702 爺の傲慢
カネルラ王城の執務室で、国王ナイデルが手紙に目を通している。
読み終えて指示を出す。
「カザーブ。すまんが、リスティアを呼んでくれぬか。其方にはしばらく書類の整理を頼みたい」
「かしこまりました。そのように」
1時間ほどしてリスティアはやってきた。格好からすると、舞踏の稽古中だったようだな。
「陛下に御拝謁を賜り、王女リスティア光栄に存じます」
見事なお辞儀。王族の礼儀を見せつける愛娘。
「余所余所しい真似はよせ」
「だよね。急にどうしたの?」
最近、我が娘は俺のことを友人だと勘違いしているのではなかろうか。リスティアは親族にも国民にも分け隔てなく常に同じ態度だが、昔より顕著になっている気がする。
「少々話がしたい。サバトについてだ」
「長くなるなら、先に水を飲んでいい?喉が渇いてて」
「いいだろう」
メイドを呼んで冷たい水を淹れてもらう。喉を潤したリスティアが口を開く。
「もしかして、またプリシオンから手紙が来たの?」
「お前は本当に勘がいいな」
「お爺ちゃんの行動はなんとなく読めるよ」
先代カネルラ国王である俺の父親は、リスティアが生まれる前に亡くなっていて肖像画でしか知らないはず。その代わり、懇意にしていたヴァニシウス国王が数回カネルラを訪問された際、非常に可愛がって頂いた。まるで本当の孫かのように。リスティアも懐いて、それ以来「お爺ちゃん」と呼んでいる。
「プリシオンでまた貴族が不審死を遂げた。直前にサバトに接触を図った形跡があると」
「そうなんだね」
「先に亡くなった貴族と交流があり、誘拐や拉致が目的だったのではと推測されるらしい。なにか知っているか?」
「初耳だよ」
「事件が続くようなら調査の必要があると手紙に書かれていた。貴族の不審死はプリシオンとしても看過しかねるのだろう」
「そっか。今回はサバトに訊かない」
「なぜだ?」
「国王同士の交渉に口は挟まないよ。私はサバトとの交渉担当であって、お爺ちゃんはお父様に許可をとってるだけだよね。「調査するぞ」って。お父様の回答待ちなだけで、サバトの意思や行動は関係ない」
至極真っ当な意見だ。
「どう答えても構わぬのだな?」
「もちろん。ただし、サバトを刺激するつもりならどうなっても知らない。いつも言ってるけど、事後に私を当てにしないでね。尻拭いはできないから」
リスティアは、サバトが追い詰められたり、存在を白日の下に晒されることになるとは微塵も思っていない。尻拭いとは、サバトに停戦や譲歩を交渉という意味だろう。
「サバトが強者なのは疑っていないが、なぜそこまで自信がある?相手は一国家なのだぞ。あらゆる手で追い詰められると思わないのか」
「敵対を前提で調査する気なら、軍隊を動かすくらいじゃないと侮ってる。親友にとって動物の森は庭同然で、有利に事を運べる場所。軍隊が攻めて来ても甚大な被害は免れないよ。中途半端な戦力だと全滅する未来しか見えない」
「むぅ」
「誠意あるやり方なら交流できるかも。でも、絶対安全だって保障はない」
「わかっている」
リスティアはヴァニシウス国王の身を案じている。プリシオンはカネルラの何倍もの国土を誇る国家で、充実した戦力を保持しているのに、大袈裟だと思わせない口振り。
「当然派遣される人がいて、その人が信用できるかは疑問だから」
「交渉人次第か」
「国交の話じゃないから言えるのはこのくらいかな。返答はお父様の思うままでいいと思う。嘘を吐かないのは知ってるし」
「うむ」
リスティアは執務室から出て行く。
さて、サバト絡みになると毎回頭を悩ませているが、返信するとしよう。
★
ナイデルの返信を受け取ったヴァニシウス。
「陛下。ナイデル国王はなんと?」
「調査は構わないが、正式な手続きでの入国とサバトを刺激しない人選で頼むと。また、不測の事態が起こったとしてもカネルラは責任を負わないと断言しておる」
