713 姫と白猫の冒険
「今回は希望に添えない」
動物の森。
ウォルトの住み家を昼間からリスティアが訪問中。
理由はプリシオンからの要望をサバトに伝えるよう交渉担当がナイデルから依頼されたこと。珍しく無条件で外出が許可され、「早急に」との要望で空間魔法によりひとっ飛び。
リスティアは甘い花茶と菓子を頂きながらウォルトにプリシオンの意向を伝え、即答で断られた。
「次から次へと蛆のように湧いてくる奴らと、話す必要性を感じない」
静かだけど相当怒ってるね。
「どうしても会うのは無理?」
「無条件に攻撃していいなら会うだけ会ってもいい。どんな事態が起こっても放念して、罪に問われない確約をくれるなら」
そうなると、使者は高確率で全滅だ。この譲歩も、私がお願いしてるからこその提案だってわかる。
「もう一度フィアットが来たら、こっちからプリシオンに向かう。情報は揃った」
「そっか」
やりたい放題暴れるつもりだね。今回は絶対に無理ってわかった。完全に頑固モードに入ってる。お爺ちゃん、ちゃんと部隊を統制してよ。
「ウォルト、昔より気が長くなってない?」
「初めて言われた。なんでそう思うんだ?」
「だって、何度も標的にされてるのに、まだ直接行動に移してないから。シャノ達のときは早かったよね」
「そういう意味なら長くない。シャノ達のときはとにかく許せなかった。怒りの度合が違う。ボク自身が標的ならこんな感じだよ」
違う。ウォルトは間違いなく我慢強くなった。きっと色々な人と交わってるからだね。最近では怒りを内に秘めて、絡んできたら一気に爆発させてる。
「リスティア。余計なお世話かもしれないけど、フィアットの情報いるかい?」
「どんな?」
「操る技能とか魔法、戦術とか装備も。ボクが出会った奴らを観察して気付いたこと限定になるけど」
「貴重な情報だね」
敵国じゃないけど、暗部や騎士にとっては知っておいて損はない情報だ。自分達の鍛錬に活かせるかもしれないし。
なにより、明日は敵になるかもしれない。ウォルトは見越して提案してくれてる。敵認定してるから特になのかな。
「暗部は知ってると思うけど」
「全ては網羅できないよ。ゆっくりでいいから簡単に資料に纏めてもらっていい?」
「いいよ」
「ねぇ、ウォルト。私がいつもお願いするの……疎ましく思わない?」
外交問題一歩手前だったり、明らかに面倒なことをお願いしてばかり。しかも、ウォルトに我慢を強いる要求が多い。
「疎ましくない。嫌なことは断るし、なんでも言ってほしい」
「ならいいんだけど」
「リスティアは潔く退いてくれるからね。今回もそうだ。情に訴えたり策を講じない。念押しするくらいで、わかりやすくていい」
「ウォルトに小細工は通用しないから。逆効果だし意味ないよ」
私はウォルトを徹底的に騙して操る自信がある。ただし、やるなら相当な覚悟が必要。バレたらタダじゃ済まないし、報復の標的は私に限らない。そもそも騙さないけど。
「どんどん偏屈になってる気はする」
「そうなの?」
「怒ることが増えた気がする。自分以外のことで」
「へぇ~。ウォルトも変わってるんだ」
「多少はね。大木みたいに少しずつ変化してるんじゃないかな」
「わかるよ。私もセクシーになってるし」
「……どうかな」
「ヒド~い!毎回認めないのはなんで?!」
「いつかはそうなるとしても、まだ早いって。リスティアが大人に向かってるのは間違いないけど、妖艶かって言われると…」
「もういいよ!」
拗ねるとウォルトは苦笑い。困らせることができるのも友人の特権。
「プリシオンの国王…ヴァニシウスっていうんだけど、悪いお爺ちゃんじゃないの。私も可愛がってくれて」
「リスティアは可愛いから、気持ちはわかる」
