655 更なる強さを求めて
「ニャ」
「ありがとう」
「ニャ!」
「ありがとう」
「ニャッ」
「ありがとう」
「ニャ~」
「ありがとう」
本日、ウォルトが農作業をしていると子猫達が揃って森で獲ってきた獲物をくれた。しゃがんで差し出した掌に、順番に虫を載せたあと気ままに遊び始める。
フレークを混ぜたご飯が好評だったから、作ったお礼にくれた…なんて考えすぎだろうか。嬉しいから記念に『保存』して飾っておくことにしよう。
「ニャ~!」
日なたぼっこ中のシャノが急に警戒する声を上げた。瞬時に結界を展開して確認すると、猛スピードで住み家に近付く3つの影。
迫り来る方角と木々の間を縫うように駆ける動きからして、間違いなくボクらの友達。この距離で気配を掴んだシャノは凄い。警戒心が強くなっているのもわかるけど。
「シャノ。ペニー達だけど、どうする?」
「ニャ~」
『別に』とのんびりした反応。2人とは友達だからな。でも、もう1つの影は違う。
勢いよく森から飛び出してきたのは、予想通りペニーとシーダ。そしてレクスさんだ。
「「ウォルト~!」」
飛び込んでくる2人を全力で受け止め…きれるワケもなく、見事に吹っ飛ばされた。
「大丈夫か?」
「また大きくなったぞ!褒めていいぞ!」
「いてて…。確かに大きくなってるね。鍛えてるなぁ」
「「そうだろ!」」
尻餅をついたまま、いつものモフりモフられ。
「シャノも久しぶりだぞ!」
「ニャ」
「子供生まれたんだな!小さいぞ!」
「可愛いな!」
「シャ~ッ!」
子猫達は怯えて威嚇してる。
「シーダ。驚かせたみたいだ。ゆっくり仲良くなろう」
「そうだな!シャノ、近付いてもいいか?!」
「ニャ」
シャノと話している姿を見て、少しだけ警戒を解いたように見える。いきなり大きな銀狼が現れたら驚くのが普通。仲良くなれるといいけど。
「なにもしないから」
「俺達は仲良くしたいだけだぞ」
そろりそろりと近付く2人。やっぱり怖いのか子猫達は逃げ回る。森に逃げ込まなければ大丈夫かな。
「久しいな」
一際大きな銀狼、レクスさんが傍に来て話しかけられた。
「お久しぶりです」
「騒がしい若造共だ。お前が此奴らに狼吼を授けたと聞いたが、本当か?」
「コツだけ教えましたが、覚えたのは彼らの努力の成果です。いずれ習得していたでしょう」
「ふははっ。あり得ん。姿を消し去る狼吼など存在しなかった。想像したこともない」
ペニー達は消える狼吼まで見せたのか。
「案ずるな。口止めしているのは知っている。その理由もな」
「そうですか」
「我は里の銀狼と争った」
「なぜです?」
「余所者扱いされ、無駄に威嚇されたのでな。此奴らは、次々倒れる里の仲間を守ろうと果敢に挑んできた。追い込まれ隠していた狼吼を使っただけ」
「そうでしたか」
状況を打破するに必要な選択だったのか。レクスさんは里のどの銀狼より危険な存在。この口振りだと、それでも敵わなかったんだろう。
「実力を備える銀狼も少数いたが…我を最も驚かせたのはまだ若い此奴らよ。名を聞いてお前の友達だと知った」
「仲良くなったから一緒に来たんですか?」
「笑止。我に友など必要ない」
孤独でも気にしないのか。でも、ボクなら親しくない人と行動を共にしたいと思わないけど、そこは平気なんだな。
…ふと浮かんだこの予想は合っているだろうか?
