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モフモフの魔導師  作者: 鶴源
653/715

653 新たな豚野郎

 カネルラの南に隣接する国家プリシオン。


 豪華な屋敷の一室で、館の主人は椅子に座り葉巻をふかしている。隣には姿勢よく立つ執事の姿。


「ゲーリック。ダウトの話は聞いたか?」

「はい。カネルラにて命を落としたと」


 ゴヨーク様は優雅に煙を吐く。


「保護区の森で見つけた猫の子供を連れ去ろうとして、失敗したらしいな」

「理由は不明ですが、子猫を取り返しに来た獣人と一悶着ののち不可思議な死を遂げたと聞いております」

「護衛で紛れ込ませた男もだな?」

「その通りです」


 ギシッ…と鈍く椅子が鳴いた。


「実に残念だ。子猫など滅多なことでは手に入らん。しかも4匹。絶好の機会をフイにしおって…」

「こうしている間にも、猫は成長しているかと」


 現代では動物を捕獲するのはかなり困難だ。生まれたての動物の価値は計り知れない。4匹もいれば繁殖させることも可能となり大きな利益を生む。


「動物好きの成金は金に糸目をつけんが、時間を追う毎に急激に成長し価値が暴落するから困ったモノ。どうするか…」

「保護するなら今しかないかと」


 答えは1択。この方には他に選択肢などない。新たな顧客の開拓も目論んでいるはず。


「はっはっ!言うに事欠いて保護ときたか。悪人め」

「永らくお仕えしておりますので。ゴヨーク様には敵いません」

「くくっ。ぬかせ。して、妙案があるか?」

「手筈は整っております」

「なんと優秀な執事か。まずは説明せい」

「かしこまりました」


 準備していた素案を幾つか提案させて頂く。


「どれも悪くないが、王族に動きを悟られるのは避けねばならん。既に儂の差し金だと推測されておるかもしれん」


 プリシオン王族を敵に回すのは得策ではない…か。


「では、どうされますか?」

「メルダーを使え。カネルラで暴れても構わんが、絶対に素性を悟られるなと伝えろ」

「かしこまりました。詳しい情報を仕入れます。進展がありましたら御報告に上がります」

「優秀な執事を持つと楽で仕方ないぞ。がっはっはっ!」

「ゴヨーク様に拾って頂いた身ですので。全身全霊をもって御奉仕させて頂きます」


 深く礼をして部屋を後にする。今回は時間との勝負。数日中に決着をつけなければ。 

 


 ★



 3日経った深夜。


 国境を越え、カネルラ保護区の動物の森に潜入する者達がいた。夜の暗闇に紛れ、森を移動しながら確認する。


「全員作戦は頭に入ってるわね?今日中に終わらせて、速やかに脱出する手筈よ」

「猫を攫うなんて簡単な仕事っすよ」

「油断はしない」

 

 私達は、ゴヨーク様の私設特殊部隊に所属する分隊(チーム)で、メルダーと呼ばれる。『闇夜』という意味があるらしい。表向きは大商人でありながら、裏で悪事を働き続ける主人を支える存在で、諜報から暗殺までなんでもこなす。


 私はメルダーの分隊長であり、隠密、夜間行動を得意とする。カネルラで確認された野生動物の捕獲が今回の任務。まだ子猫だという。世界的に希少な存在である動物は、裏社会で高額取引される商品の1つ。生存数を減らし保護する動きが各国で主流の中、ゴヨーク様はそこに目を付けた。希少なモノは高く売れる。当然の論理。


 特に動物の子供は入手困難。人族と違って幼少期が短く、ほんの数ヶ月しかない。今回は4匹同時に発見されたという。動物を愛でる者からすれば、小さければ小さいほど価値が高いらしい。愛らしさが雲泥の差だと。剥製にする者も同様でゆえに迅速な仕事が求められる。


