662 洗いざらい
今日は4姉妹が揃って遊びに来た。
ウォルトがいつも通り1人ずつハグすると、正面から密着が凄い。がっつり柔らかいのが当たってる。
「ちょっ…!くっつきすぎだって!」
「そんなことないよね?」
「今まで通りですね」
「むしろ緩めでっす!」
「兄ちゃんは自意識過剰すぎ」
…絶対に違う。いつもはこんなにハッキリ感じない。とりあえずお茶とお菓子を準備して、気持ちを落ち着かせよう。
「ウォルトは照れ屋だからねぇ~」
「いつまでも変わらないんだよ~」
「たわわに弱いの~!」
「柔らかいのが好きなのかもね~」
4人は子猫をそれぞれ抱えて話しかけてる。猫にとってはつまらない話だろう。シャノは床であくびしてる。
「ボクの嗜好を教えなくていいよ」
「この子達にいずれ番ができたときの参考に?」
「ならないって」
それぞれに花茶を差し出す。
「こないだ言ったけど、今日は本音で話しに来たよ。ウォルトも言いたいことあるだろうし」
4人はボクのことを男として好きだと言ってくれた。そして、一度腹を割って話そうと。今日は気持ちを隠さずに伝えよう。
「まず、ウォルトから一言どうぞ!」
改めて言うのは恥ずかしいけど…。
「あの……ボクのことを好きだと言ってくれてありがとう…。嬉しかった…」
「「「「どういたしまして」」」」
揃ってるなぁ。
「予想してなかったから驚いたんだ。まさか、男として好かれてるなんて思わなかったから」
「鈍すぎるんだよ!私なんて小さな頃から好きだったんだからね!」
サマラは満面の笑み。
「そうであってほしいと思ってた頃もあった。ボクの初恋の相手はサマラだ」
「それは自信あったけど、いろいろあったじゃん。私のせいで酷い目に遭ったり。だからハッキリ言えなかった」
「サマラのせいじゃない。ボクが弱かったからだ。強い獣人だったら突っぱねることができた」
自虐ではなく事実。誰にも文句を言わせないような強い男だったら…なんて、たらればだけど。
「4姉妹の中で、ウォルトに好かれるのが1番難しいのは私だと思ってたよ」
「なんで?確かにサマラを好きでいることを諦めたけど、ボクのせいで絡まれたりして迷惑をかけたくなかったからだ。あと、ボクは性格が今以上に捻くれてた」
「逆でしょ!私がどんだけ迷惑かけてると思ってんの?!」
「自分が惨めだっただけで迷惑はかけられてない。そう思ってたらサマラを遠ざけてる」
言いたくないことも腹を割って話そう。4人はボクの過去を知っているから。
「サマラに絡むんじゃねぇ!って殴られても好きだったのに、辛さに耐えられなくなって心が折れた。結局また好きになったけど」
「昔を思い出して2倍好きになるといいよ!」
「倍は言い過ぎかもしれないけど、今の方が昔より好きなんじゃないかな」
「えぇ~!そうなの?!」
「サマラの性格は小さな頃からあまり変わってない。一緒にいてあれこれ考えなくて済む。また好きになれたのは、この歳になって魅力を再認識したから。小さい頃には気付けなかった優しさに気付いたりして」
「ちなみに見た目は?」
「綺麗になった。ボクとは釣り合わない。誰もが認めると思う」
「自虐的すぎでしょ!顔で好きにならないし!」
「ボクはサマラの容姿も好きだよ」
「照れるぅ~。私はとりあえずこのくらいでいいや!まだ3人いるからね!次は誰がいく?」
ウイカが手を挙げて微笑んだ。
「私に言いたいことはありますか?」
「ウイカが好きになってくれたのが1番意外だった。しっかり者だから、ボクみたいに適当な男は苦手だと思ってて」
「ウォルトさんは適当じゃないです。思い違いですよ」
「ちなみに、いつ頃から?」
「出会って直ぐです。クローセにいた頃からですね」
「そんなに前から?!気付かなかったよ…」