「貴方は、今の銀狼に原始の獣人と闘える実力があるか試したんですか?」
「勘違いするな。我は殊勝な銀狼ではない。そんなことより、お前に頼みがある」
「頼みたいこと?」
「我と手合わせ願おう」
「なぜ?」
「此奴らが騒がしい」
仲良くなった子猫達を背に乗せてペニーとシーダが駆けてきた。一生懸命背中にしがみついて匂いを嗅いでる。可愛いな。
「ウォルト。レクスは強い。里の銀狼は誰も勝てなかった。ギレン父さんでもだ」
「俺の父さんも負けたぞ!俺達2人同時でもダメだった!強すぎるぞ!」
「そうなんだね」
「だから本気の狼吼を見てない。俺とシーダは見たいんだ!」
「頼んでも見せてくれないんだぞ!ウォルトと手合わせしたらきっと使う!」
それを期待して連れてきたのか。2人の期待には応えたいけど、やってみないとわからない。
「銀狼の未来を憂うなら、貴方の狼吼を2人に教えるべきでは?」
「銀狼の未来など知らん。我は伝導者ではない。そもそも教えることなどできん」
「え?」
「狼吼の知識は此奴らの方が遙かに優れている。狼吼を他に伝授した銀狼など過去にいまい」
「世代を超えて受け継がれてきたのに?教えなくても生まれたときから使えるというなら別ですが」
銀狼は理知的で理解力にも優れてる。人族には理解できなくても、伝える術があるに違いない。
「お前は勘違いしている。銀狼なら誰もが狼吼を操るワケではない。人族の魔法もそうだろう?死ぬまで使えぬ者もいる。見限られ、里を追い出されることもザラにあるのだ」
「そんな銀狼もいるかもしれません。里から追い出す必要はないと思いますが」
「弱ければ腹を満たす獲物も獲れん。食うばかりで里の厄介者」
それを…ボクは認めたくない。
「銀狼の所業が気に入らんのか?だが、我だから言える」
「なぜ…?」
「遙か昔、里を追放されているからだ」
「貴方が…?」
この強い銀狼が…?俄に信じられない。
「狼吼を使えず、無能な忌み子と呼ばれて里を追われた。あてもなく世界を巡り、闘いを繰り返す内に狼吼を覚えた。幾度も死に直面して本能が呼び起こされた…とでもいうか。やがて使える数が増えただけのこと」
「そして今に至ると」
「そうだ。故に狼吼を教えるなど到底不可能。同じ経験をすれば覚えるワケでもなかろう」
「貴方は、なぜ追放された里に?」
「憎しみこそあれ生まれ故郷。血を分けた者もいた。噛み殺してやるつもりだったがな」
つもりだった…ということは、今はいないという意味か。真意は違う気もするけど、ボクには思考が読めない。
「無駄話はこのくらいにして、やるのか?やらんのか?」
「手合わせをするのはやぶさかではないです。ですが、殺し合いなら受けません」
「殺さなければいいのだな」
「えぇ」
「いいだろう。我はお前の力を見たいだけだ」
「直ぐにやりますか?ご飯を食べてからがいいのでは?」
「む?いいのか?」
「ペニー達も空腹だと思うので」
「「腹減ったぞ!!」」
いつもお腹を空かせながら駆けて来てくれる。直ぐに満腹まで食べさせてあげたい。
「此奴らは…本当に我の狼吼を見るつもりがあるのか…?」
「いつもこうなんです」
食事を終えて呆れたような顔のレクスさん。ペニーとシーダは食後の居眠り。床で丸まって気持ちよさそう。シャノと子猫達も寄り添う。モフモフの集合体で、キャミィがいたら喜んで毛皮に埋もれそうだ。
「本来なら相容れぬ存在と寝食を共にするとはな」
「その言い方だと、ボクと貴方もですが」
「クククッ。ときに、猿の娘はおらぬのか?」
「チャチャはいませんが…なぜです?」
「いないのならいい」
屈服させられたことで、復讐しようとか考えてるんじゃないだろうな。そうだとしたら頼んだボクのせいだ。
「ん…。チャチャがどうかしたのか…?」