「遠回しに制止されておりますな。よほど好戦的なエルフなのでしょうか」
「裏返せば、刺激しなければなにも起こらぬという意味だ。早速カネルラへ向かわせる。速やかに人選せよ」
「よろしいのですか?」
「構わん。なにかあったとてカネルラに責を問わねばいいだけ」
「御意に。御希望はございますか?」
「安易な腕試しや戦闘を挑まぬ冷静な者。しかし、最悪の事態を想定してそれなりに腕が立つ者を集めい。また、エルフの扱いに長けた者を含めよ。目的はサバトとの接触のみ。貴族の不審死に関連しているかを確認し、どのような人物かを掴むだけでよい。報復を避けるべく王族の依頼であることは内密にせよ」
「かしこまりました」
後は優秀な宰相に任せる。どうやらナイデルもサバトに接触したことはないとみた。文面から読み取れる。
おそらくおチビと縁があるのだろう。可愛くて仕方ない娘だが、アレは誰より優れておる。頭が切れるうえに、人に愛される才覚は疑いようもない。傑物になり得る器。
またナイデルに縁談を持ちかけねばならんな。我が国の繁栄のタメに。
数日後。ヴァニシウスは宰相より報告を受ける。
「陛下。サバトの調査に向かわせた者達が……全滅したとの情報を受けました」
「なに…?魔物にやられたか?」
「いえ。命令に背き、サバトに闘いを挑み全滅に至ったと。サバトを挑発したようであります。人選が誤っておりました」
「下らん。己を律することもできぬなら自業自得ぞ。終わったことを責めても仕方あるまい。どうやって知った?」
たった今、全滅したと言ったが。
「サバトを刺激せぬよう10人に満たない人数で向かわせました。フィアットから厳選した戦士達と、交渉担当部署の者を。交渉担当の1名だけがプリシオンに帰国し…知ることを語り終えて数刻後に息絶えました」
「サバトはなにを仕掛けた?呪いか?」
そうとしか考えられん。だとすれば予想していなかった。魔導師であり、呪術師でもある者などいない。
「サバトに関する情報は、ほぼ得られませんでした。知り得たのは、悪魔のような魔法を操るということと凄惨な状況のみであります」
「あいわかった。手厚く弔えい」
「かしこまりました。陛下……申し訳ございません…」
「どうした?なんの謝罪か?」
「サバトに私の依頼であることが露呈しました。数人を間に介して交渉したのですが、プリシオン王族の依頼だと見抜いたようで…」
「そうか。仕方あるまい」
今さら状況は変わらぬ。恐れるようなことでもない。
「プリシオンに報復に来ることはないであろう。いかに強大な魔法を操ろうと、森では地の利を活かす戦闘ができようと、プリシオンでは通用せん。一国の王族をどうにかできると思うほど阿呆ではあるまい」
「それならばいいのですが」
「報告御苦労であった。今回は浅慮であっただけのこと。其方が気に病むことではない」
「有り難きお言葉」
「フィアットに箝口令を敷けい。サバトに関する情報は、儂がいいと言うまで決して漏らすなと伝えろ」
「御意」
宰相が去り、話は終わりだと考えていた。だが、まったく終わっていなかったことを知ることになる。
明くる日。
側近から宰相が亡くなったことを知らされる。
「亡くなった原因は?」
「呪術であるものと推測されます。呪印が身体に残されていました。昨日宰相から相談されておりまして、「我が身になにか起これば徹底的に調べてもらいたい。どんな些細なことも見逃さず陛下に伝えてほしい」と」
「して、どのような呪術だったのだ?」
「かなり特殊で呪術師でも正確に判別できぬようです。ただ、連鎖する呪いの疑いがございます」
「ぬ?!儂も宰相と接触しておるぞ」
「陛下はあらゆる呪術の効果を打ち消す召し物を着衣しておいでです。装具にも施されております。御安心を」