こういうことはさらっと言う。完全に子供扱いしてる証拠。
「今回の件に国王は絡んでないみたい」
「わかってる。一応ボクに会いに来た理由を確認してるから。逆恨みはしたくない」
「わざわざ外国から来て絡んでくる意味がわからないね」
「そうなんだ。サバトを大魔導師に仕立て上げて、なにが気に入らないのか挑んでくる。迷惑だし、いい加減にしてほしい」
武闘会やラードン討伐で確立させたのはウォルト本人だけど。
「ウォルトは外国人が嫌いになった?」
「なったよ」
「ははっ。誰のせい?」
「世間を騒がせたボクのせいだ」
自覚はあるんだね。
「ねぇ、ウォルト。今日は門限を言い渡されてないから、ゆっくり帰りたいんだけど」
「いいよ。なにかやりたいことがある?」
「ん~……冒険!」
「え?」
「魔法を使えるようになったから行ってみたい」
ウォルトがくれた肌着は、魔法が使えるだけじゃなくて、とにかく涼しいのと濡れても直ぐに乾くからいつも着てる。
「そうだ。私にくれた肌着、お母様とお姉様の分も作ってもらえないかな?正装するともの凄く暑いの。汗かいて大変だから」
「いいよ。サイズを教えてもらえたら」
「私じゃなくて…王妃と王太子妃のサイズを知りたがるなんて…」
「他意はないぞっ!」
王城御用達の服飾屋から訊いておこう。お父様やお兄様はあてにならない。
「それはさておき、冒険どう?」
「構わないよ。目的があると行き先が決めやすいけど」
「ウィリナ姉様の誕生日が近いから、なにかあげたいなぁ。花が大好きなんだけど」
「花か……じゃあ、彼処に行ってみよう」
ウォルトは「直ぐにできる」とお弁当を作り始めた。どこに行くんだろう?
準備を終えたウォルトに背負われて動物の森を移動すること1時間くらい?
小さな池に到着した。
「着いたよ」
「すっごく綺麗な池だね」
水が澄んで空のような透明度。結構水深がありそうなのに底が見えてる。湧き水が豊富なのかな?
「今から冒険するけど、準備はいい?」
「うん」
池で冒険?…と、ウォルトは私を抱きかかえる。そして、池に向かって跳んだ。
「ウォルト?!」
「大丈夫」
息を止めて目を瞑る。……って、あれ?水に入った感触がない…。
『リスティア。目を開けて』
ウォルトの声が頭に響いて、言われた通り目を開けると、やっぱり池の中。2人で少しずつ沈んでる。
日光が差し込んで光が揺らめく水中は、言葉にならない美しさ。小魚が空中を泳いでいるかのようで幻想的。不思議なことに、息ができるし身体も濡れてない。ウォルトの魔法だ。
『驚いてくれた?』
ニャッと微笑むウォルト。子供みたいな悪戯心が嬉しい。
水深はかなり深くて、相当沈んでも底に着かない。浅く見えるような錯覚なんだ。底に着いたらウォルトが手を翳して、急に魔法陣が現れる。
『行こうか。手を』
差し出された手を握ると、ウォルトが魔法陣に触れた。あっという間に洞窟のような場所に移動してる。
「もう話せるよ」
「ココはどこ?」
「『緑の箱庭』っていう名のダンジョンなんだ」
「水中に入口なんて凄いね。普通気付かないよ」
「冒険者は凄い。あらゆる場所に足を延ばして、冒険の記録を残してる。好奇心と勇気の賜物だ」
「本当にそう」
力を合わせて新境地を切り拓いていく。憧れるよ。
「ボクはこのダンジョンで冒険者に会ったことがないし、ちょうどいい」
「もしいても、私を変装させる気でしょ」
「正解。少なくとも近くには誰もいない。確認しながら進むけどね。魔物もいるから油断せずに行こう」
「うん」
「今日のボクとリスティアはパーティーだと思ってる。護衛じゃない。力を合わせて進もう」
「わかった!」
