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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
73/732

73 巨鳥墜つ

暇なら読んでみてください。


( ^-^)_旦~

 ウォルトは巨鳥に対して幾つかの魔法を放つ。


『氷結』や『疾風』、それに『火炎』。どれも軽々と避けられてしまう。さすがは鳥類。空中の機動力では相手が上。時折反撃に遭うものの、ボクらもそう易々と攻撃は受けない。

 

 戦闘は膠着状態に陥っていた。全く地上に降りる気配のない巨鳥相手では、マードックの出番はないと思っていたけど…。


「おい。アイツは魔法みてぇなのを使うよな?」

「そうだな」

「ならよ、逆に普通の攻撃が有効なんじゃねぇか?」

「一理あるな。でも、空を飛ぶ相手に攻撃できないだろう」

「なんでもいい。アイツに魔法を撃ってくれや」

「わかった」


 コカ・トーリスに向けて『氷結』を放つ。やはり躱されてしまったけど「グエェッ!」と声を上げた。

 巨鳥の腹部に大きな石が食い込んでいる。いつの間にかマードックが投擲したみたいだ。


「ハハッ!効いたか?オラオラオラァァッ!!」


 マードックは足元に落ちている瓦礫や石を連続で投げつける。その内の1つが巨鳥の頭部を捉えて巨体がグラついた。


「ウォルト!今だっ!」

「わかった!『破砕』」


 衝撃波が巨鳥を直撃する。大きな衝突音をさせて、巨鳥の羽根が落葉のように舞ったけど墜落には至らなかった。

 距離がありすぎるし、魔法よりもマードックの投擲の方が効いているような気がするな。目的でもある巨鳥の羽根は、地面に落ちると数秒間で消滅した。


「墜ちないか」

「しぶてぇな。……いいこと思い付いたぜ!今から俺の言う通りにやれ!」


 マードックの説明に顔をしかめて聞き返す。


「できるけど、お前は大丈夫か?」


 ちょっと無茶な気がする。


「お前がいい感じに調節しろ。できんだろ」


 要望通りに手甲に付与した魔力を解除して、マードックはボクの前に立つ。


「準備はいいか?」

「いつでもいい」


 マードックは巨鳥に向かって最短距離で駆け出した。巨鳥が再び口に魔力を集中させ始める。全力で疾走するマードックを必死で追走する。気を抜くと置いていかれる速さ。 


「オラッ!いくぜ!」

「いいぞ!」

 

 最接近したマードックは巨鳥に向けて跳び上がる……が、当然距離が足りない。ボクは後ろから手を翳した。


『破砕』


 威力を調節して打ち出した衝撃波がマードックの背中を押すと、拳を強く握りしめたまま巨鳥に向かって突き進む。巨鳥の口に魔力が集中し、今にも魔力を吐き出しそうだ。


「食らえっ!オラァァァ!!」


 マードックが魔物の腹部に拳を打ち込むと腹が捻れた。躊躇ないパンチの威力に炎を吐き出せず身体が折れた巨鳥。


「グェェェ!!」


 次の瞬間、巨鳥は怒りの表情で翼をマードックに叩きつけた。


「ぐぉっ…!」

「マードック!」


『風流』で落下の勢いを止めようとしても完全に勢いを殺しきれず、マードックは背中から地面に叩きつけられた。


「ガァッ…!!」


 素早く駆け寄って『治癒』をかけようとするが拒否される。


「魔力がもったいねぇ!風だけでもだいぶ助かったぜ」

「頑丈だな…」

「感心してる場合じゃねぇぞ。あの鳥公、まだなにかやるつもりだ」


 巨鳥は羽ばたきながら、両翼に輝く魔力を纏っていく。翼を大きく広げて羽根を高速で発射してきた。

 全ての羽根が魔力を纏っている。『魔法障壁』を展開して防ぐと、視界を埋め尽くすほどの羽根が障壁に突き刺さり、羽根をじっくり観察する。


 降り注ぐ羽根の雨が止むまでに、かなりの時間を要した。障壁を埋め尽くした羽根を見て呆れたようにマードックが漏らす。


「とんでもねぇ鳥だな。全然美味そうじゃなくなったぜ」

「最初から美味しそうに見えないだろ。それに単純に強い。けど、わかったこともある。アイツを墜とすぞ」

「マジで言ってんのか?」

「もちろん本気だ。お前に頼みたいことがある」


 頼みたいことを伝えると、マードックは了承してくれた。


「いいぜ。やれや」

「頼む」


 巨鳥を見上げて呟く。


「そろそろ地上に降りてきてもらう」


 黒い魔力を身に纏い、精神集中して手を翳す。


黒空間(ニグラ)