一安心か。それにしても、サバトの仕業だとすれば短絡的思考の魔導師。絡んだ代償が死あるのみとは、よほどの身の程知らず。
「待て。宰相は何者かから伝播された可能性がある。危険は去っておらんだろう」
「心配無用にございます。私の知る限り宰相のみで、呪印に気付いて直ぐに私が呪術返しを指示しております」
「ほぅ」
「術者は悶え苦しみ亡くなったことでしょう。宰相の無念を晴らせたモノと確信しております」
「あいわかった。宰相は手厚く弔る。準備を頼むぞ」
確かにサバトの力は脅威だろう。だが、フィアットを屠る力を持っていようが、プリシオンを甘く見すぎている。
人口も国土もカネルラとは比べものにならない我が国を…だ。小国のエルフがちょっかいを出して無事に済むと思うことが愚か。小賢しい魔導師めが。忌々しい奴よ。
「陛下!!至急お伝えしたいことがございます!!」
突然騎士が駆け込んできた。
「何事か」
「急ぎ申しあげます!フィアットで非常事態が起こっております!」
「落ち着いて説明せい」
「隊員が突然苦しみだし、対処も効果なく次々に亡くなっている現状であります!」
「ぬぅ。原因は?」
「不明であります!発症がほぼ同時であったことから、呪いのようなモノではないかと推測されます!」
「発症したのはいつだ?」
「1時間ほど前です!通報により駆けつけましたが、既に話が聞ける状態ではありませんでした!」
なにが起こっている…?
「陛下っ!!失礼致します!!」
更に別の側近が部屋に飛び込んできた。
「今度はなんだ?」
「至急お伝えしたいことがございます!城内で人が倒れております!伝染病の可能性があり、隔離して治癒師と医者が対応しておりますが、至急避難願いたく!」
「なにぃ?」
「陛下!こちらへ!人払いをしており安全ですので!」
「直ぐに行く」
老体に鞭を打って寝室へと戻り、独り思案する。
一体なにが起こっている?フィアットと城の者の症状には関連性があるのか?まさかと思うが…サバトが仕掛けてきたという可能性も捨てきれん。なんにせよ調査の結果を待つ他ない。
騒動が落ち着いたのは数時間後。再度側近から報告を受ける。
「陛下。今回の騒動につきましては…呪いが原因でございました」
「解明できたのか?」
「上級呪術師数名による確認を行い、亡くなった城内関係者とフィアットの身体には同様の呪術印が刻まれていることを確認しました」
「もしや宰相もか?」
「…その通りでございます」
やはりサバトが仕掛けた呪術の可能性が高いな。フィアットから報告を受けた宰相へ、そして宰相から城内関係者へ連鎖したと考えられる。
無差別に人を呪い殺したとすれば、人の命を軽んじる獣の所業だが、奴の仕業と断定するのはまだ早計。なぜなら話の辻褄が合わん。
「術者は呪術返しにより死亡したと報告を受けた。他ならぬお主からだ。違う術者の仕業ということになる」
「誠に…申し上げにくいのですが…」
「なんだ?」
「私が……引き金を引いたようでして…」
「どういうことか説明せい」
「伝播するであろう呪術は、呪術返しが発動のきっかけとなる術式で組まれておりました…」
「なにぃ?」
「呪術返しを使わねば無害な印であったのです…。つまり……私の浅慮による指示が、結果として多くの者達の命を奪った形に…」
……理解した。
「しかと気を持てい」
「はい…」
「知っているか?驕る者の行動は推察しやすいのだ」
「は…?」
「術者は引き金を引くのが愚か者だと知っていた。あくまで呪印を拡散しただけであり、己に発動が不可能な術式であれば、罪に問うても言い逃れるであろう。やがて消え失せる類であったらどうする?」
「うっ…!」
「正直に伝えた心意気やよし。だが、貴様の行いは多くの者が知るところとなる。呪いの解析を怠り、解呪を選択せず、独断で指示を出し多くの者の命を奪った。厳罰を覚悟しておけ」