「レーヌさん。今回は標的の居場所とか割れてるんすよね?」

「えぇ。ゲーリックさんの指示で、現場にいた学者からお金で情報を仕入れた」

「王族からは口止めされてるって聞いたっすけど、やっぱどいつも口軽いっすね。世の中金っすか」

「目の前に金をぶら下げられたら、バレなければ問題ないと思うのが普通の感覚よ。人は利益に群がる生き物」


 ただ、そんな理屈が通用しない者がいる。その最たるモノが獣人。普段はドが付くほどの阿呆でも、怒り狂うと一切聞く耳を持たない厄介な種族。

 今回の任務に当たり、唯一の気掛かりがその一点。ダウトが攫おうとした子猫達を取り返した獣人がいる。おそらく子猫の飼い主だろう。情報によると妙な風貌な猫獣人で、剣を装備した護衛の脅しにも動じず、冷静に反撃して命を奪ったと。そして、同行していた誘拐の実行犯ダウトも不審な死を遂げた。状況を聞いても意味がわからなかった。


 調査に向かった学者の長曰く、「とんでもなく性格が悪い。意味不明な理屈を並べ立てて、野蛮に脅してくる」らしい。けれど、獣人とはそういう種族。そんなことも知らずよく動物学者が務まっている。見識の狭い者は、世界に知識を広めることなどできないと思うけれど。


 考えを巡らせながら移動して、ふと気付く。


「全員止まって…!」

「急にどうしたんすか?」

「…結界が地中に張られてる。動かないで…」

「マジすか…?なにも感じないっすけど」


 巧妙な結界がなぜ…?誰がこんなことを…?直ぐに結界が消えた。


「どうっすか?」

「結界は消えた。油断しないよう伝えて」

「了解っす」


 目的不明の結界は、なぜ直ぐに消滅したのか?張り直される気配もない。こんな時、ダウトがいれば心強い。彼は優秀な魔導師だった。元々はダウトもメルダーの一員で、「暗い仕事は性に合わない」と鞍替えしてしまったけれど。


 どう判断するべきか…。


「分隊長の気のせいって可能性は?」

「あり得ない」

「けど、まだ国境越えてそんなに歩いてないっすよ。違法な越境を見張ってる番人みたいなのがいるんすかね」

「可能性はあるわ。となると、暗部が現れるかもしれない」

 

 カネルラの闇と呼ばれる奴らに遭遇するのはマズい。頭数を揃えているから優位に事を進められるとしても、密入国したことが公になるのは主人の意向に反する。


「一旦プリシオンに帰って立て直します?」

「進むわ。退くのは脅威と遭遇してから判断する」

「俺らは負けないっす。暗部がどんなモノか知らないっすけど、返り討ちにしましょう」

「イノは楽観的すぎる。少し急ぐわよ」


 任務遂行に向けて動きながら思考を止めない。足踏みして立ち止まる時間がもったいない。

 