 詠唱と同時に巨鳥の右翼のつけ根付近に漆黒の球体が現れた。同時に「ゲェェェッ!」と巨鳥が苦しむような鳴き声を上げる。


 球体が縮むようにして消滅すると、翼の付け根は球体の形に抉られて今にももげそう。巨鳥もさすがに片翼では上手くバランスを保てず落下を始めた。


「なんだ今のはっ?!見たこともねぇ魔法だ」

「球体が出現した場所を空間ごと抉り取ることができる闇魔法だ。狙ったところに出現させるのが難しいけど今回は上手くいった」

「必殺じゃねぇか…。誰も躱せねぇぞ」

「精神集中するからバレたら躱されて終わりだ。相手が魔物だから上手くいった。あとは頼む」

「あぁ。任せろや!」


 マードックは巨鳥の落下地点に向かって疾走する。地に墜ちた巨鳥は、フラフラしながら迎え撃つ態勢をとるが、地上なら力も機動力もマードックの方が上。

 片翼でろくに反撃できない巨鳥を相手に、さっき頼んだ『しばらく倒さない程度に殴り続けて足止めしてくれ』という要求に応えてくれている。


 よし。今の内だ。


 抜き足差し足でこっそり巨鳥の背後に移動して、気付かれぬように羽根を抜く。1本、2本と巨鳥の動きに合わせて素早く抜いてはローブのフードに入れる。


 殴られ続けた巨鳥は息も絶え絶え。さすがにマードックも殴り疲れてるな。もう充分だ。


「マードック!もういいぞ!」

「やっとか!!…じゃあなクソ鳥公!!テメェは食わねぇよ!」


 跳び上がって巨鳥の頭部に渾身の一撃を叩き込むと、目をグルンと回して崩れ落ちた。数秒後、魂が散るようにして巨体は霧散する。


「やってやったぜ!」


 さすがに疲れたのかマードックも座り込んで大きく息をする。『精霊の加護』を使って疲労と傷を癒やした。

 リスティアが使っていた不思議な力を模倣した魔法。使ってみると体力を回復する効果が『治癒』より高くて重宝してる。


「お疲れ。さすがだな」

「けっ!ほとんどお前のおかげだろうが…!マジで助かったぜ」

「大袈裟だ。あとは…採取した羽根の錬成が上手くいけばいいけど」

「まぁ無理だろ。消えてなくなるモンをどうしろってんだ。そもそも、コイツがそうなのかもわかんねぇしな。ガハハッ!」

「違ったらお前のせいだ。とりあえず戻るか」

「お前……魔力は?」

「さすがに戻らないとマズい」

「…そうか。なら帰ろうぜ」

「あぁ」


 来た経路を戻っている途中で何匹かの魔物に絡まれたけど、軽く蹴散らして無事に帰還した。


 ダンジョンを脱出すると周囲は既に薄暗くなってる。足早に帰路につくことにした。『獣の楽園』を離れようとして、ボクはやっぱり入口から優しい波動を感じた。

 


 ★



 数日後。またも酒場に集まったホライズンの面々。


 なにやらマードックから話があるとのことで、集まった次第。軽く乾杯したあとシュラが切り出した。


「急にどうしたんだよ?深刻な話か?」

「違ぇよ。お前らにちっと見せたいモンがあってな」

「見せたいモノ?」

「コレだ」


 マルソーは目が丸くなってやがる。


「…まさか、コカ・トーリスの羽根か…?文献の通りだが…。どうやって?」

「詳しくは言えねぇが、譲ってもらった」

「言えない?商人じゃないのか?」

「ソイツは鳥を倒して手に入れたみてぇだ。買ったら高ぇのか?」

「おそらく、この間のクエスト報酬の5倍はする。もっと高いかもな」

「そうかよ。やるから魔道具作れや。パーティーのタメになるんだろうが」

「いいのか?」

「俺が持っててもしゃあねぇ」


 マルソーに手渡す。


「マードック。恩に着るぞ」

「礼はソイツに言っとく。ところで、1本で足りんのか?」

「どういう意味だ?……まさか」

「まだあるぜ」


 マルソーは呆れたような顔。唾を飲み込んでゆっくり口を開いた。


「1本で充分だ…。お前の知り合いは…凄い魔導師だな」

「なんだと…?」

「お前達は知らないと思うが、コカ・トーリスは倒すと羽根が消滅する」

「へぇ。じゃあ、どうやって採るんだよ?」


 シュラの意見はもっともだな。俺は知ってっけど。


「生きている内に羽根を拾うなり抜くなりする必要があるが、それだけじゃダメだ」

「なんでだよ?」

「コカ・トーリスの羽根は身体から離れて数秒後に消滅する。羽根が魔力で形成されているからだ」

「翼に付いてるときはずっと魔力が流れてるから大丈夫…ってことか?」

「そうだ。つまり、この羽根は抜けたあとずっと魔力を保っているから原型を留めてる」

「凄いことなのか?」


 ハルトの言葉にマルソーは頷く。


「マードックがどこで貰ったか知らないが、今でもずっと魔力が途切れることなく巡っている。長時間の『保存』を使える魔力量と付与した技量。どちらも並の魔導師では有り得ない」

「なるほどな」

「通常なら複数の魔導師で魔法をかけながら加工するまで状態を保つのが普通だ。だが、この羽根に施した『保存』からは、純粋な……1人の魔力しか感じない。上手く言えないが、受け取ったときに感じた洗練された魔力。付与したのは素晴らしい魔導師だと予想できる」


 へぇ。魔導師ってのは、そんなことまでわかんのか。大したもんだがよ…。


「残念ながらちょっと違うぜ」

「違う…?なにがだ?」


 ちっとだけ教えてやるか。


「ソイツは魔導師じゃねぇ。魔法は使えるけどな。ソイツの言葉を借りるなら「自分が使える魔法は誰でも使える。大袈裟だ」。ガハハッ!」

「そんなバカな…」



 口を開けたままのマルソーと不思議そうにマードックを見る2人。そして、愉快そうに酒を煽るマードック。

 こうして、Aランクパーティー【ホライズン】は更に力をつけて、ギルドで確固たる地位を築くことになった。

読んで頂きありがとうございます。

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