「結構アピールしてるつもりだったんですけど、まったく気付かなかったですか?」
「面目ない…」
ふふっと優しく笑ってくれる。鈍いと言われるのも当然か…。
「祝福の魔法が決定的な出来事でした。身体が弱くて、人に遠慮ばかりしてたからアピール下手なのかもしれないですね」
「いや。ボクが鈍いんだと思う」
「そんな私でも意識してほしくて、ハグを作ってみました」
「ハグを作ったって…どういうこと?」
「ハグはフクーベで流行ってません。そもそもそんな言葉すらないです」
「う、噓だぁっ!」
ここ最近で1番驚いてるかもしれない。
「騙してごめんなさい。ウォルトさんと触れ合いたくて考えたんです。そのくらいしないと、女性として意識してくれないと思ったので」
「確かに…そうかもしれない」
「でも、抱き合うと心が落ち着くのは本当で、嘘から出た実になりました。3人にも感謝されてると思いますよ」
揃って頷く3人。
「カネルラで最高の発明だよね」
「お姉ちゃんは天才です!」
「まず驚いて、次に悔しかったですね」
皆はウイカにのっかってたのか。実際に落ち着くからボクも疑わなかった。
「私は引っ込み思案なので、黙ってると周りに置いて行かれちゃいます。やるときはやるって見せたかったんです」
「努力家で負けず嫌いなことは知ってるよ」
「嬉しいです。ウォルトさんは、私のどこを好きになってくれたんですか?」
「優しさだね。もちろんそれだけじゃないけど」
「優しいつもりはないんですけど」
「ウイカは気配りができて、いてくれるだけで場が和やかになる。バランス感覚が凄いと思うんだ。他人といても、釣り合った天秤みたいにどちらにも傾かず、傾いても自然に戻す。他人に優しくて空気を読める人だ」
逆立ちしてもボクにはできない。
「初めて言われました」
「特に優しさを感じるのはハグのとき。ウイカはいつも控え目にしてくれる。密着しても、大抵ギリギリ耐えれるところで終わらせてくれるよね。困らせたくないって優しさをいつも感じて癒されるんだ。だから…抱きしめたいって思う」
4姉妹の言動で、これ以上は本当に困る…と思ったときに皆を諫めてくれたり、場合によってはボクを諫めてくれたりもする。
他人の言うことを聞かないのに、ウイカの意見には耳を傾けようと思うのは、彼女の優しさを知っているから。
「意識させる作戦かもしれませんよ」
「狙ってやってるとしたら完敗だ」
「ふふっ。狙ってないです。困ってるウォルトさんの表情も好きですけど、やっぱり笑っていてほしいので」
「ありがとう」
「ちなみに、私の小さな胸でも興奮してくれますか?」
「するから優しさを感じてるワケで…」
「ふふっ。嬉しいです。私もとりあえずこのくらいで。次はアニカ?それともチャチャ?」
「チャチャ!私が先にいい?!」
「どうぞ」
「ウォルトさん!私のどこが1番好きですか?!」
直球なところがアニカらしい。
「アニカは…」
「大きな胸ですよね!知ってます♪」
「まだなにも言ってない!」
「えっ?大きな胸は嫌いですか?」
「いや…。好きなんだけど…」
今日は包み隠さず…。
「ですよねぇ~!今日は本音で語りましょ~!私のどこを好きになってくれたのか、なんとなくわかってます!胸のことは抜きにして!」
「自分でわかるなんて凄いね」
自分自身を理解するのはとても難しい。短所は幾つもあるのに、長所はないとしか思えない。
「明るくてぇ~、可愛くてぇ~、爽やかな色気があるところです!」
「間違ってないけど足りないよ」
「えっ?!まだあるんですか?!」
「もちろん。アニカの明るいところや前向きなところもそうだけど、人の心に寄り添えるところが好きだ。ボクのタメに泣いてくれたとき凄く嬉しかった」