 警戒を緩めず森を疾走して、やがて標的の住み家が見える場所に辿り着いた。木の陰に隠れて観察すると、情報通りの外観。立派な一軒家と離れが2棟建ってる。


「マジでこんなとこに住んでる奴がいるんすね。頭おかしいんじゃないすか」

「人それぞれよ。別におかしくはない」

「つまんなそうっすけど」

「減らず口を叩いてないで、周囲を警戒しておきなさい。追っ手がいないとは限らない。結界の術者は、間違いなく私達の存在を捉えているのだから」


 家の明かりは消えている。風の音しか聞こえない。


「…ナァ~」

「…ニャ」


 微かに猫の鳴き声が聞こえた。


「いるっすね。あの小屋からっぽいっすけど」

「えぇ。わざわざ外に小屋を作り、木で囲ってカモフラージュしてる」

「行きます?」

「今から近付くけれど、小屋まで障害物がない。警戒は解かないよう皆に伝えて」

「了解っす」


 情報によると、住んでいるのはおそらく猫獣人のみ。遭遇した場合の危険度は高くないとしても、戦場では臆病でなければ生き残れない。

 警戒要員として数人を木陰に残し、音を立てないよう前進すると、やっぱり小屋から鳴き声がする。


「気付かれて家から獣人が出てきたらどうします?」

「目的は子猫の捕獲。達成したら消す必要はないけれど、邪魔をするようなら迷わず排除する」


 獣人の排除は今回の任務ではない。ただし、任務を妨げるのなら容赦しない。忍び足で小屋の前に辿り着くと人は立って入れない大きさ。ドアも小さく明らかに猫用。


「見て下さいよ。下にちゃんと猫用の入口があるっす。本当に中にいるか、ちょっと覗いてみますね」

「狙いは子猫よ」

「わかってるっす」


 イノが屈んで入口を開けると…。


「シャ~ッ!!」

「ぐあっ…!」


 中から黒い猫の手が飛び出して顔を切り裂いた。全員が驚く。


「いってぇ~!」

「シャ~ッ!!」


 爪で引き裂かれ、尻餅をついて顔を押さえるイノに、小屋の中から飛び出してきた黒猫が襲いかかる。


「やめろっ!この猫っ!いってぇ~!」

「シャ~!シャ~!」


 マズいわ。大声で騒ぎすぎている。


「分隊長!この猫、殺しますよ!」

「えぇ。恨みはないけれど今回の標的ではない。さようなら」


 黒猫を狙ってナイフを振り下ろした部下の頭部が突然宙に舞った。ズルリ…と地面に倒れる。


「なっ…?!」


 驚いて後方に跳び退く。間髪入れず、近くの部下達の首が次々切断されて地に墜ちる。


 なにが起こっているのかわからない。


「この…クソ猫っ!…がはっ!ごぼぁっ……」


 黒猫に仰向けに押さえつけられたイノの喉から鮮血が溢れ、やがて動きが止まった。興奮冷めやらない様子の猫は、なおもイノを攻撃するのをやめない。牙を皮膚に突き刺し、爪で無残に引き裂いていく。


 なにが…起こったの…?混乱していると、イノの傍に立つ獣人の姿が浮かび上がる。


 片手に剣を握り、白い毛皮に返り血を浴びたままこちらを凝視する獣人と目が合って、身体中の血が凍った。本能が「逃げろ」と全力で警報を打ち鳴らす。この男は…危険だ。纏う空気が異様すぎて想像していたのと全く違う…。

 屁理屈ばかりの性格の悪い獣人…?あまりに話が違うわ。若しくは別人だというの…?けれど、聞いていた風貌と合致する。


 1歩足を踏み出し近付いてくる。


 逃走すべき……いや、気圧されるな。まだ控えている仲間がいる。素早く指笛を鳴らし、遠くに潜む仲間に危険を知らせた。これで包囲は完了する。冷静に対処すればいい。


「仲間に伝えたのか?」

「…え?」

「指笛はコイツらへの合図かと言っている」


 獣人はなにかを放り投げた。私の足元に待機させていた部下達の頭部が転がる。


 この短時間で、既にこの人数を屠ったというの…?尾行されていた気配はなかった…。


「お前らは何者だ…?」

「…答える義務はないわっ!」


 無言で掌を向けられ、爆ぜるような衝撃が全身を駆け巡る。


「待てっ!」

「待てだと…?」


 しまった。獣人は命令されることを異常に嫌う。悪手だった。


「お願いだから待ってほしい!私の話を聞いて!」

「聞かせてもらおう」


 凄まじい重圧。殺気が纏わり付いて離れない。


「私達は…」

「黙れ。質問はこちらがする」

「わかったわ…」


 言い訳すらさせてもらえない。しかも重圧が強まった。小細工は悪手で間違いない。


「お前達は何者だ」

「子猫を…捕獲しに来たの」

「答えになってない。プリシオン人だな?」

「えぇ…。その通りよ」

「ゴヨークとやらの指示か」

「そうよ」

「もう用はない」

「ちょっと待って!もう訊くことはないの?!」

「1つある。お前達が国に帰らなければ、次の輩が現れるか?」

「間違いなく来るわ。しかも、もっと多くの者達が。私が帰れば防ぐことができるけれど」


 この噓には…どう反応するのか。


「噓なら首を落とす」

「どうやって判断するの?」

「言う必要はない。そうだろう?メルダー分隊長…ヤーズ=イェン」


 なぜ私の本名をっ…?!全てお見通しだと言いたいのっ!?