「そ、そんなっ!どうか御慈悲をっ…!私はっ…亡くなった宰相殿の仇をとりたく指示を出したのでございますっ!あくまでその結果であり…」
どこまでもとぼけよるわ。
「甘く見られたモノよ。貴様の真意に気付かぬと思うか。宰相も貴様の指示が原因で死んだのだな。フィアットや城内の者と同時に発症して。呪術返しについて「よい方法がある」などと宰相に向かって豪語したか」
「宰相は先に呪術師の呪いで亡くなっておりました!おそらく他の者とは異なる手法にて命を奪われたのです!嘘ではありませぬ!」
「調べれば直ぐにわかること。そもそも、速やかに報告に来たこと自体が術者に罪を被せ疑われることを避ける狙いだった。まさか同時に多くの者が亡くなるとは思わぬ。だが、あまりに被害が拡大し、隠蔽できぬと考え最大限の温情に訴えた。儂の性格を読み、不可抗力であれば罪に問われぬであろうと期待して。違うか?」
青ざめる側近。わかりやすい奴よ。
「故意ではなかったとしても悪知恵が働くな、貴様は。浅はかな男よ」
「い、異議ありっ!陛下の憶測であり、事実とは異なります!順を追って私の話を聞いて下されば、おわかり頂けるかとっ!」
「議論しても埒があかん。その場にいたという呪術師から真実を聞く。言っておくが、家族を拷問にかけることも厭わん。国王に対し偉そうに異議を唱えたのだから、虚偽であった場合は覚悟しておくがいい」
「うぁっ…!あぁぁっ…」
側近は膝から崩れ落ちた。
此奴が「仇を討った」と息巻いたのには儂に対するアピールがあったのは想像に難くない。己が新たな宰相の座に就く目論見であったのだろう。眼前での人の死を嘲い、出世を望むなど愚かの極み。
「其奴を牢に入れておけ」
「い、嫌だっ!!俺は悪いことなんてしていない!!」
「見苦しい。さっさと連れて行け。現場にいた呪術師も逃がすな。事実を話したと判断すれば解放せよ」
「「はっ!」」
護衛に両脇を抱えられ側近は消えた。瞼を閉じて思案する。
…許せ、宰相よ。お主が命を落としたのは儂の落ち度でもある。魔導師サバトを所詮は一介の魔導師と甘く見ていた。ナイデルの忠告を無視した報いであり、もっと言えば貴族の不審死の時点で呪いを操る可能性に気付くべきだったのだ。
優秀な宰相とフィアットを失ったのはプリシオンにとって大きな損失。しばし国外の動向に気を配り、新たな人材を育てなければならんが、一朝一夕で成せることではない。
元は儂の傲慢が招いた事態。おチビに笑われてしまうであろうな。
★
後日のカネルラ王城。
ナイデルは再び稽古中のリスティアを呼び出した。
「リスティア。プリシオンから手紙が届いた。サバトに絡んだことが原因で、宰相を含め国の精鋭を多く失ったようだ」
「そうなんだね」
リスティアはさも当然とばかりに平然と受け止めた。
「サバトを恨んでるのかな?」
「いや。実行犯は国王の側近とのことだ」
「どういうこと?」
手紙にあった事件の詳細を教える。
「お爺ちゃんがあらゆる手段で守られてる立場じゃなかったら危なかったね」
「考えたくないが、そうだ」
サバトは国王の死すら視野に入れて仕掛けている。報復されることを恐れずに。
「歳を取って警戒心が薄れちゃったのかなぁ。お父様に止められてるのに、サバトの調査を指示したのは浅はかだと思う」
「しばしサバトに不可侵を決めたとある。今後はカネルラへの不法出国についても厳しく取り締まると」
「そうした方がいい」
「フィアットは優秀な部隊だ。直接手を下さずに屠るとは、謀までこなすか」
「偶然の結果だね」
「どういう意味だ?」
「サバトは、遭遇したとき相手の情報を掴んで呪術を作り出したんだと思う。敵対した者達に対して効果的にダメージを与える手法を考えた。打ち合わせや会議で大勢が集まる集団だと知って、伝播する呪術に決めたのかな」
リスティアは見ていたかのように話す。