ボクの過去を聞いて、本気で悔しがってくれた。痛みを引き受けるように泣いてくれて心が軽くなったんだ。
「誰かを励ましたり、一緒になって怒ったり、ときには自分の方が怒ってたり。見ていて飽きないよ」
「そうですかぁ~!」
「凄く自然な行動ばかりで、裏表がないアニカと付き合うのはとても楽だ」
「なるほどぉ~!女としてドキドキしてくれてますか?!」
「いろんな意味でね。胸を使ったアピールはもうちょっとお手柔らかにお願いしたい」
「ダメです!頑張ってウォルトさんに好きだって意識してもらえたんですから!」
「ボクがアニカを好ましいと思うのは、胸が大きくてドキドキするからじゃないよ」
まぁ…それもないとは言えないけど。
「アニカは、ボクといるとき匂いが強くなるんだ。今思えば、好きだと思ってくれてる匂い…じゃないかと思うんだけど」
「きっとそうです!」
「好かれてるんじゃないか?…と思ったこともあった。ただ、ウイカもそうだけど、師匠が弟子に恋愛感情を持つのは醜いことを知ったから気にしないようにしてた」
「誰がそんなこと言ったんですか~?!別におかしくないですよ!」
「そうです!もしそうなら、私とアニカは絶望的です!」
「言われてはいないんだ。ボクはそう思っただけで」
メリルさんの魔道具の師匠が弟子に男女関係を強要するような男だったことを聞いて、そうなりたくないと思った。
「でも、そうだったら嬉しいと思う自分がいた。アニカに好意を持たれて嬉しいなら…」
「ウォルトさんも私が好きだってことですね!それが恋かは別として!」
「うん。アニカの行動は、鈍いボクでもわかるくらい真っ直ぐ。いつも味方をしてくれるからちょっと怖いけど」
「なんで怖いんですか?」
「ボクは感情を優先して後先考えないから、敵ばかり作るのは自覚してて、ないと思うけど見習ってほしくない。でも、アニカも感情的だから付き合いやすい」
「余計なこと考えずに楽しく生きてます!」
「子供の頃、楽しく過ごしたかった。アニカといると、ずっとそうしてきたみたいに感じる。この感覚は理解してもらえないと思うけど」
「これからも楽しくやっていきましょうね!」
「そうだね」
「私もこのくらいにしておきます!じゃ、あとはチャチャだね!」
「はい」
チャチャが花茶を飲み干す。
「兄ちゃん。やっとだね」
「なにが?」
「私は何度も言ったよ。兄ちゃんが好きだって。皆も言ってると思うけど」
「覚えてる。友人としてだと思ってた」
兄ちゃんが好きだ…とチャチャは何度も言ってくれた。ハッキリ伝えてくれていたんだ。
「あのね、私はモンタの頃から兄ちゃんが好きなんだよ。もちろん男として」
「そんなに前から?!気付かなくてゴメン…」
「「「モンタ?」」」
3人はモンタのことを知らないのか?
「私が男のフリをしてたときの名前です。兄ちゃんに出会ったときの」
「可愛い名前じゃん」
「猿の男の子って感じだね」
「今からモンチャに改名もアリだよ!」
「ナシですよ!アニカさんは直ぐ茶化すから。まったく…」
「てへっ♪」
チャチャはボクを真っ直ぐ見る。
「兄ちゃんに助けてもらって…優しくされて男の人を初めて好きになった。私の初恋は兄ちゃんなの」
「ありがとう」
「料理したり裁縫したりして、女性らしさを磨いた。皆に負けたくないから見た目にも気を使って」
「チャチャが1番変わったと思う。容姿も大人びて」
「やっと女として見てくれたね」
「ずっと前から女性として見てたよ」
「いつから?」
「モンタの姿をやめたときから」
チャチャとして再会したとき、匂いが一気に女性らしくなったことを覚えてる。変態扱いされそうだから言わないけど。
「なるほどね。私の匂いも変わったんだ」
バレバレ…。