「どこかで…黒い目をしてるかもしれないぞ…」
名前に反応して2人が起きた。まだ寝ぼけてるっぽい。
「さっさと起きんか。寝てる間に終わらせてしまうぞ」
「…ダメだっ!」
「絶対見るぞっ!」
「ならばシャキッとせい。目をひん剝いて見ておけ」
「わかった!」
「俺達が最強の銀狼になるんだぞ!」
「…ふっ。若造の分際で世迷い言を。力の差を目に焼き付けておくがいい」
レクスさん、ペニー達と一緒に外に出る。シャノ一家は昼寝のまま留守番。今日は久しぶりに隠蔽用の結界を張る。ボクらは結界の外から視認できない。
「準備はいいか?」
「いつでも構いません」
距離をとって対峙する。ペニーとシーダは離れて観戦。
「ウォルト。手を出すのなら自分だけにしろと我に言ったな?」
「言いました」
「契りは守った。誰も殺しておらん。とことん付き合ってもらうぞ」
「二言はありません」
レクスさんの纏った独特の揺蕩う狼吼が膨らんで、かなりの重圧を感じる。
「一向に臆さんな。面白くない奴よ」
「怯えてほしいんですか?」
「別になんでも構わん。…グルァァッ!」
巨体でありながら凄まじい敏捷性。一瞬で接近され、大きく開いた強靭な顎が眼前に迫る。
魔法で身体強化して、ギリギリで後方に躱すも、前足を横から切り裂くように薙いでくる。太く鋭い爪は鉄をも貫かんばかりの威力があるだろう。焦らず冷静に見切って躱す。
「小手調べ…と言いたいが、並の獣人なら頭を噛み砕いて終わっていた」
「殺すつもりにしか見えませんね」
「ククッ。この程度では通用しないとわかっている。まだ余裕だろう」
レクスさんは、エッゾさんに似て多くの修羅場を潜り抜けた雰囲気を纏う。
「手合わせとは、逃げ続けるという意味ではなかろうな?」
「もちろん違います」
攻撃を躱しながら準備は整った。
「こちらからもいきます」
レクスさんの頭上から雷撃の雨を降らせる。
「「すっげえ~!」」
「フハハッ!そうこなくては!魔法ではなく狼吼だな!?面白い!」
ペニー達はレクスさんの狼吼を学びたいと言った。ならば、ボクも狼吼で対抗して少しでも闘いの参考になればいい。
踊るようなステップで縦横無尽に全て躱される。発動のタイミングが見切られているな。予測というより反応の速さが驚異的。正攻法で攻撃を当てるのは至難の業に思える。
「多少はやるではないか!」
「コレはどう受けますか?」
更地の広範囲に雷撃を降らせる。さらに、密集させて躱す隙間を与えない作戦。
「…小癪なっ!」
高速で移動しながら、躱しきれない雷撃は毛皮に纏った狼吼で無効化しているのかダメージを受けてない。狼吼を操る技量が違う。もっと見せてもらいたい。さらに激しく雷撃を浴びせる。
「ガゥァッ…!調子に…乗るなっ!」
「うおっ…!」
巨大な雷撃を口から直線的に吐き出してきた。予想外の反撃を辛うじて躱す。
今のは攻撃のタイミングが読めなかった。ボクが放った雷撃を吸収して、そのまま放出したように見えたけど…無効化ではなく雷撃を身体に蓄積したのか?面白い技法。
「格好いいな!」
「凄い威力の雷撃だったぞ!」
ペニーとシーダは大興奮。
「ふん。この程度で驚くようではまだまだ」
「2人の手本になる狼吼だと思います。ボクももっと見たいです」
「銀狼でもない獣人に頼まれるとは…な!」
今度は風の狼吼で切り刻もうとしてくる。『疾風』のような狼吼で初めて目にする。
「避けるのが上手い奴よ。さっきのお返しだっ!くらえっ!」
動物特有の高速で身体を震わせる動きで、無数の風の狼吼を放たれた。躱せる隙間はない。
「フゥゥ…」
「なんだとっ?!」
あえて躱さず毛皮に狼吼を纏って受け止め、レクスさんに向けて放出する。意趣返し。
「グォォァッ…!」