「呪術返しは想定済みで、伝播した者に発動するよう仕向ける。そもそも、サバトが呪ったのは国に戻った1人だけで、他の人は呪ってない」
「呪っていなかっただと?」
「直接交戦した伝令役だけがサバトの呪いで命を落とした。伝令役は他者に伝播する…いわゆる術者になる。この時点でサバトの手を離れたから返されても関係ない。後は時間の経過と共に伝播して、浅はかな思考で呪術返しを提案する者が引き金を引いた」
この子はなぜ読み切れるのだ?まるで加担したかのように。
「向こうもわかってるだろうけど、今回の結果はプリシオンにとって最悪じゃない。呪いが伝播する範囲には限界があるだろうけど、時間が経ってたらもっと犠牲者が増えてた。国を奪うなら、戦争を起こすより最低限の戦力で被害なく奪うのが理想だよね。1人で達成するならどうやるかってこと」
「自分にできるあらゆる手段を使う。魔法に限らないということか」
親切に俺の心の内を読んでくれる。
「ちなみに、予想にはあまり自信がない。サバトから敵意を向けられたことがないのと、全てを知ってるワケじゃないから。どう出るか予想しかできない」
「なるほどな。親友とて手の内を全て見透かせるような魔導師ではないだろう」
「そうなの。お爺ちゃんはもう引退するべきかも。まだサバトのことを軽んじてそう」
「どういうことだ?」
「サバトは他にも策を講じる可能性がある。プリシオンに迷惑をかけられたのが一度や二度じゃないから。その内の1つが暴露しただけかもしれない」
「つまり、まだ危機は去っていないというのか」
「後でサバトに事情を伝えるから、気が済んだら終わり。済まなければその時は知らない。接触を図ったプリシオン王族の目的は会話で、指示された者達の暴走だって伝えるし、私の言葉を信じてくれるはず。だからって起こったことはなくならないけど。仮に公表されたらサバトを恨む者も多くいるだろうね」
「避けられぬだろうな」
だが、サバトは気にも留めないのだ。報復に怯むような魔導師ではない。
「プリシオンは友好国だし、お爺ちゃんはカネルラに助力してくれてるから敵対したくないよ。でも、逆恨みする人じゃないから黙ってた。浅はかだったって反省して、サバトの仕業ってことは公表しなそう。危機回避は国王にとって重要な資質なのに、ちょっと耄碌したって感じる」
軽く毒づいたリスティアは屈託なく笑う。
「返事に書いておいて。おチビが「傾聴できない国王がいる国には嫁がない」って笑ってたって。じゃあ稽古に戻るね」
「ちょっと待て。1つ訊いてもいいか」
「うん」
「サバトとは誠意を持って付き合えば大丈夫だと言うが、誠意とはなんだ?単におだてるという意味ではないことはわかる。だが、曖昧すぎてわからん」
「お父様は知らなくても大丈夫だよ」
「邂逅したとして、万が一があり得るだろう」
「ん~…。ないと思う。一言で言うとね、対等に向き合うこと。お父様は誰に対しても同じ態度で、偉ぶったり蔑んだりしない」
「当然だ」
「立場とか職業とか年齢とか、種族や性別が違うだけで見下したり、逆に持ち上げたりするのは常識だよね?でもサバトは違う。我慢してまで交流する気も必要もない。子供好きなのはそんな邪念がないからかな」
言い残してリスティアは去った。心配無用と思っておけということか。
しかし、あの子の発言をそのまま手紙に書くワケにはいかんな。まだ時期尚早で本人に伝えたことすらないのに、何度か縁談を持ちかけられていることに勘付いている。
本当に洞察力に長けた娘だ。そんなリスティアの能力を見抜くヴァニシウス王もやはり大した御仁。使える者を見極め、人を統べる器。
サバトはカネルラに多大な貢献をする一方で、無駄に刺激してはならない爆弾のような男。リスティアと繋がりがなければ、俺も似たようなことをしでかしている可能性があるだけに笑えぬな。