「理由を聞かせてもらおう。なぜ防げると言い切った?」


 攻撃を仕掛けるべきか…。この距離なら…。


「…そんな手段はないわ」


 攻撃すれば間違いなく死ぬ。動いた一瞬かもしれない。予感というより確信がある。


「心変わりの早さが清々しい」

「心にもないことを…。貴方……何者なの?」

「白猫の獣人だ」


 ふざけてるっ…!絶対にあり得ない!


「子猫を守るタメに人を殺すことに、罪悪感はないの?」

「笑わせるな。お前達は金で人を殺す。なにより金が大切だからだろう?同じ理屈だ」

「私達は攫うだけで貴方に危害を加えるつもりはなかった」

「邪魔すれば排除しろと言っていたな?」


 私達が来るのを予想していたのね…。全てお見通しと言わんばかりに隙がない。いつの間に会話を聞かれていたのか。無駄な抵抗だと知りながら、死を目前にすると後悔ばかりが胸をよぎる。我ながら往生際が悪い。


 けれど…足掻いて足掻いて…最後まで抵抗してやるわ。生き残るタメに、少しでも隙を見つけなければ…!会話で引き延ばして、打破する条件を引き出してみせる…!


「猫達は裕福な家庭で飼われ、森で危険に晒された暮らしよりも幸せな一生を終える。その手助けをしているのよ。たとえひどい飼い主でも、魔物や獣に比べたらマシに決まっているわ」

「…面白い空想だ。そこまで言うなら、幸せとやらを実際にこの目で見せてもらおうか」


 え…?


「お前が身を以て教えろ」


 猫人は背筋も凍る表情で嗤った。



 ★

 


 数日後。


 ゴヨークの屋敷にて。


「ゲーリック。報告がないが、メルダーはどうなった?」

「まだプリシオンに戻っておりません」


 プリシオンを出国してから丸2日間音沙汰なし。長くとも2日で任務を終えると言い残して出国した。


「ふん。任務は失敗したということだな。使えん奴らだ。次の部隊を派遣しろ。今度はヘマをしたら死刑だ。既に取引を終え、顧客を待たせてる。時間がない」

「かしこまりました。早急に準備致します。…ゴヨーク様」

「なんだ?」

「実は、今朝レーヌの伝書鳥が手紙を届けております。ゴヨーク様宛でございます」

「内容は?」

「まだ開封しておりませんが…血で書かれております」

「さっさと読め。気味が悪い」

「では、読ませて頂きます」


 くしゃくしゃの封筒をナイフで開け、折り畳まれた紙を広げると血文字が書かれている。


『ゴヨーク様。メルダーは動物の森にて全滅に至りました。期待に添えず、目的を達成できなかったこと、深くお詫び申し上げます』

「手紙など書く暇があるなら、相手の喉笛を切り裂けばいいものをっ!腹立たしいっ!」

「まだ続きがございます。『つきましては…依頼された子猫の代わりに……こちらを…お受け取り下さい……』」

「……?それで終わりかっ?!実に下らんっ!」


 この………気持ち……は……なん…だ…。抗え……ない…。


「ゲーリック!さっさと出ていけ!時間がないと言っとるだろうがっ!」


 椅子に座り……くるりと回転して……後ろを向いた……ゴヨーク様……の……。


「早く行かんかっ!……ぐあぁっ!貴様っ…!なにをするっ!?」


 首を……切り落としたくて仕方ない……。ちょうど……ナイフも……ある……。もっと……深く……突き刺さねば…。


「やめろっ!やめんかっ…!ゲーリック!なんのつもりだっ!」


 奪われたナイフが…私の首に突き刺さり…吹き出す真っ赤な血が……胸……腹へと伝う…。


 あぁ……。まだだ……。足りない…。血が……美しく……温かい……。


「もうっ…ぐあぁっ!…やめろっ!……ごぶぁっ………」

 