フゥゥ…。上手く返せた…とは口が裂けても言えないな。付け焼き刃では全てを吸収できず、かなり傷を負ってしまった。
この痛みのおかげで狼吼を覚えられる。魔法の修練と同じだ。マードックやエッゾさんに殴られたり斬られる方が痛い。得ることが少なく単にやられているだけに感じるから。
「まさか返してくるとはな…」
「成功したとは言えませんが」
傷を『治癒』しながら、ふと思いついたので試してみる。
「…なにをしている!?」
「前に貴方が見せた回復の狼吼を試しています」
傷はちゃんと治る…けどかなり遅いな。予想通り銀狼の体質に特化した回復手段か。普通に『治癒』しよう。
「お前は……危険な存在だ…」
「なぜです?」
「狼吼の全てを暴こうとする獣人…。銀狼の敵となれば…驚異に他ならん!」
凶暴な形相に変化して、激しい攻撃を仕掛けてくる。回復させるつもりがないのか、接近戦から遠距離の狼吼まで連続攻撃が止まない。観察しながら攻撃を捌き、放たれる狼吼は全て狼吼で相殺。
「レクスの狼吼もウォルトも凄いな!」
「目が離せないぞっ!」
ときに反撃しながら傷を回復させた。レクスさんも同様。攻防も一段落して距離をとる。
「…暢気な奴らよっ!そんなことで奴らを殺せるか!」
「奴らとは原始の獣人ですか?彼らは原始の獣人を知らない。憎もうにも憎めないはずです」
「己の弱さに打ちひしがれ……その後に強さを望んだとてもう遅いわっ!」
決して認めないけれど、レクスさんは銀狼の里を…未来を憂いているのがわかる。言葉より行動で示す銀狼だ。
「そうであれば、貴方の助けが必要なのだと思えます」
「他人に頼って強くなどなれん!」
「なれます。少なくともボクはそうでした」
「お前のことなど知らぬ!里でぬくぬくと暮らしているだけでは、歴史を繰り返すだけ!死線を潜り抜け己を追い込まぬ限りはな!」
「そうかもしれませんが、貴方も言いましたよね。同じことをしても無駄かもしれないと」
「黙れっ!貴様になにがわかるっ!弱者は……家族や同胞が蹂躙され、無残に首を落とされる姿を……這いつくばりながら惨めな気持ちで眺めなければならないのだっ!」
原始の獣人への憎悪がレクスさんの強さの源だと思える。仲間に対する愛情も深い。そうでなければ、レクスさんの全身から立ち昇る怒りを説明できない。
「里の銀狼は過去のことを忘れていません。未だ獣人を憎んでいるのをボクは知っています」
「だからなんだ?!」
「ですが、憎しみを知らないペニーやシーダと縁を結べたことが嬉しい。彼らは、憎しみなど知らずとも強く成長しています。きっと最強の銀狼になるでしょう」
「ぬるすぎるわ!貴様にわかるはずもないっ…!我は、里を出て世界を巡る内に気付いた…。いかに強大な力を得ようと決して心は晴れぬ。与えられた屈辱を倍にして返さねば……原始の獣人をこの世から根絶やしにせねば晴らせん!」
突進とともに繰り出された爪を躱した瞬間、悪寒が走る。
「消え失せろっ!」
「くっ…!」
巨体を素早く捻りしなる尻尾を叩きつけてきた。死角からの攻撃を両腕で受け止め、鈍い音が響く。到底踏ん張れる威力じゃない。大きく弾き飛ばされたものの上手く着地した。
「コレすらも防ぐかっ…!」
「まとも食らっていたら、死んでいたかもしれません」
どうにか『硬化』で防いだけど、発動は間一髪だった。鉄のように硬く棘のように鋭く変化させた尻尾による一撃。息の根を止めようと放たれた容赦ない攻撃に、憎しみしか感じない。ボクは獣人だから奴らと同族であるという認識だろう。
でも、境遇を聞いて納得できている。レクスさんの言葉を信じるなら、当時の仲間達を救うことができず屈辱に塗れ、愛する故郷で爪弾きにされた。多くの苦難を乗り越え、孤独に手に入れた力で仇敵に対抗する。強い想いが弱かった銀狼を変えたんだ。