ウォルトは私に武器のダガーを渡してくれる。重そうな見た目に反してとても軽い。扱いやすさ重視で選んだみたい。
「魔物はさほど強くないけど、無理は禁物だ」
「うん。絶対に油断しない」
「早速出現したよ」
前方から手足が生えたキノコのような魔物が現れた。顔があってちょっと可愛いと思うのは不謹慎かな。
「マタンゴだ。2匹いるから、片方は任せていいかい」
「了解!」
恐れることはないんだ。ウォルトはできないことを頼んだりしない。四の五の言わず信じてやるだけ。冒険に戦闘はつきもの。望んだのも私だ。
ウォルトと一緒に駆け出した。
★
「ふぅ~。ちょっと休憩したいかも」
「昼ご飯にしよう」
ウォルトが作ってくれた魔法の椅子とテーブルでお弁当のパンを食べることに。具沢山で美味しそう。
「美味しい!」
「それはよかった」
いつだって外れなし。ゆっくり味わって頂く。飲み物には蜂蜜入りの紅茶。
「ごちそうさま!お腹いっぱい!いつもちょうどいい量だよね」
「食べられる量ピッタリだと、食べきったとき爽快だと思うんだ。残り物も出ないし」
「さすが!ちょっとゆっくりさせてもらおうかな……そうだ。ウォルトはコミリオンできる?」
「できるよ」
「お腹が落ち着くまでやってみない?」
「いいよ」
コミリオンは盤と駒が必要だけど、なくても盤面を地面に書いたり駒も石で代用できて、どこでもできる手軽さが人気の理由。多くの国民が親しめて裾野が広いゲーム。
「……参った」
「やった!私の3連勝!」
「完敗だよ…。強いなぁ…」
ウォルトは悔しそう。負けず嫌いだもんね。
「私、コミリオンで負けたことがないの」
「え?一度も?」
「うん。ルールを覚えてから1回も負けてない」
「それは…生まれてからずっとってことだろう?」
「えへん!」
「凄いなぁ」
なぜかコミリオンが得意で、4歳で覚えてから負けなし。お父様やお兄様は驚いてたっけ。今では相手してくれない。
「忖度されてたと思うけど、カネルラで最強って云われてる人にも勝ったよ」
「手加減なしだと思う。ボクは勝てる気がしなかったよ。師匠みたいだ」
「ウォルトの師匠と勝負してみたいな!」
「リスティアならいい勝負ができるかもしれないね」
驚いてくれて嬉しい。これ以上ないってくらい。私が最も凄いと思う人物だから。ウォルトも強い。戦術を毎回変えて、揺さぶりに動じず劣勢でも最善を探りながら粘り強い。お世辞じゃなくて、今までの相手で5本の指に入る。
「また勝負してくれないか」
「いつでも受けて立つよ!」
お腹も落ち着いて冒険再開。目的を聞いてないけど、余計なことは考えず一緒に冒険できることを楽しもう。
このダンジョンは、植物系の魔物のみ出現するみたいで、木や花、キノコや野菜の魔物まで出現する。珍しいんじゃないかな。
動物系と違って動きが遅いから、私でも焦らず攻撃したり躱したりできて助かる。ウォルトの的確な助言もあって冒険してる実感しかない。あえて構わないようにしてくれてる気遣いを感じてたり。
「リスティアは思ってたより動けるね」
「舞踏とかで鍛えてるから!大したことないけど!」
実際はちょっと疲れてる。でも、それ以上に楽しくて動ける感じ。
「そろそろ目的地だよ」
「わかった」
通路を進むと急に広場に出た。
「凄い。土が見えない」
草原のように広いスペースで、色とりどりの花が咲き誇ってる。密度が凄くて地面が見えない。まさに緑の箱庭。ウィリナさんに見せてあげたいなぁ。もの凄く喜びそう。
奥には大きな木が生えてる。もの凄く幹が太くて、対照的に枝は短い。巨大な樽から枝が生えてるみたいな。
「あの木はパヤーバオバブ。素材が採れるんだ」
「魔物?」
「特殊な植物だね。攻撃はしてこないよ」
「私も採取を手伝う」
「頼む」
