはな……」


 村長はまっ白な髭に触りながら語り始めた。

読んで頂きありがとうございます。

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