環境が人を変えることはボクも知ってる。この森に来て師匠と知り合って変われた。レクスさんは、ボクにとっての師匠や先生のように、銀狼を変える存在なのかもしれない。
距離を詰めるべく、互いに駆け出す。
「貴方には色々と教わりました」
「教わるだと…?なにを悠長にほざくっ!……グゥァッ…」
迫る爪を躱して素早く懐に入り込むと、レクスさんは目を瞑ってゆっくり倒れた。死角だったであろうボクの尻尾から放たれた『睡眠』の効果で。
「難しいな…こうか?」
「違うぞ!目と目を寄せるように、耳の裏から出すんだぞ!」
「…できた!風が出た!」
「やったな、ペニー!」
新たな狼吼を習得して2人は大喜びで駆け回る。
「ウォルト…。お前は何者だ?」
「ちょっと魔法が使える獣人です」
2人に狼吼を教えてから観察していると、横に立つレクスさんに話しかけられる。覚醒させて「手合わせは終わりです」と告げたら、溜息を吐いて納得してくれた。狼吼の修練を続ける2人の様子を共に見守っている。
「銀狼の研究をしているのではなかろうな?」
「ボクやチャチャは友達です。銀狼の生態は知れるなら知りたいですけど」
「なぜだ?」
「好きな食べ物を作ってあげられるので」
「フハハッ!そうか…。下らんな…」
「今日は勉強させてもらいました」
「ふん。知った気になるな。我はまだまだ全力にほど遠い」
「わかってます」
「くっ…。お前もだろうがな」
「ボクは本気でしたよ」
不意打ちで横からカパッ!と頭を噛まれる。予想外の攻撃。
「いてててっ!首が取れますって!」
「やかましいわ!お前は我をナメているのか?!適当な受け答えばかりしおって!!」
甘噛みされたあと、ペッ!と放り投げられた。頭が唾液でべとつく。
「痛かったぁ…。ボクは真面目に答えてます」
「お前は魔法を使ってすらいない。全ての狼吼を狼吼で相殺した。それで本気とぬかすか」
「そうです。強いていえば守るのが得意なだけで」
「話にならんな。今後もお前とは力比べをする。全力を見るまでは逃がさんからな」
「逃げませんよ。ボクはココにいます。ただし、手合わせするのなら約束は守ってください」
「しつこいぞ。我は言葉を違えん」
「よく堂々と噓を吐けますね。今日ボクを殺す気だったでしょう…?」
「む…。……おい!貴様ら!里に戻るぞ!」
見事に誤魔化した…。誤魔化せてないけど。
「俺とシーダは泊まるから、レクスは1人で帰っていい」
「いつも泊まって帰ってるぞ!」
「帰るなら里で闘い方を教えてやる!帰らぬのならお前達には二度と教えん!」
「本当か?!だったら今日は帰るしかないな!」
「ウォルト!また来るから待っててほしいぞ!」
「いつでも待ってるよ」
軽くモフり合ったあと、3人は瞬く間に森へと消えた。
本当は、狼吼を2人に伝授したくて行動を共にしているんじゃないのかな。レクスさんは、虐げられても同胞を憎み続けることができなかった。だから里に戻ってこれたんだろう。ボクの理屈ではそうとしか考えられない。
故郷で出会ったペニー達の成長に期待しているから、伝授する方法を知るタメにココに来た。上手く説明できないのは本当で、さっきのボクの説明を聞いてピンときてたな。
表情や言葉じゃわからないけど、銀狼は尻尾に感情が出る。激しく縦に揺れるのは、なにか閃いたときの行動。ボクでもそのくらいは銀狼のことを知ってる。2人の友達だから。今から自分なりの言葉で教えるとみた。
レクスさんが教える狼吼は、ペニーとシーダが里に広めるのかもしれない。ボクが師匠から教わったことをオーレン達に伝えているように。
そんなことより、レクスさんは里に滞在できてるのかな?昔とは別の意味で追い出されてそうだけど…。余計なお世話か。なんとかするだろう。