「兄ちゃんは、私のこと好きって気付いたのはいつ?」
「きっかけはダイホウの祭りで、皆が知らない男と話してたり楽しそうにしてるのが嫌だった。チャチャが子供だった頃を知ってるし、妹みたいに感じてたはずなのにいつの間にか1人の女性として見てたんだね」
「そうなんだ」
「チャチャは落ち着いてて気が利く。精神はボクより大人びて、番になる男は幸せだろうって思ってたよ。でも、想像すると辛かったり」
「番になりたいと思ったり?」
「それはないかな」
「なんで?私のこと好きなんだよね?」
「チャチャだけじゃなくて、皆に言いたいことになるけどいい?」
揃って頷いてくれる。
「ボクは偏屈な頑固猫人で自分勝手だ。街に住みたくなくて、仕事もしないしまともに人と交流できない。性格も優しくなくて、誰に怒られても反省しない。ないない尽くしの獣人に恋人や番なんてできるワケない。そう思わないか?」
「「「「別に」」」」
「えっ?」
4人は平然と答えた。
「あのさぁ、ウォルトはその性格を隠してたの?」
「隠してないよ。隠しようがない」
「そういうのは、ウォルトをよく知らない人に言わなきゃ意味ないじゃん。私達はよ~く知ってるんだからさ」
「そんな性格だってわかってて好きなんですよ」
「甘すぎですよ!私達をかなり甘く見てますねぇ~!」
「身構えて損した。兄ちゃんは大袈裟すぎ」
なんで反応が薄いんだ…?恋人にしたくない要素だらけだと思うけど…。
「ウォルトはさ、番とか恋人ができたら相手を幸せにしなきゃ…って思ってない?」
「思ってるけど」
「はい、勘違い!余計なお世話だから!私達は勝手に幸せになるし!世の中の番が全員幸せだと思う?まぁ、いい手本を見て育ってるからそう思うんだろうね」
「いい手本って?」
「ウォルトさんは『恋人や番には優しくして、幸せにするべき』って思い込んでるんです。ストレイさんやサバトさんを見てきたから」
ボクにとっての番は、両親やばあちゃん達のような関係。いつだって上手く相手をフォローして笑顔にする。他の番はよく知らない。
「同じことはできないって思ってるんですよね!そんなことないのに!」
「恋人でもない私達に優しいのに、番には優しくできないとか意味がわからないよ。兄ちゃんの発言は矛盾しすぎてる」
「その通り!できるに決まってるじゃんね~」
「「「ですねぇ~」」」
ボクが恋人に優しくできる…?そうなのか…?
「そもそも、恋人や番の形も人の数だけあるでしょ!ウォルトが恋愛豊富なら偉そうに言ってもいいけどさ!性格が原因でフラれたとか!」
「そんな経験は皆無だよ…」
「じゃあ、やってみましょう」
「ウォルトさんの口癖です!何事もやってみなきゃわかりません!」
「確かに……そうだね」
「兄ちゃんは、前に「私達みたいな恋人がいい」って言ったよね?」
「言った」
「だったら問題ないよ。私達も兄ちゃんみたいな恋人がいいんだから。弱いからって蔑むような女と一緒にしないで」
違うことはわかってる。
「さぁ、ウォルト。今の話を踏まえたうえで、私達とは恋人になれない?」
「…なれると思う」
「でしょ!ちなみに、誰と付き合いたいとかないの?」
「ないよ。今の今まで無理だって思ってたんだから」
4人はニンマリ笑った。
「楽しみだぁ~!いつ私に告白してくれるのかなぁ~!」
「告白されるのは私です。誰にも譲りませんから」
「ついに内に秘めてた力を解放するときがきたぁ~!控え目な三女とは仮の姿!ウォルトさんの男らしい部分を包み込む長女の力を見せてやるっ!」
「ふふっ。アニカさんは全然控え目じゃないですけど。胸の大きさで勝負は決まりませんからね」
楽しそうに騒ぐ4人。よく知らないけど、恋敵って仲が悪いと言われてたはず。この認識も違うのかな?