 朝焼けのような……血溜まりに……溺れてしまい……そうだ…。止められ……ない…。もう……なにも……わからな……い。



 ★



 動物の森の住み家にて。


 天気のいい昼過ぎに、ウォルトはシャノを膝に載せて日向ぼっこしている。子猫達は揃って昼寝中。


「シャノ、昨日は気が済んだ?」

「ニャ~」


 不完全燃焼みたいだ。トドメを刺したのはボクだし前に攫われた犯人でもなかったからな。


「また来るかもしれないけど、ボクが守るよ。絶対とは言えないんだけど」

「ゴロゴロゴロゴロ…」


 喉を鳴らしてくれるのが嬉しくて、毛皮を撫でながら思い返す。


 今回はズボラな集団だった。結界に直ぐ気付かれたから、最初は手練れだと警戒したけど、一瞬の展開で感知する結界には気付いてなかった。しかも、『隠蔽』による追跡で10分近く奴らと行動を共にしていたのに、無警戒で暢気に会話しながら行動する愚かさ。


「不審者がくる」とシャノに伝えたら、『噛み殺してやる』と気合を入れて待ち伏せしていたみたいだ。シャノは人語を理解する。外での会話から、子猫を狙いに来たことを確信して一気に感情が爆発した。


 そういえば、伝書鳥に託した手紙はプリシオンの豚野郎(ゴヨーク)に届いただろうか。分隊長と呼ばれる輩を叩きのめして奴隷のように扱った。奴は『ひどい飼い主に飼われる幸せ』をボクに説いたから、実際に見せてもらうタメに。


 首輪をつけて外を引きずり回し、倒れるまで無理やり四つ足で走らせ、床に置いた水と飯を食わせた。一切喋らせず、2本足で立ったり言葉を話したら魔法で激痛を与えた。

 たったそれだけなのに数時間で音を上げて、泣きながら「間違っていた。許してほしい」と懇願した。意味がわからない。

 それから協力させて手紙を書かせた。ずっと学んでいる呪術と魔法を融合した『呪法』を、血を媒介に読んだ者に発動するよう仕掛けを施して。


 仕掛けたのは、直近で口にした名前の人物を殺めたくなる呪法。発動したのち、手紙は燃えて跡形もなくなる。「手紙が届いたなら、間違いなく2人きりの時に側近が読む」と聞いた。「常に2人で悪事を企む」のだと。ならば、首謀者同士で仲良く殺し合えばいい。

 失敗していても構わない。子猫を狙っているのだから、直ぐに次の輩が送り込まれるだろう。同じことが起こればプリシオンに乗り込むだけ。諸悪の根源を根切りしてやる。


 今回は、情報提供と呪法に協力することを交換条件に、「命だけは助けてほしい」と懇願した分隊長をボリスさんに引き渡した。 引き渡す前に、眠らせて記憶を魔法で消している。自分がなぜボロボロなのか、なぜカネルラにいるのか知らないし、眠らせたまま詰所に運んだから起きたら目の前に衛兵というカオスな状況。

「森で発見した。密入国の可能性がある」という紛れもない真実をボリスさんに伝えたけれど、疑っている匂いがした。でも噓ではない。正規のルートで入国していれば無罪放免だろう。プリシオンに戻ってからどうなるのかまでは知る由もない。


 とにかく、今回もシャノ達を守れてよかった。ボクの行動を支える理屈はただそれだけ。買われた先で幸せを掴む、なんてたらればの未来に興味などない。望まないのに親子を引き離そうとする輩は全員敵だ。

 あと、住み家の特定にあの学者共が関わっていることがわかったので、今度会ったら相応に対処する。相手がどんな行動に出るかわかっていながら、はした金を求めて情報を流した奴を決して許さない。


 奴らを動物学者だなんて認めない。ただのクソ野郎共だ。

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