ウォルトから採取の仕方を教わる。結構シビアだけど、私にできるかな…。
「勝負は一瞬だけど、焦らずに正確さを心掛けてくれ」
「わかった」
「リスティアならできるよ」
そんな風に言われたら、成功させるしかないよね!ウォルトはパヤーバオバブの傍に立って私は集中を高める。
「いくよ」
「……いいよ」
ウォルトが木に手を添えると、砲撃を受けたのかってくらい幹が大きく揺れた。青々とした枝から一斉に葉が落ちて降り注ぐ。手を翳したまま集中する私の前に…1枚だけ色の違う葉が舞い落ちてきた。
「リスティア!」
『炎』
魔法を放つと色の違う葉に命中した。葉は燃え上がり水滴へと変化する。ウォルトが素早く駆け寄って硝子瓶で受け止めてくれた。
「成功したよ」
「やった~!よかったぁ~~!」
「見事な魔法だった」
「狙い通りの場所にウォルトが風魔法で上手く誘導してくれたからだよ!あの中からよく探せるね!」
「なんとかね。それでも落ちる葉に命中させるのは難しい。やり遂げたね」
「うん!ウォルトもお疲れさま!」
「この素材は『トネリコの涙』っていうんだ。家に帰って加工に使いたい」
「楽しみ!」
凄く疲れたけど楽しかったなぁ。ウォルトはどんなモノを作るのかな。
「2人で考えよう。リスティアの意見を聞かせてほしい。ボクはウィリナさんのことを知らないから、頼りにしてるよ」
「任せて!」
住み家に帰ってからも楽しいこと間違いなしだね!ゆっくりお風呂も入ろうっと!
「ねぇ、ウォルト。帰りに池で泳いでいい?知識はあるけど泳いだことないの」
「そうなのか。水がかなり冷たいけど大丈夫?」
「大丈夫!でも、水浴びした私を見てウォルトが興奮しちゃ…」
「しない。平常心の権化だ。1つも問題ない」
「最低の親友だ!」
笑い合って下らない会話をしながら帰路についた。
★
迎えた王太子妃ウィリナの誕生日。
カネルラ王城では揃って夕食を終えた王族達が各自の部屋へと戻るところ。王子ストリアルは妻ウィリナ、息子エクセルと共に静かに誕生日を自室にて祝うつもりだったが…。
「お兄様!ウィリナさん!ちょっと待って!」
廊下で俺達を呼び止めたのはリスティア。
「どうした?」
「ウィリナさんにプレゼントを渡したいの」
リスティアは包装された小箱をウィリナに手渡し、なにやら小さな声で耳打ちしてる。ウィリナは驚いた表情。
「誕生日おめでとう!皆で一緒に見てね!じゃ!」
リスティアは走り去った。
「有り難いな」
「はい…。中を見るのが楽しみです…」
「そうか」
俺も部屋で見せてもらうか。
「お兄様!」
遠くからリスティアが呼ぶ。
「どうした?」
「見ても怒らないでね!もし怒ったら、器が小さすぎるノミ王子って呼ぶから!」
今度こそ走り去った。
「なんなんだ?意味がわからない」
俺の誕生日ならいざ知らず、ウィリナの誕生日プレゼントで悪ふざけの類はないと思うが…。
部屋に戻ると、ウィリナは落ち着かない様子。
「ウィリナ?どうした?」
「あの……リスティア様から頂いたプレゼントを開けたいのですが…」
「構わないぞ」
「ありがとうございます!」
凄まじいスピードで包みを剥がして箱を開けた。ウィリナを素早いと感じるのは初めてかもしれない。
「……コレはなんだ?」
箱の中には組み立て式の三脚と、ぶら下げるランプが入っている。そして、幾つか色違いの細長い水晶が綺麗に並べられていた。
「味のある作りのランプとは意外な贈り物だ」
「……ストリアル様。私の念願が叶うときが参りました…」
「なに?」
ウィリナはテーブルに組み立てた三脚を立て、フックにランプをぶら下げた。蓋を開け、水晶を中にセットして再び閉める。
そしてエクセルを抱き上げた。
「ストリアル様。こちらのレバーを下げて頂けますか?」