「皆はボクのことが好きだから仲良くなったって言ったけど」
「そうだよ。同盟組んでるから」
「同盟?!」
「ウォルトさんの情報を共有して、皆で対策とかドキドキさせる作戦を考えたりとかしてました」
「だから皆が細かく知ってたのか…」
「私達はウォルトさんに出会った時期がバラバラだから、知ってる情報を共有してたんです!」
「後から出会った私やウイカさんが不利にならないようにしてくれたんだよ」
白猫同盟について詳しく教えてもらう。あり得ないほど鈍くて勘が悪いボクに好きになってもらうには、1人では難しいという理由もあったらしい。
女性が苦手だから、皆で協力してゆっくり慣らしていこうと。そして、ライバルだけど仲良くなって今に至る。
「同盟でいろいろやったのは、絶対効果ありだよね」
「水着混浴とか一気に意識してもらえた気がしました」
「誰も抜け駆けしないし、いっつも楽しい!」
「兄ちゃんは、4人から刺激されてやっと普通の人くらい欲情しますから」
「勘違いだよ。ちゃんと4倍刺激を受けてる」
相当下心を煽られてるんだ。
「皆が思ってるほど女性は苦手じゃないと思う。だから下心がある」
「うっそだぁ~!女嫌いとしか思えない!」
「相手にされなかったからどう接したらいいのかわからないだけだよ。本当に苦手なら話さない」
「ふ~ん。怪しいなぁ。ちょっと訊いていい?本音で答えてよ」
「いいよ」
「私の裸、どうだった?」
「ぶっ…!」
サマラの裸がフラッシュバックする。
「サマラさんズルい!ウォルトさんに思い出させようとしてる!しかも成功しちゃった顔してる!」
「私のスタイルの方が扇情的ですよ!皆で上書きして掻き消そう!」
「兄ちゃん!答えちゃダメ!私もまだスタイルよくなるから焦らないでっ!」
「まぁまぁ。落ち着こうよ。女嫌いじゃないか確かめたかっただけで、深い意味はないし!」
「「「絶対、嘘です!」」」
一気に騒々しくなる。サマラが集中砲火を浴びてる内は答えなくて済みそうだ。
「ニャ~」
気ままに遊んでいた子猫達が足に擦り寄ってきた。しゃがんで顎を掻いてあげると目を細める。可愛さに癒されるなぁ。
4姉妹は放っておいても大丈夫。互いをよく知ってるから、急に関係性が悪化したりしないだろう。
心配なのはボクの方で、どこまでバレてるか知らないけど浮かれてる。4人に好きだと言われて嬉しい。キャミィに言われたときと同じだ。
「ウォルト!あまり身構えないでよ!」
「今まで通りでいいんです。急に変わる必要もないですし」
「これからも楽しくやりましょうね♪」
「兄ちゃんを困らせるつもりじゃないから」
「うん。ありがとう」
おそらく、ボクと4姉妹の関係が直ぐに変わることはない。いつ嫌われてもおかしくないし、なるようにしかならない。気を張らずに今まで通りにしておこう。
皆と一緒にいたいことだけは確か。
「ウォルトはぽっちゃりしてる方が好きなの知ってるけど、要求に応えるのは難しいよねぇ~」
「なかなか太りません。結構食べてるんですけど」
「20年後くらいにはぽっちゃりしてるかもしれないけどね!」
「でも、なりたくないんですよね~。獣人って太ってる人いないし。悩ましいなぁ~」
肉付きがいい方が健康的に見えるのは確かで、皆は瘦せてる。
「ちなみに、ウォルトは私達で誰の顔が好みなの?」
「誰が好みとかはないよ」
「ホントに~?ちゃんと顔判別できてる~?」
「できてるよ。サマラは格好いい美人で、ウイカは透明感のある美人。アニカは可愛くて美人。チャチャはあどけなさの残る美人だ」
「…兄ちゃん。なんか私だけ違わない?子供ってこと…?」
「まだまだ綺麗になる可能性しかないと思ってるんだけど」
「ならいい!」
「皆がモテるってことくらいボクでもわかる。でも、優劣なんてないし上手く表現できないんだ」
「私達はウォルトが大好きな魔法みたいなもんか~!」
「上手いこと言うなぁ」
「じゃあ、ミーナさんはどうですか?」
「母さんは…可愛い…かなぁ?」
「テラさんはどうですか?!」
「テラさんも可愛くて美人だね」
「ランさんは?」
…………難しいな。
「あははっ!ウォルトが困ってたってお母さんに言っとくよ!筋肉見せてあげてって!」
「やめてくれ!」
「いつも1人だけ披露を免れるの、よくないと思います」
「ウイカまで…!」
「そうですよ!ランさんも見せたがってました!」
「たまには兄ちゃんも筋肉を褒めなきゃ」
その後も4姉妹と沢山話した。
誰とも交わすことはないと思ってた恋愛絡みの話。過去にはラットが適当な感じで訊いてきたことがあるくらい。
どんなことより恥ずかしい気がして、でも嫌ではなかった。