「コレか?」
ランプに付いている小さなレバーを指で引き下げると…。
「きゃっは~!」
部屋が暗くなり、一面に色とりどりの花が咲いた。
「なんだ……コレは……」
床が……淡い光を放つ花で埋め尽くされている…。まるで花の絨毯…。ほんの僅かに…吹いてもいない風に揺れる美しい花々…。実際に咲いているようにしか見えない…。
「素材を採取して作って下さったそうです…。リスティア様の依頼により……花を好むからと……この魔法のランプを……」
「魔法のランプ…?」
「この日を待ち望んでおりました…。私は…共に見たかったのです…。心揺さぶられる美しい魔法を……ストリアル様と…」
以前聞いた言葉だ…。つまり…。
「このランプを作ったのはサバトか…?」
ウィリナはコクリと頷いてランプに水晶を追加すると、空中に光で輪郭のみを象った花が浮かび上がる。カラフルで美しい蝶が優雅に飛行しているかのよう。
「言葉がありません…。この魔法を私だけのタメに……。ストリアル様……いかがですか…?」
「……美しいな」
他に言葉がない。なんて魔法を操るんだ…。リスティアが祝宴に招聘を求めたのも……今なら理解できる。だが、なぜ俺が怒ると思ったのかわからない。
ふとウィリナに目をやると、花の放つ淡光で薄ら熱を帯びる視線が見えた。頬を赤らめ、悩ましげに息を吐く。
なるほどな…。こういうことか。
サバトはランプにセットする水晶毎に異なる映像が映し出されるよう細工していた。森の風景に移ろいゆく季節折々の草花や、ウィリナの母国にしか咲かない稀少な花も魔法で咲かせた。この部屋はまるで異空間。
ウィリナは1つずつじっくり堪能し艶やかな吐息を漏らす。その度に俺は憤慨しそうになる気持ちを抑えた。
抑えなければ妹とウィリナに小さい男だと思われてしまう。ノミ王子だと…!
サバトがウィリナに好意を持っているはずもない。逆も然り。理解しているのに、この表情は俺に向けられるべきだという嫉妬が…。
腹立たしさと、素晴らしい魔法に対する賞賛が混ざり合って、知らない感情が生まれた夜。
翌朝、食後にリスティアを廊下で捕まえた。
「リスティア。俺は小さくなどなかったぞ」
「なんの話?プレゼントのお礼かと思ったのに」
「ぐっ…。ウィリナは心から喜んでいた。感謝する」
「どういたしまして。私とサバトの自信作だよ」
「サバトに礼を伝えてくれ。見蕩れて言葉もないくらい喜んでいたと」
「言っておくね。でも、急ごしらえなのに大袈裟だって言われる」
「あり得ない。製作に相当な時間がかかったはずだ。対価も相当だったろう?」
他国の王族に贈呈しても恥ずかしくない逸品だ。リスティアが無茶な要求をされていなければいいが。
「兄様はまだわかってない。私は一緒に作ったから断言できるの。対価は一切なし」
「そんなはずはない」
「あえて言うなら、あのランプの動力が私の加護の力ってことかな。使い続けるには私が頑張ることが条件。じゃあ、作法の稽古があるから行かないと」
笑顔のリスティアは走り去る。
…いかに親友でも無償などあり得ない。俺の知る魔法は、人を感動させ、笑顔にすることなどできない。この目で見たからこそ、サバトの魔法には何物にも代え難い価値があると実感できた。ウィリナ、レイ、そして母上すら虜にしたのも頷ける。
……ふと気付く。
そうか…。サバトにとってあの程度の魔法は凡庸で、過剰に反応することは理解が足りない証拠。現実を受け入れる器量がないと言える。
リスティアの真意であり、サバトの魔法に怒るも狭小、褒めるも狭小。固定観念を破壊しなければ理解できはしない。俺には柔軟な思考が不足しているのだろう。
修正には少々時間がかかりそうだな。




